【2月号⑰】「今、この瞬間に みんなとつくるなのはなユートピア」りな

  
 成人式があった日の夜、子供組は新たに、次の企画をするために、走り出しました。切り出してくれたのは、なつみちゃんでした。子供組のみんなを集めて、「葉っぱ隊をしよう!」と伝えてくれました。

 去年の大みそか、紅白歌合戦で、有志枠で子供組チームと、『カラヤブリ隊』と名前を付けて出場しました。

 そのチームが出来る前、何をしたらいいのか方向性が決まらないときに、あゆちゃんが、「葉っぱ隊とかどう?」と持ち出してくれたことがありました。

 その時からずっと、葉っぱ隊はどんなものなのだろうかと、好奇心で心に引っ掛かっていて、紅白歌合戦ではできなかったけれど、いつか子供組で出来たらいいなと思っていました。

 それは、私だけではありませんでした。子供組全員がそう思っていたようで、なつみちゃんの提案に全員同意しました。

■お母さんを喜ばせたい

 一月二十三日は、私達の大好きなお母さんのお誕生日です! お母さんのお誕生日会に、子供組で葉っぱ隊のバースデーソングをお母さんにサプライズプレゼントしたい! 

 お母さんには秘密で、準備を始めました。

 葉っぱ隊とはいえ、子供組オリジナルで、ティーリーフスカートを手作りして着ることに決まりました。
  

籾摺り機倉庫にて、ティーリーフスカートを作りました!

  
 ティーリーフスカートとは、笹のような形をしたティーリーフという大きな葉を重ねて作った、膝丈のスカートです。ティーリーフはこの近くでは手に入らないし、何か別の材料を調達して作る必要がありました。

 材料に困っているとき、ちょうどさくらちゃん、なつみちゃんがハウス修繕をしていて、出てきた使わない防寒資材があるよと教えてくれました。防寒資材は、普通のビニールと少し違って、肉厚でツヤツヤ、テラテラしていました。

 さくらちゃんが一枚葉っぱ型に切って色を塗ってくれると、葉っぱの艶やかさや、質感がよく似ていて、ぴったりの材料が、まるで必然に私達のもとに来てくれたかのように、現れました。

 ビニールを洗って、干して、型を描いて、切って……。子供組のみんなとひっそりと、でも確実に進めていました。

 スカートの制作と同時に、みんなで葉っぱ隊の替え歌を考えました。お母さんへ、日ごろの感謝の気持ちや、思っていること、お母さんの好きなところを歌詞の中にギュッと詰め込みました。

 替え歌を考えながら夜は寝て、朝になると子供組チームで制作を進める。ワクワクして、いつも心の中は嬉しい気持ちで満たされていて、そんな会に向かう日々が、とても楽しかったです。

 子供組のみんなと、欠けているところは補い合いながら作業している時間が嬉しかったし、意見がぶつかり合うことはあるけれど、たった一つ、お母さんを喜ばせたいという気持ちは本物で、本気になって考えたり、遊べる時間がなんて嬉しいんだろうと思いました。

 小さなことでも一生懸命になって、心から楽しんでいる子供組のみんながいると、楽しみ方もたくさん教えてもらって、明るくて前向きな方に引っ張ってもらいました。

■助っ人!

 そして、早着替えをする間、間を繋げる助っ人がほしい! と思ってお仕事組さんに声を掛けると、引き受けるのみならず、「一緒に出られることが嬉しい!」と喜んでくれました。

 そして、私達が知らない所で、集まって、ダンスを解読して、練習してくれていました。
  
  
 会の前日に初めてお仕事組さんと一緒に合わせた時に、お仕事組さんがとても可愛いダンスを踊って私達の番に繋げてくれました。そのクオリティがすごいのとありがたいのとで感動したし、涙が出そうなほど嬉しかったです。

■お母さんの背中を追って

 誰もが良かれの気持ちで、助け合える仲間が、私の周りにはたくさんいました。そして、いつでも安心して帰ってこられる家が出来ました。その存在に気づいたとき、本当に生きていてよかったと思えるぐらい、今が幸せだと思いました。

