5月11日のなのはな
大規模に育てている、春ジャガイモ。濃い緑色の葉がわさわさと茂り、茎も太く、見るからに元気いっぱいです。花が咲く前に2回の追肥、土寄せをして、6月の収穫に備えたいとプランを立てていましたが、近頃の雨と高温の天候の影響もあってか、成長スピードが早く、ゴールデンウィーク中に開花が始まってしまいました。
大慌てで追肥と土寄せがしたい! でも先日の雨の名残で畑のコンディションが整わず、なかなか実行に移せないところに、またもや今週末に雨予報が……。今日しかチャンスがない!
昨日から着々と管理機がけを進め、今日はジャガイモ畑の追肥と土寄せを終わらせようと一丸となって、なのはなはジャガイモDayになりました。
この日、牛肥がのったエルフを運転してくれるのは、あゆちゃんです! あゆちゃんも一緒の作業がみんな嬉しくて、作業空気がより一層、明るくなりました。
午前の目標は、5枚の畑の追肥です。先に全畑の追肥を終わらせてから、土寄せに移ろうというプランになりました。
1枚目は山畑から。一見、広く見える畑ですが、やってみると意外と狭いというのが、今回ジャガイモを育てる上でわかったことです。
ここでは1人1畝を担当して、畝肩に筋状に肥料を撒いていきました。エルフの荷台であゆちゃんがテミに牛肥を詰めてくれて、それを受け取るみんながそれぞれの畝に向かって、ダーッと走っていきます。
山畑は見晴らしのよい高地にあるので、空も近く感じて、気持ちよい天候のなかで1枚目が10分足らずで撒ききることができました。そのまま坂を下り、続くは山畑下。ここはジャガイモ畑の中では最も面積の狭い畑なので、その勢いのまま、あっという間に撒ききりました。
印象的だったのは、保育園前畑の追肥です。保育園前畑は奥行き70メートルもある、なのはなの畑の中でもトップ10に入る、面積の広い畑です。
1畝が長く、これはどういう作戦でいこうかとみんなで話し合った結果、2チームに分かれて、バケツリレー方式で対決をしようということになりました。
グーとパーに分かれて、戦うはあゆちゃんチームVSわたしチーム。各チーム5人で長い1畝を繋ぎます。等間隔に並んでみると、隣の子が遠く感じてしまうけれど、勝負となるとそんなこと気にならなくなり、気合いが入ります。
「よーい、スタート!」
勝負スタートです。わたしは先頭に立って、みんなが繋いでくれた牛肥を撒いていきました。重たいテミを持ちながら畝間を全速力で駆けて、「はいっ!」と笑顔で手渡してくれるえつこちゃん。みんなの真剣さと、負けないぞというやる気がテミと共に届くようで、わたしも全力でスピードを上げました。
反対側にはあゆちゃんチームの姿が見えます。なかなかの勢いで迫ってきて、強敵だなと思いました。しかしお互いが半分くらいを過ぎたところで、エルフの牛肥が尽きてしまいました。いったん、ゲームストップ。あゆちゃんが町川牧場さんまで新たに牛肥を取りに行ってくれることになりました。
その間、わたしたちにできることは、土寄せを進めよう! すでに肥料を撒き終えた山畑下に再び戻り、あゆちゃんが帰ってくるまでの間に少しでも土寄せを進めることにしました。時間を大切にしようと、駆けて畑に向かう瞬間も、みんなの気持ちが1つになっていることを感じました。
土寄せは、管理機をかけた畝間の土を株元に寄せました。土がたっぷり寄った、かまぼこ型の畝にすることでイモがたくさんつきます。土はたっぷり寄せることをみんなで統一して、スピード感ももって進めていきました。
あゆちゃんが帰ってくるまでの10~15分の時間。自分たちでもびっくりですが、山畑下一面の土寄せを終わらせることができました!
