
5月12日のなのはな
お米の芽出しは順調。グラウンド整備も万全。お日様もさんさん。いよいよ、初夏の始まりを告げる大人数でのイベント、播種を行いました。
今年は週末に天候が優れないことがあり、播種は平日に行いました。仕事組さんはいなくて、桃メンバーも急ぎの摘果を進めていました。古吉野なのはなに残ったメンバー、そして、今年も応援に駆けつけてくださった永禮さんと、気合を入れて臨みました。
作業はじめ、中庭の播種機の前に集合しました。人数は少ないと思っていたけれど、お父さんお母さん、みんなが集合すると意外と賑やかで、ほっとしました。
播種機の裏側の、軒下に積まれたトレイは、すごい存在感がありました。今年のなのはなの田んぼは、3町3反4畝で、その分の種もみを、全て撒きます。
改めて、なのはなの田んぼのスケールの大きさを感じました。
播種機が始動し、あゆちゃんが置いてくれた、焼土の入ったトレイが流れていきました。
ベルトコンベヤーがトレイを運び、最初に水のカーテンをくぐります。次には種もみが一面に均一に撒かれて、最後は焼土が薄く覆土されて、播種機からトレイが出てきます。
もみは、先端が軽く割れて、そこから真っ白な芽がほんの数ミリ、ちょこりと覗いていました。まえちゃんや、お仕事組さんたちが芽出しをしてくれた種もみたち。大量にあるもみを、播種の日に一番いい状態で芽が出るようにする技術が確立していて、それを確実に引き継いでいくみんなが、本当にすごいなと思いました。

お父さんが、播種されて流れてきたトレイを持つときのコツを教えてくれました。
播種機から出てきたトレイを、流れる先に少し引き寄せて、空間を開けてから両手でトレイを持つ。しっかりと覆土の工程まで終わってから引くけれど、タイミングが遅すぎると停止レバーを押すことになってしまうので、持つだけでもちょっとした緊張感がありました。
そして、均一に撒かれたもみや土が動かないように、水平にトレイを持って、慎重に運びます。
グラウンドへ運ぶと、永禮さん、どれみちゃんがトレイを受け取ってくれました。播種と言えば、永禮さんの笑顔と思い浮かぶくらい、明るくどっしりと「受け取りますよ」と言ってトレイを受け取ってもらえることが、嬉しいなと思います。
永禮さんやどれみちゃんに渡すだけでも、この子達(種もみ)はきっと大丈夫だ、と思えてしまう安心感がありました。
すでにグラウンドでは、播種されたトレイがいつでも置けるように、まっすぐに水糸が張られ、綺麗にポールの立ち並ぶ、3通りの置き場が作られていました。
永禮さんたちがトレイを置いて、次にはトレイの縁に土を寄せる左官屋さん、防除、不織布、ミラシート張り……と次の工程が進む流れができていました。役割ごとに専門の人がついていて、それぞれの役割に一人ひとりがプロになっていく仕組みでした。
私は、一番人数の多い、トレイを運ぶ役割で、慎重に播種機から永禮さんたちへ運び続けました。
運び係には、もう一つ役割があります。それは人が並んでいるときの待ち時間に行う、中庭の草取り。
普段ならお母さんが呼び掛けてくれることでしたが、今回は自発的に、気づけば草取りが始まっていました。
土が乾いていると、イネ科の小さな雑草は抜きにくい。そんなとき、みつきちゃんが、「おまじないを教えてあげる」と言ってくれました。
みつきちゃんが、雑草の周りを2,3周、ぐるぐると指でなぞると、なんと草がすっぽりと抜けました。私もそれをやってみると、何もしないときに比べて、びっくりするほど草が抜きやすかったです。不思議なおまじないを教えてもらえて、嬉しかったです。
せいこちゃんが三角ホーを持ってきてくれると、いよいよ草取りも本気モードになっていきました。どこからともなく、てみ、熊手、一輪車などの草取りグッズも揃って、播種機に並んでいる人数を気にしながら、意欲的に草取りをします。
トレイ運び、草取り。それを繰り返していると、いつの間にかグラウンドでミラシートまでかけられた列ができていたり、中庭が見るからに綺麗になっていったり、2重にハッとさせられました。
中庭では、たけちゃんやたいちゃんもいてくれて、和やかで幸せな空気感がありました。
たけちゃんは、播種機のトレイの出口に立って、「はい、どうぞ」と交通整備をしてくれていました。播種機を停止させてしまうレバーに触れてはいけない、ということは幼心にも理解していて、そこには決して触れずに、みんなに「どうぞー」と言ってくれていて、とてもかわいらしかったです。
お昼休憩には、台所さんが手早くご飯を食べて播種に戻れるようにと、体育館に昼食を用意してくれていました。
このときは摘果を進めてくれている桃メンバーも帰ってきてくれて、みんなで円になって、華やかでおいしいばら寿司を頂けて、嬉しかったです。
その席で、お母さんが盛男おじいちゃんのことを話してくれました。
おじいちゃんの生前、播種や、田んぼに関わる行事にはいつもおじいちゃんがいてくれました。私も、以前、大勢が揃っての播種の日に、おじいちゃんが心からの笑顔で、「なのはなオールスターですね」と嬉しそうに声をかけてくださったことを、覚えています。
おじいちゃんの娘さんは、おじいちゃんに、「蝶々になってなのはなへ飛んでいったらいい」と、話されたのだそうです。
今日、お母さんが、「おじいちゃん、来てないかな」と思ったとき、本当におじいちゃんが、とても綺麗な蝶になって来てくれたことを、教えてくれました。
おじいちゃんが今でもみんなのことを見守ってくれている、その存在を感じることができて、嬉しかったです。

