【3月号⑩】「甘酸っぱいユズとバンペイユで子供組からバレンタイン」ななほ

  
 子供から大人への坂道を、全速力で走り進んでいる、なのはな子供組の私たち。

 そんな私たちは、甘く、酸っぱく、ほんのり苦く、何だか、ユズとバンペイユのよう。

 よし、子供組の私たちから、なのはなのみんなへ特別なバレンタインプレゼントを用意しよう!

 ということで、一月下旬から密かに、バレンタインの企画を考えていたなのはな子供組六人は、手分けをしてバレンタインスイーツと、みんなが嬉しくなるような飾り付けや替え歌を考えようと、バレンタインの日に向けて走り出しました。

 私は、なのはなファミリーで桃栽培や野菜作りと同時並行で、バンペイユという果樹の担当をしています。

  
 なのはなのバンペイユは、四年前に盛男おじいちゃんが吉畑手前ハウスに苗木を植え付けてくださったもので、今年初めて、実をつけました。

 私がバンペイユの担当になった頃は、まだ木の高さも二メートルほどだったのですが、今では一番高い枝が三メートルを超え、立派に育ちました。収穫の今年は、全部で一六玉のバンペイユを収穫することができ、みんなで美味しくいただきました。

 そして、柑橘類であるバンペイユの良いところは、皮も食べられること。

■バンペイユの皮で

 なのはなで採れたバンペイユは、平均して直径が二〇センチ、重量が一玉一・五〜二キロと、よく見るバンペイユと変わらない姿で、一玉でみかん一〇個分以上のボリューム感があります。

 そのため、皮も分厚い。
  
  
 そんなこともあり、河上さんと相談して、バレンタインに向けてバンペイユの皮を使った砂糖漬けと、ユズ担当のりなちゃんも一緒にユズのコンポートを使ったオランジェットを作ることになりました。

 私はなのはなに来るまで、バンペイユを食べたこともなければ、見たことも聞いたこともなかったので、初めてバンペイユを半分に切ったときは、驚きました。

 なんと、皮が二センチ以上もあり、自分が小人になってミカンの皮を剥いているような気分になりました。

 りなちゃんと一緒にバンペイユの皮をざっくりと切っていき、鍋でゆでこぼしをしたあと、たっぷりのお砂糖とグレープフルーツジュースを少し入れて煮込みました。

 台所でユズの皮を煮込んでいる間、とっても爽やかで優しい甘さに満たされて、台所で別の作業をされていた河上さんも、

「う〜ん。いい香りがしてきたね。順調そうだね」

 と嬉しそうに声をかけてくださりました。
  
  
 煮詰めた状態で河上さんたちと味見をしてみると、それだけでも柔らかく、甘く美味しかったのですが、砂糖漬けにするために、煮詰めたバンペイユの皮をバットの上で乾燥させました。

 冬ということもあり、上手くが乾燥が進まない、となったときは、河上さんが『ドラッピー』という野菜や果樹の乾燥機の使い方を教えてくださり、ドラッピーで乾燥させると、一晩で、とても綺麗にバンペイユが乾燥しました。

■溶けない雪

 そしてグラニュー糖でお化粧をしたら、バンペイユの皮で作る砂糖漬けの完成。

 りなちゃんと一緒に、バンペイユの皮一つひとつに、丁寧にグラニュー糖をまぶしていくと、オレンジ色の半透明な皮の回りに、透明な雪の結晶がついていき、その中に新しい世界があるような気持ちになりました。 

晩白柚の皮で作った砂糖漬け晩白柚の皮で作った砂糖漬け

     
 このままどこかに飾っておきたいような、手のひらの上で溶けない雪を光らせたバンペイユの皮たち。

 試作では何度か、計画不足でバタバタしたところもあったのですが、無事に美味しくて綺麗なバンペイユの砂糖漬けができて、りなちゃんと顔を見合わせる度に、「よかった〜」「バレンタインが楽しみだね」と笑い合いました。

 そして、朝や夜の時間を使って、なつみちゃんたちとバレンタインらしい、ハートの紙飾りを作り、いつの間にかバレンタインの日が来てしまいました。

 と、その前に。試作ができた段階でお父さんとお母さんのところへ、味と、お皿を見ていただきに、りなちゃんと行きました。

■ユーモラスな名前を

 お父さんがバンペイユの砂糖漬けを口に入れて、最初に言ってくれたのは、

「え、これが皮なの? すごくおいしいね。この、後味に残る渋みもまた、大人っぽくて染みるね」

 お父さんは、なのはなの子みんなが知っているとおり、甘党のため、バンペイユは少し酸っぱかったり、皮なので渋みもあるから口に合うかなと最初は不安なところもあったのですが、お父さんの言葉に自信が出て、とても嬉しくなりました。
  

