「わたしたちの手で」 みつき

3月25日

●わたしたちの手で

「池上の畑のすももの花が、満開なんだ」
 あんなちゃんが教えてくれて、みんなですももの木に駆け寄っていきました。
 蕾と花で埋め尽くされて、枝が真っ白。そのなかに新芽の緑がアクセントのように混じっていました。

 桃の花が『無邪気な女の子』とすると、すももの花は『清楚なお姉さん』のような感じだなあ、と思いました。ふわふわと集まった花は、花嫁のウェディングドレスが揺れるようでした。すももの木のそばは、優しい良い香りが広がっていました。

 視覚も嗅覚も、全身で包み込まれるわたしたち。
「綺麗だね」「他のみんなにも見せたいね」と、しきりにつぶやいていて、時間が止まってしまってもいいと思えました。
 あまりに美しいものを見ると切なくなってしまうんだなあ、と、花を見て感じたのは、初めてです。
 散ってしまう前に、またみんなでお花見に来たいです。

 午後、桃の花粉採りをしました。
『おかやま夢白桃』は人工授粉の桃の木だそうで、そのために『はなよめ』の桃の木から花粉を採っていくとのことでした。
 あんなちゃんが、
「完全に開ききった花からではなくて、風船のように膨らんだ、開花寸前の花から採るのがベストだよ」
 と教えてくれました。

 開ききった花の雄しべは、すでにやくも開いてしまっていて、花粉が出てしまっています。でも、開花寸前の雄しべは赤色をしていて、潰してみると、花粉が出てきました。この状態のものをを保管しておくと、やくが開いて、花粉を採ることができるそうです。

 いつもの摘蕾のようにしながら、花粉として使える蕾を袋に貯めていきました。
 普段、ぼとぼとぼと、と蕾を落としてしまうのは、どこかさみしい気持ちになったりもしていました。でも、「今日は集められるんだ!」と、とってもうれしい気持ちになりました。

 みんなで農協にも行かせてもらって、あんなちゃんから「採やく機」の使い方も、教えてもらいました。
 採ったばかりの蕾を機械に入れると、ばらばらになって、やくと花の欠片に分かれていくのです。それも、なんと5秒で!

 みんなで「いち、にい、さん…」と数えながら、機械を動かしました。5秒経ってから、機械の横に付けられた蓋を開けると、ポップコーンのように、ポンポンポン! と花の欠片が弾け出てくるのが、すごく面白かったです。
 下の引き出しを見てみると、花の小さな残りかすが混じった中に、やくが溜まっていました。それをさらに、1~2ミリのふるいにかけると、完全に、真っ赤なやくだけになりました。これで、完成です。
 ななほちゃんと、「すごい! ふりかけみたい!」と笑っていたのですが、これが桃を誕生させる、大切な粉なんだなあと思うと、ちょっぴり神秘的で、不思議な感覚がしました。

 みんなで大事に持って帰ってきて、図書館に保管しておきました。紙の上に薄く広げられたやくは、サンドアートのように綺麗でした。
 ここから、少しずつ開いて色が変わって、1週間後には花粉が出てくるとのことでした。みんなでその様子も見ていけることが、とても楽しみです。

 今日は、「なるほど!」というおどろきと、面白さの連続でした。
 桃の作業に入らせてもらって、桃の木を通して、あらためて自然の力ってすごいものだなあと感じます。
 今更のことになってしまうかもしれないけれど、やっぱり桃の木にも命があって、心があるんだと、気づかされることばかりです。
 そのとき、桃の木が良く生きられるように、わたしもちゃんと生きたいと思えます。
「人知を超えた存在」のように、桃の木も見てくれていると思って、桃の木に恥ずかしくないような身体と心で動いていきたいです。

 かりんちゃんが帰ってきてくれて、明日『なのはな写真館』ができるのが、とてもわくわくします!
 なのはなのみんなが撮ってくれた、かりんちゃんの小さい頃の写真も見せてもらって、その笑顔が本当に可愛いくて、宝物のような1枚でした。
 明日また、かりんちゃんの素敵な1枚を、みんなで増やせたらいいなあと思います。
 おやすみなさい。