午後も引き続き播種を続けました。うるち米が終わると、もみが混ざらないように空にして、次の餅米、そして紫黒米へと移っていきました。
じりじりと太陽の暑さを感じていたけれど、時折吹いてくる風が心地よかったです。
気づけば中庭から雑草が無くなっていて、お母さんも、「舐めるように綺麗になったね」と喜んでくれて、とても嬉しかったです。
最後まで気持ちに粘りを持って、全てのもみを撒くことができました。

播種の後、週末に天候が崩れる前にと、カボチャの畝立てを、片付け以外のみんなで行いました。畝立てをする畑は、うなぎとり大と、うなぎとり向こう畑。カボチャの主力となる、『えびす』が植わる畑です。
大人数で畝立てができる、ということで、私はほしちゃん、さやちゃんと先行して畝の印付けを行いました。2メートルの間隔で、列ごとにいっちくだっちくになるように、しの竹をさします。そのしの竹を中心にして、饅頭型の畝を、みんなで立てていきました。
永禮さんがエルフを運転してくださり、畝の中に入れる牛肥、草木灰、苦土石灰の肥料入れまで行うことができました。
1日の終わりだったけれど、みんなでパワフルに鍬をふるい、畑を走り、約160の肥料入り“饅頭”畝が完成しました。これで、すぐにカボチャの苗を定植することができます。
永禮さんや、みんなの存在が、とてもありがたかったです。

一大イベントの播種を、無事に終えられて、改めて今までの積み重ねと、それを引き継いでいくみんなの、大きな力を感じました。毎年確実にいいお米作りを繋げていく、そんなみんなの中にいさせてもらえて、幸せだなと思います。
お米は、これから約20日で田んぼに植えます。今はミラシートと不織布の中ですが、また苗が成長して、姿を見られるのが楽しみです。
(りんね)
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桃の摘果のタイムリミットが迫ってきています。今は、予備摘果、と言って、摘果1巡目、最終着果数の2倍まで実を絞っています。摘果2巡目までを、硬殻期が始まる20日までに終わらせたい! みんなと目標を意識して、スピード感を持って進めています。
今日も、朝食前の時間から、あんなちゃんや何人かのみんなと一緒に、山の桃畑に向かいます。古吉野を出る時、今日はなんだかいつもと雰囲気が違う……、そうです、今日は播種の日! 稲の苗が誕生する日です。もう朝から中庭には播種機がセットされて、イベントの朝のような、ワクワクした気持ちになりました。とても良く晴れて、暑くなりそうです。播種の日が天気の良い日で良かったなあと思うし、私も、播種と並行して進める桃の摘果を、作業メンバーのみんなと頑張ろう、と気合が入りました。
山の桃畑には、約35本の桃の木があり、様々な品種があります。12段の脚立も登場するような、巨大な木もあれば、背伸びしたら届くような、幼木もあります。みんなで、1本ずつ取り掛かって、終わらせていきます。
一本一本終わるごとに、「次の木にはいります」と声掛けをして、進みます。一人では到底太刀打ちできない量でも、みんなで取り掛かると、力が何倍にもなったように感じます。一本一本終わらせていくのが、ミッションをクリアしていくような達成感があって、とても楽しいです。
摘果1巡目では、30~40センチに2個の間隔になるまで、実を間引いていきます。摘蕾のときには、枝の下側に、約5センチ間隔で残していたので、かなり実を絞っていきます。実は、大小差ができていて、この時にできるだけ大きい実を残します。また、今、桃の実が直径3センチほどに大きくなってきていて、大きくなったらどんな桃になるか、収穫期の面影が見え始めています。
桃の実には、真ん中に縫合線、と呼ばれる割れ目があるのですが、縫合線を境に、左右の実がぷっくりと大きくなってきていて、下から見ると、まだ小さくて青いけれど、完熟したときと、あまり形は違いません。
そのため、形を見て、綺麗なものを選びます。あんなちゃんが、白鳳や紅清水は変形果が毎年多いということ、木によっても、実の変形の仕方が違うのだということを話してくれました。変形果の見分けを付けるのは難しいので、桃の実を選抜する時に、ちゃんと、綺麗な形をしているかどうか、みる必要があります。
品種によって、実の形が少しずつ違うことが、興味深くて面白いなあと思います。なつごころは、先端が尖っているような実が多かったり、日川白鳳は、縦長の実が多かったり、おかやま夢白桃は、綺麗な真ん丸の実が多かったりします。その品種の特徴を感じられることが嬉しいなあと思ったし、品種によって、選ぶ基準、考え方も少しずつ違うので、そのことも踏まえて適切な実を、適切な量、残すことができるようにしたいなと思いました。
山桃畑の摘果を、午後のはじめに終わらせることができました。これで、9枚の桃畑の1巡目の摘果が完了です!

