【2月号⑱】「なのはなの子VS冬将軍 雪かきで心も身体もポッカポカ」ちさ

雪に覆われた中庭ロータリー。階段の段差も分からないくらいの積雪です

  
 十年に一度の大寒波。予想最低気温マイナス十二度。

 その非日常の寒さに、(寒いのは嫌だよ)という自分と、(いったいどんな寒さなのだろうか)と、心のどこかではワクワクしている自分とがいました。

 そしてやってきた大寒波。それは私の甘い予想をはるかに上回るものでした。

 夕方から急激に冷え込み、外を見れば吹雪で真っ白。見る見るうちに道路が見えなくなり、次に外を見れば、外にあるあらゆるものがふんわりと雪に覆われて形が丸みを帯び、次見るときには階段さえもがスロープになり、一歩踏み出してみればスポッ。
     
 長い靴の長靴のはずが、長靴さえも足りないくらいに降り積もっているのでした。

 雪合戦に、雪だるま、かまくら作り……。

 雪を連想すると思い浮かぶワクワクするものを通り越して、お勤め組のみんなは無事に帰ってくることができるだろうか、野菜たちは大丈夫だろうか、と心配が募りました。

 雪でしか味わえない純白な世界や、しんと静まり返った聖なる世界。こんなにも美して、そして一つひとつの結晶も繊細で、宝箱にしまっておきたいくらいに美しいのに、それが集まると雪男を連想させるような怖さがありました。
  
  
 およそ七十センチくらいでしょうか。こんなにも降り積もった雪は生まれて初めてです。感動しつつも、これでは人も車も外へ出られません。

 ということで、雪が止んだころから全員総出で雪かきを行ないました。

■身体はもうポカポカ

 スコップにテミ、クワやジョレン、それぞれの道具を持って、いざ出陣です。

 あゆちゃん率いる私たちのチームは古吉野なのはなに上がってくる坂道から、国道に繋がる橋までの雪かきを行ないました。
  
  
 以前、雪が積もったときにやった、この坂の雪かき。その五〜十センチくらいのと同じ雪かきを想像していた私は、今回の雪の強烈さを改めて思い知りました。

 ふわふわで軽いものの、上段、中段、そして下段の三段階に分けた動作が必要でした。そうでないとテミが入りません。

 外に出たときは、長靴の外からも雪の冷たさが伝わってきて寒かったけれど、五分もしないうちに身体はもうポカポカに。エイサホイサやっていて、道路の灰色のような黒が見えて、そして、振り返ってみるとまだ細いけれど道になっているのを見ると、とても嬉しかったです。
  
  
 雪の白をずっと見ていたからか、道路はこんなにも黒いのか、とも思ったし、道路の色をこんなにも嬉しく思ったこともないなと思いました。

 楽しい反面、全身仕事であり、思った以上に必要な持久力。久しぶりの力仕事に、すぐに息が上がりました。

 そんなとき、休憩がてらみんなで雪に顔を突っ込んで、雪で型を取る形で雪お面をつくってみたり、雪に背中からダイブしてみたり、雪に埋もれた状態で突如起き上がって遊んだり。

 特別な雪に恐れを感じつつ、特別な雪を思う存分楽しみました。ダイブしたときの、フッカフカで、弾力がなく自分の思う形のまま受け止めてくれる感覚や、雪に埋もれたときの音のない静かな世界のひと時。

 汗をかくくらいポカポカの身体を服の外側からひんやりと包む優しい冷たさ。少し身動きをしたら顔に雪がいっぱい入ってきて、服に入ったっていいやーっと思ったときの解放感。
  
  
 雪がいろんなものにめぐり合わせてくれて、雪の中にいると飽きることがないなと思いました。

 少し進んで慣れてきたころに、思ったよりずっと多い雪の量に、気が遠くなったこともあったけれど、さらに慣れて、マイ雪かきルールを見つけたころには、もう、たのしくてたのしくてたまりませんでした。

 ランニングをしているときみたいにリズムができて、それに合わせて規則正しく、真っ白だったところからアスファルトが顔を出していくのが、何が面白いのか根拠なんてない、ただひたすら夢中になる面白さでした。

■びっくりしたこと

 三つ、びっくりしたことがあります。

 一つは、すくった雪を離すときに、テミに少し雪がくっついて残ってしまい、スパッと離れてくれないことに困っていたときに、スキーの板みたいにワックス代わりに油を塗ってみてはどうかと、あゆちゃんたちと試したところ、スルン、と雪が離れてくれたことです。
  

おやつに焼き芋をいただきました!

  
 切れ味のいい包丁で野菜を切るときのような気持ちよさがありました。そんな風に、違う用途の技術や知識を生かせるんだなということが、すごいなと思いました。

 二つ目は、雪の質の違いです。日陰から日に当たっている道に移ったとき、雪が解けている分だけ密度があり、ふわふわな雪にシャリシャリ感が増しました。

 雪かきは、断然、密度があるほうがやり易かったです。ダイブには、ふわふわがとても気持ちよかったですが。

 どの状態の雪も、雪、と呼んでいるけれど、いろんな雪があるんだなと思ったし、空の何が違って雪の質は変わるのだろうかなと思いました。
  

お父さんもユンボで出動!

  
 三つ目は、みんなの力のすごさです。

 長いと思っていた道路も、みんなと並んで自分のブースをやっていると、あっという間にたどり着いていました。大きな雪の山を崩して雪を運ぶときも、次戻ってきたときには、熱で溶かしていっているみたいに、みるみる山が小さくなっていきました。そして何より、みんなとだから頑張れたし、楽しいんだなと思いました。

 疲れてきたときも、笑っている声がしたり、「よし、やるしかない」と声を掛け合ってみたり、「おりゃー」と声を出し合ってみたり、一緒にしりとりをして励まし合っていたり。

 一人だったら途方もなく感じてしまうことも、楽しい事に代わってしまって、仲間パワーはやっぱりすごいです。
  
  
 ちょうど作業終わりの五時に、目標としていた範囲の雪かきが終わりました。身体もポカポカ、心も達成感と楽しさとでポカポカでした。

 経験したことのない大雪にあたふたとしてしまいましたが、寒波が来ると知ったら、水道管のことやビニールハウスのこと、そして、積もった場合には雪かきなど、今回体験したことも、しそびれたと感じたことも、次に来たときには。、万全の状態であれるようにしたいです。