「終わった!」
そう言った瞬間、遠くでエルフの音が聞こえ、見下ろす保育園前畑にエルフのトラックが見えました。
「なんてタイミングだ! みんな戻ろう!」
ものすごいハイスピードで土寄せを終わらせて、その結果を早くあゆちゃんにも伝えたくて、またみんなで走って保育園前畑に戻りました。わたしたちの嬉しい報告を聞いたあゆちゃんも、「それはすごい!」とわたしたちと一緒になって驚いて、そして喜んでくれました。
さぁ、気を取り直して、追肥対決の再開です。少し気分転換を挟んだことで、体力も回復して、またみんなで畑を駆け回りました。きっと自分1人だったらめげてしまうけれど、隣の子がずっと全力でわたしのもとまでテミを運んで、笑顔で手渡してくれます。そのことが嬉しくて嬉しくて、わたしも自分以上のパワーを感じながら走り続けました。
「あと3杯!」「あと2杯!」「あと1杯!」というところで……。
「やった~!」という声が! 惜しくもあと1杯分という僅差で、あゆちゃんチームが先にゴールしました。惜しかったけれど、チームのみんなが、「でも楽しかったから良い!」と言ってくれました。そして落ち着いて、弾んだ息を整えながら畑を見回すと、もうすでに3分の2の面積を撒き終えてあります。あれだけ広いと思っていた畑も、みんなとゲーム感覚で楽しみながらも必死で撒いていたらあっという間です。大変なときほど、楽しさに変えてしまう。それに勝るものはないと思いました。
時刻は11時30分。なかなか良いペースで進んでいます。最後の1枚、いいとこ畑へ移動して、少し休憩を挟みました。汗をいっぱいかいたあとに飲む、冷たいお茶はひときわ美味しくて、みんなと何でもない話をしながらほのぼのと過ごす時間は、頑張ったあとだからこそ、より幸せを感じました。
いいとこ畑は保育園前畑で培ったチームワークを活かして、ここでも2チームに分かれてバケツリレー方式で撒いていきました。みんなで声を掛け合って、あと残り何杯だよ、というふうに誰か一人の負担にするのではなく、みんなで最終到着地点を意識してやりました。畑を駆け回るみんなが楽しそうで、わたし自身も楽しくて、肥料撒きって本当に楽しい作業だなと改めて感じました。
12時2分前に、すべての畑の追肥が完了しました。「やった~!」。残すは土寄せです。もうすでに、今日の作業の半分を超えました。残り1時間で山畑の土寄せを終わらせるところまでを午前の目標にして、疲れ知らずのわたしたちは次の畑へ移動します。
山畑の土寄せはみんなで1畝に入り、1人が担当する範囲を狭めることで、気持ちが切れないようにやりました。
土寄せをするときに、距離の間隔は作業効率を大きく分けてしまうくらい重要だと感じます。すぐ近くに隣の子がいると、距離が狭まるだけでなく、仲間の存在や一緒に進んでいるとう事実に前向きなパワーが湧いてきて、結果的に全体の面積は変わらなくても、気持ちの面で意外と速く終わった! という気持ちになることが多いです。
今回も3メートルほどの間隔を取りながら、隣の子と横一列で進んでいき、時に助けたり助けてもらいながら、みんなで1畝を確実に終わらせていきました。
そして12時40分過ぎ、2枚目の山畑の土寄せが終わりました! 今日は5枚の畑の追肥と土寄せだから、全部で10回も達成感を味わうことができます。午前の時点ですでに“7やったー”の達成感をみんなで分かち合うことができました。
午後からも引き続き、ジャガイモの土寄せです。午後は面積の広い畑を残しているでの、少し強敵です。でも、やる気は誰にも負けません。氷がたくさんはいったキンキンのお茶も用意して、暑さに負けない準備もばっちり。
早速、山畑西からスタートです。ここでは3人1組になり、1畝を担当していきました。午後の始まりの助走ということで、50分足らずで終わりました。予定通りの進みで、さい先良好です。
そして待つのが、今回最大の、保育園前畑の土寄せ。追肥は上手くいったから、きっと土寄せもこのメンバーならできるはず!
畑に着いて、1つゲームを提案してみました。それは保育園前畑が何時何分に終わるか予測を立てて、誰が1番ぴったりの読みかを競うというものです。
開始時刻は15時6分。さぁ、みんなは何時に土寄せが終わると思う?
「16時25分!」「16時30分!」
みんながそれぞれの予想時刻を1分単位で挙げていきました。大体のみんなが16時20分台を予測しているなかで、あゆちゃんとみつきちゃんだけが16時10分台を予測しました。あゆちゃんが12分、みつきちゃんが15分です。みんなの予測はどうなるかな?
保育園前畑は1畝を3スパンに分断しているので、畑全体でも3つのスパンに分けることができます。まず手前の1スパン目はシンプルに、2チームに分かれて土寄せをしていきました。午前中に、まちちゃんとさくらちゃんが保育園前畑の管理機がけを進めてくれていました。そのおかげで、土がふかふかです!