今日から、いよいよ2巡目の摘果、本摘果に入りました。
本摘果のすぐ後には、袋掛けがあります。そのため、本摘果では、袋を掛けるだけの、最終着果数に絞ります。今から残す実は、すべて収穫まで繋がるんだ、そう思うと、重大な責任を感じて、緊張しました。
2巡目の摘果は、早生品種で一番収穫が早い、はなよめ、日川白鳳から始めました。あんなちゃんが、早生の加納岩白桃まで、14日までに終わらせたい、と目標を伝えてくれました。早生品種は、硬殻期ももう間近です。少しでも今日進めたい、と思いました。
最終着果数は、30~40センチ間隔に1個、実を付けます。1つの実を養うのに、葉100枚分の養分が要ります。葉の数は数えないけれど、葉がたくさん茂っている場所は、その分、実を多く付けることができるし、葉が少ししかないところは、いくら枝が長くても、付けられる実は少なくなります。
また、同じ葉の茂り方でも、日当りの良い場所、悪い場所でも、実に養分がいく分にかなり差があります。日当りの良い高い場所では、通常の120パーセントぐらい付けることが出来て、日当りの悪い低い場所では、80パーセントぐらいの数にするように意識しました。場所によって、実を付けられる条件が変わってくることを知って、たくさんの判断する基準をトータルして、考えながら摘果していくのが、難しいけれど、とても楽しいなあと思いました。
最初は、摘果1巡目の基準に、目も慣れてしまっていたので、基準を、厳しく塗り替えるのが難しかったです。1巡目で良い実だけを残していたので、その中でもさらに選りすぐっていくのが、何だか実を落としづらくて、できるだけ実を残したい、というような気持ちに、無意識でなっていました。
でも、あんなちゃんが、1本の木に生らせられる実の数は限られていて、多いと一つひとつの玉が大きくならなかったり、十分に養分がいかない、ということを話してくれて、大きくて甘い桃を作るには、厳しい目を持たないといけないな、と改めて気持ちを引き締めました。
30~40センチ間隔に1個、というのは、多すぎることもなく、少なすぎることもなく、一番ベストな量です。残した桃の実の一つひとつ、どれもロスはなくて、桃の木に一番良い、ぴったりの量です。一つひとつの、まだ3センチばかりの小さな実が、ものすごく貴重で、重大なもののように感じました。落としてしまったらもう取り返しがつかないので、慎重に、一つひとつに根拠を持って進めていきました。
息をするのも忘れて、ただみんなと夢中になって、1日、摘果を進めました。気が付けば、日が傾いて、日差しも落ち着いて涼しくなってきていました。朝のことが昨日のことのように感じるぐらい、今日1日で、たくさんの畑をまわり、進めることができました。本摘果は、はなよめ、日川白鳳の2品種を終わらせることができました。明日からは、加納岩白桃に入ることができます。加納岩白桃は、木の本数も多いので、明日からも引き続きみんなと頑張りたいです。
桃の実の毛がふさふさしてきていて、摘果をしていると、手や首にいっぱい桃の実のちぱちぱがつきます。この感覚は、まだ実が小さかったときにはなかったことで、今日初めて感じました。もうこの段階まで実が成長してきたんだ、と思って嬉しかったです。
摘果の作業を終えて、古吉野に帰ってくると、グラウンド一面に、ドーム型のミラシートが掛けられていました。中庭の播種機は片付けられていて、無事に播種が終わったんだなあと思いました。
グラウンドにピンと張られたミラーシートがピカピカと光っていてその光景がとても綺麗だったし、この中には種もみのトレーが敷き詰められているのだろうと想像できて、今日1日で、こんなにもたくさんのトレーの播種を完了させたみんなの力が本当に凄いなあと思いました。
播種や摘果、今日1日、みんなと力を合わせてたくさん進められて、場所は違っても、みんなと気持ちがひとつに思えて嬉しかったです。
播種の作業のみんなからも、摘果をしていた私達からも、良い報告をし合うことが出来て、今日1日の達成感が何倍にも大きく感じられました。
(りな)