【4月号⑫】「スタンディングオベーション 牛肥まきタイム予測」 みつき

 冬と春の境目、「三寒四温」を感じる毎日。作業の支度をしていると、ついつい服装選びにも迷いがちです。
 ところが、「今日は、一枚薄着で作業に行こう」と、宣言し合うわたしたち。こんな攻めの気持ちになれるのは、「牛肥入れ」の作業がやって来たからなのです!
 ――輝く汗、響き渡るかけ声、畑というトラックを駆け抜けて牛肥を撒いていく。畑を百二十パーセント楽しめる、パワフルさ全開な作業です。なのはなの作業の中でも、人気の「牛肥入れ」ですが、これはもはや、熱血運動部!

 肥料入れの日限定で結成される、そんな「肥料入れ部」のわたしたちの、ある日の活動をご紹介します。
 その日は、一日かけて、二枚の畑の肥料入れをしてきました。

 

 

 まず午前中に、山畑に行きました。畑に着くと、須原さんがトラクターをかけてくださっていました。トラクターかけたてほやほやの畑の土はふかふかで、走り回るのが楽しみになります。
 今度この畑に来る春ジャガイモの元肥として、軽トラック二杯半の量の牛肥を撒くとのこと。リーダーのまちちゃんが、畑をいくつかに区切って、
「このラインまでを、一杯分、まんべんなく撒いてください!」
 と、声をかけてくれました。

 ここで牛肥入れの豆知識です。牛肥入れでは、みんなでバケツリレーをして牛肥を運び、先頭の人だけが撒いていく『バケツリレー方式』が定番です。
 今回、まちちゃんの提案した『セルフ方式』は、牛肥をセルフサービスでもらっていき、それぞれが好きな箇所にダーッと撒いていく方法です。牛肥を運ぶ回転が速いため、比較的畑の面積が小さいときに有効な方法です。

 

 

 山畑はけっこう大きい畑だと思っていたのですが、軽トラックに載った牛肥一杯目を撒いている間に、二杯目を用意してくれていて、すぐに次の軽トラックが来てくれました。そして、みんなの牛肥を撒くスピードも負けないくらい速くって、スムーズに牛肥入れが進みました。
 牛肥が撒かれた面積がぐんぐん増えていき、最後には、畑全面にしま模様が広がります。なんだか、未踏破の場所をどんどん拓いていっているようで、「これがわたしたちの試合、戦いなんだ!」と誇らしいような、達成感でいっぱいになりました。

 肥料入れを始めたのは十二時、終わったのは十二時五十分! 薄くなってしまったところに肥料を撒き足したり、のんちゃんが軽トラの荷台を綺麗に掃いてくれたり、ちゃんと最後まできっちり終えて、それを含めての十二時五十分でした。すばらしい試合でした!

■とことん全力で

 午後は、野畑に行きました。野畑は、山畑に比べると、かなり小さい畑です。
「これは、あっという間に終わるよ」「七人いるし、十分くらいで終わるんじゃないかな」
 と、かなり余裕を見せるわたしたち。その会話も、次第に、
「いや、十分もかからないよ!」「じゃあ、どのくらいだと思う?」
 ……と、ヒートアップしていきました。
 そこで、「何分で終わらせることができるか、みんなで予想してから肥料入れをしよう」ということになりました。

 

 

 軽トラ一杯の肥料×七人のなのはなの子=何分? 今までの肥料入れのスピード感覚を思い出して、みんなが思い思いに、自分の予想タイムを、発表していきました。古吉野なのはなからストップウォッチ、メモとペンも持ってきて、やるからには、とことん全力のわたしたちです。
「タイムがきっちり分かるように、全力でやろう!」と誓い合いました。さあ、野畑の肥料入れ、スタート!

 

■エネルギッシュでスピーディ

 もう、ものすごい勢いでした。まるで定点カメラの早送り映像のようです。
 牛肥をもらいに、軽トラに押しかけていくみんなと、ぶつかるぶつかる。のんちゃんとまちちゃんの、スコップでテミに牛肥を詰めていくスピードも凄まじいです。
「早くテミ持って行ってー!」と言うのんちゃんの叫び。そして、牛肥を手にして走り出したわたしたちに、「まんべんなくだよー!」と言うまちちゃんの声が、遠くで聞こえたような気がします。みんなで、無我夢中で撒いていきました。

 せいこちゃん、ももかちゃん、わたしは、畑の短い辺を、並んで撒いていっていたのですが、やよいちゃんは畑の長い辺を横に進みながら撒いているし、さきちゃんはもらったその場で即、牛肥を撒いているではありませんか! 様々な方式を駆使している、こんな肥料入れはすごく珍しいのでは……。午前中と同じ『セルフ方式』だけれど、まるで違う。なんてレアでエネルギッシュでスピーディな肥料入れ!
 そして、「終わったー!」という声で、ストップウォッチを止めました。タイムは、四分九秒! 優勝は、「四分四十五秒」と予想していた、やよいちゃんでした!

 みんなからやよいちゃんに、ちょっとした賞品を贈りました。「スタンディングオベーション」のプレゼントです。軽トラの荷台のステージに上がったやよいちゃんを、座っていたところから立ち上がっていき、最後には拍手の大喝采で、わっと包み込みました。ちょっぴり照れくさそうだけれど、うれしそうなやよいちゃんの笑顔に、拍手はおさまりませんでした。

 

■牛肥入れ部のとりこ!

 それにしても、四分で終わってしまうなんて……。予想を的中させたやよいちゃんもさすがだけれど、四分で終わらせることができたわたしたちもさすがだなあ、とも感じます。さすが、牛肥入れ部! わたしたち一人ひとりの活躍と栄光を称えて、拍手。
 このように作業終わりにみんなと味わう興奮と高揚感は、何よりも気持ちが良いです。一度味わったら忘れられない、そして、牛肥入れ部のとりこになるのです。

 部員のみんなといっしょに動いていると、自分が強くなったような気持ちになります。
 みんなの明るさや動きに大きくカバーしてもらって、自分の体力も腕力がどうであれ、どんな畑の牛肥入れもできる、なんでもできる! と思えます。
 春が来て、「牛肥入れ部」の部員になれて、とても楽しかったです。
 以上、牛肥入れ部の活動についてご紹介しました。牛肥入れ部、いつでも新入部員募集中です!