ユズのコンポートもオランジェットにユズのコンポートもオランジェットに

    
 でも一つ問題なのが、盛り付け。

 その日は、私もりなちゃんも急いでいたこともあり、お皿にバンペイユの砂糖漬けとユズのオランジェットを綺麗に盛り付けた後、お父さんのところに走って行ったため、お父さんの所に着いた頃には、お皿の中がちょっぴりぐちゃぐちゃ。

 そのため、お父さんが、

「う〜ん。味は美味しいんだけれど、ちょっぴり盛り付けが。これは、なんていう名前にするの?」

 と言いました。

 私は最初、

「ユズのオランジェットと、バンペイユの砂糖漬けです」

 と答えたのですが、お父さんが、

「そうじゃなくて、何だかその名前を聞いて、その気持ちでこれを味わえるような何か」

  例えば、とお父さんがつけてくださったユーモラスなタイトルに、私とりなちゃんは笑いが止まらなかったのですが、お父さんが、

「そんな名前がついていたら、多少、盛り付けに失敗しても、その気持が分かる。何かいい名前を考えておいてね」

 と話してくださり、バレンタイン当日は、お父さんをびっくりさせるくらい、とびっきり素敵な盛り付けをしようと、気合いが入りました。

■本気の盛りつけ

 バレンタインの日は、朝からワクワク、ちょっぴりバタバタ。

 私たちの本番は、その日の午後です。それまでは、私とりなちゃんで主に加工を進めていたのですが、バンペイユの砂糖漬けとユズのコンポートを半分、チョコレートの海に沈めて、キラキラのアラザンでトッピングするという工程を、子供組のみんなとしました。
  
   
 チョコレートは湯煎で溶かしたのですが、この湯煎は温度が五十三度以上になってもチョコレートが分離してしまうし、五十度以下になってもチョコレートが固まってしまうため、温度計を片手に、みんなと鋭い気持ちでチョコレートに向き合いました。

「これで失敗したら悔しいね」「盛り付けまで綺麗にして、お父さんをびっくりさせよう」

 何としても成功させたい私たち。子供組の本気を見せるためにも、ここは何が何でも失敗できません。

 私は、さくらちゃんと、ももかちゃんとバンペイユを担当して、りなちゃんとなつみちゃんがユズの担当で、いざ、チョコレートがけに。トロトロになったチョコレートにユズの砂糖漬けを浸すと、何だかバンペイユの嫁入り準備をしているような気分になって、チョコレートのドレスを着て、アラザンでお花を散らしたバンペイユの花嫁さんは、とっても美味しそうでした。

 また、ユズのブースでは時々、「ああ〜」というりなちゃんの声、「あ、チョコレートの洪水だ」というなつみちゃんの声、「これは、子供組で食べよう」という声も聞こえたけれど、とっても賑やかで楽しくて、後半は、「見てみて、綺麗にできたよ〜」とお互いに見せ合いました。
  
  
 失敗率の高いチョコレートの湯煎も、子供組のみんなの力が集まると、怖くなくて、とっても綺麗でよい状態で、チョコレートがけに成功しました。

 盛り付けるお皿は、ガラスのお皿。そこに、チョコペンで一枚一枚、ハートを描き、チャームポイントのピンク色のパールチョコをトッピング。
  
  
 無事にバレンタインの準備は整いました。

■『十代の恋』

 夜八時。

 子供組でお揃いの赤いチェックシャツ、カウボーイハットにハートのサングラス。首には黄色のバンダナをつけて、私たちからみんなへ、バレンタインソングを歌いながら、みんなに食堂に集まってもらいました。

本気で盛り付けした末の名前は『10代の恋』

    
 本日のメニューは、なのはな産ユズを使ったオランジェットと、なのはな産バンペイユの皮で作った砂糖漬け&チョコレートがけ。その名も『十代の恋』です。

 私たち子供組から、みんなへ向けて大好きな気持ち、感謝の気持ち、いつも子供組の私たちを大きく受け入れてくれてありがとう、という気持ちを込めて、みんなとバレンタインのささやかな一時を過ごすことができて、とても幸せでした。
  
  
 色々なドラマもありましたが、無事に子供組からのバレンタインは大成功に終わりました。

 まだまだ、未熟な私たちですが、なのはなで利他心を軸に、力強い大人に成長していきます。

 次回は、どんな企画で私たちが楽しもうか、間違えました、どんな企画でみんなを楽しませようか、考えているだけでワクワクしちゃいます。

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西洋クルミ・ハシバミに追肥をしました!
  
  
 なのはなファミリーでは、桃をはじめ、イチジクやブルーベリー、ポポー、栗などの果樹を育てています。

  
  
 河原開墾畑で育てている西洋クルミと、幼稚園西畑で育てているハシバミに牛肥の追肥をしました!