「これは最高だ!」「気持ちいい! 楽しい!」
クワでひとかきをかいたみんなから感嘆の声が飛び交い、まちちゃんとさくらちゃんに「ありがとう」の気持ちでいっぱいになりました。土がふかふかだとたっぷり土をあげられるだけでなく、みんなのスピードも倍になって、約20メートルある14畝が12人で25分で終わりました。
2スパン目に移る前に、ジャガイモ対決第2弾! 続くは土寄せ対決です。チーム分けはジャガイモにちなんで、「肉じゃが派」VS「コロッケ派」! 思い思いに好きな方に分かれてみると、肉じゃが派が7人、コロッケ派が5人。肉じゃが派のなかから1人、コロッケ派に移動してくれて、これで6人対6人ができました。
勝負スタートの前に、ふかふかジャンケンです。実はこの畑、南側は土がふかふかですが、北側が粘土質の土になっています。土質で、土寄せのやりやすさも全く違います。そこでどちらが南側のふかふかの土を選べるか、代表であゆちゃんとわたしがジャンケンをしました。
「最初はグー、じゃんけんポンッ!」。あゆちゃんがパー、わたしが……グー! 肝心なジャンケンを負けてしまいましたが、優しいあゆちゃん、
「わたしたち8畝やるから、コロッケチームはその分6畝でいいよ」
と言ってくれました。
それでは、土寄せ対決スタート! わたしたちコロッケチームも気合いを入れて、粘土質の土にも負けないぞと挑みましたが、1畝、2畝と進んでいくと、だんだんとクワを持つ両手の握力が奪われてきました。その間に肉じゃがチームからはどんどんと、「次の畝入ります!」という声が聞こえてきます。負けたくないと思えば思うほど、なかなか上がらない土に力を奪われていくようで歯がゆい戦いになりました。
決着はというと・・・・・・コロッケチームの完敗です。2畝のハンデをもらったけれど、それでもダメでした! 最後は肉じゃがチームのみんながヘルプに入ってくれて、チームの垣根を越えて、みんなで協力して2スパン目を終わらせました。
最後の3スパン目はみんなで入りました。そろそろ終わる頃になって、みんなも気になる、終了予想時刻はというと……? あとちょっとというところで16時10分。「あと2分であゆの予想時刻だ!」という12分を予測するあゆちゃんの声と、「まだもう少し残っているよ!」と、15分を予測するみつきちゃんの声。結果は……16時13分に全スパンの土寄せが終了!
なんと、あゆちゃんの16時12分という予想をたったの1分だけ下回る時間でした。あゆちゃんすごい! 見事1番近い予測を立てたあゆちゃんに待つプレゼントは、みんなからのスタンディングオベーションです!
少し小高い畦の上にあゆちゃんが立ち、手を高く広げたあゆちゃんを囲むようにみんながしゃがみ、徐々にゆっくり立ち上がりながら、大きな拍手を送りました。その真ん中で大笑いをしているあゆちゃん。みんなもそれにつられて、大笑いをして、畑の中にみんなの笑い声と笑顔が広がりました。
「いや~、これは嬉しいね」と喜んでくれたあゆちゃん。そして大半のみんなの予測を上回る16時13分、開始時刻からわずか66分間という時間で、広い、広い保育園前畑の土寄せを終わらせることができたみんなの体力、根気、粘り強さにも大きな拍手を送りました。
余裕をもって、最後の1枚のいいとこ下畑へ。ここではあゆちゃんが提案をしてくれて、2人1組で向かい合って1畝に入り、手前に向かってかいていく人、奥に向かってかいていく人でお互いを急かすような形で進めていったら速いよ! と教えてくれました。
実際に、あゆちゃんとももかちゃんが実演をしてくれましたが、2人の息がぴったり合っていて、超されそうで超されない、リズム良く進んでいく2人のスピード感が最高でした。それを真似てわたしたちもやってみると、一度で両側の土を寄せることができて速いです! でも黙々と1畝を進めるので、みんなの掛け声が減ってしまうことが少し寂しいねとなりました。
でも、畑が多い分、みんなでいろいろなやり方を考えて、同じ工程の繰り返しでも飽きずにずっと楽しさを継続してできるように工夫できたことがとてもよかったなと思いました。
最後の2畝はみんなで1畝に入って、最後の最後にふさわしく、全員で協力体制でやりました。そして本当に最後の3メートルくらいはぎゅうぎゅうで入って、感動的な終わりをみんなで味わいました。時刻は16時50分!!!
1日で、広いジャガイモ畑の追肥と土寄せを、時間の余裕をもって、終わらせることができました。
1日クワを持ち続けていた、両手の握力と腕はもう力が入らないくらいだけど、他の身体と気持ちの疲労はまったくなくて、むしろ喜び、楽しかった気持ちでいっぱいでした。
みんなで知恵を出し合って、畑ごとに最適なやり方を考えて、1枚1枚の畑に小さな成功体験を積み重ねながら進めていった今日の時間。「10やったー」以上に、「100やったー」、いや、「1000やったー」を感じるくらい、みんなとたくさん笑って、喜びを分かち合えた時間がとてもとても楽しかったです。
今日1日だけでも、畑に響き渡ったみんなの賑やかな声と笑顔を、きっと土の中に眠るジャガイモたちが聞いています。みんなの優しい思いは、きっと来月の収穫に待つ、大豊作に繋がるだろうな、とても嬉しい気持ちに満たされました。
(るりこ)
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