 未来が真っ暗で、生きられる道が見えなかった私に、今はこんなにも心強くて優しい家族がいます。温かい場所があります。それは、なのはなに出会えたからです。お母さん、お父さんと出会えて、家族として大きく受け入れてくれたからです。

 人間味に欠けて、未熟だった私をお母さんが一から育て直してくれました。真正面から向き合って、間違っていることは間違っているよと、伝えてくれました。
  

なのはなの野菜を詰テリーヌテリーヌ

  
 そして、何が正義なのか、何が優しい事なのかを、背中で示してくれました。

 良いところも悪いところも全部理解して、それも含めて大きく包み込んでくれました。良く変わっていくことを、ずっと諦めずに信じてくれました。心の中が空っぽだった私に、お母さんが優しさの種を蒔いてくれました。

 はじめて、真っ暗だった目の前に、光が見えました。こんな私でも生きられるたった一つの希望が生まれました。

 お誕生会の準備の期間が、こんなにも楽しくて、心が温かくなるのは、お母さんがなのはなで、本当の娘として育ててくれたからだなあと思います。

 そして、子供組みんなも同じで、私達は、お母さんが種を蒔いて、水をやって成長した葉っぱ達なのだと思いました。まだまだ成長途中だけれど、お母さんの背中を追って、これからも成長していきます。なのはなの子になれたこと、お母さんの娘になれたことが誇りです。

■お祝いする気持ちで溢れて
  
  
 会当日は、盛大にお母さんを迎えました。ランチメニューは、お仕事組さん達がどのレストランよりも豪華で美味しい食事を用意してくれていました。

 なのはなで今、採れている野菜を全て使った料理は、目にも鮮やかで、テリーヌなどは断面が芸術作品のように綺麗で、手を付けるのが申し訳ないほどでした。

 会場になる図書室は、飾り係さんが可愛く飾りつけしてくれていました。

 図書室の高い天井の下に、バルーンのお花やぬいぐるみがたくさん吊り下げられて、パーティーモードになっていました。普段置いている机やイスが無くなって、部屋の中はガランとして広いけれど、とても温かい空間になっていました。

 図書室にお母さん、お父さんを、みんなでハッピーバースデーの三部合唱で迎えました。この日のために練習してきたものでした。綺麗なハーモニーと、お母さんをお祝いする気持ちで溢れていて、その中にいると心が満たされていくことを感じました。

 一チーム目の出し物は、「ナノック・クラプトン」チームで、『チェンジ・ザ・ワールド』を演奏してくれました。昨年、アコースティックギター教室のみんなが練習していた曲でした。図書室から漏れ聞こえてくる音に耳を澄まして聞いたことはありました。z

 けれど、今回は、アコースティックギターを奏でるりんねちゃん、ひろこちゃんに加えて、ボーカルのあゆちゃん、エレキギターのまえちゃん、ベースのさやねちゃん、パーカッションのかにちゃんも入って、とても豪華になっていました。
  
  
 二チーム目で出てきたのは、さきちゃん、まなかちゃんの二人。『センド・マイ・ラブ』の曲が流れると、フリーズしていた二人が物語の世界から飛び出してきたかのように、歌いだし、踊りだします。

 まさかミュージカルが見られるなんて! お父さんとお母さんのちょっぴりロマンチックな日常を演じている二人の姿がとても可愛かったです。

 プチ劇団を見せてもらえて嬉しかったし、『リライト・ザ・スターズ』を歌う二人の声が透き通っていて、キラキラ輝いていて、目の奥がジンと熱くなりました。

■みんなとの間で
  
  
 いよいよ私達の番です。子供組のみんなと、お仕事組さんと、お互いに葉っぱを付け合いました。全員分のティーリーフスカートは図書室の外に残して、全身デコチューに葉っぱ一枚つけて出陣!

「僕たちは、なのはな葉っぱ隊。ユーカリお母さんが、僕たちを一から種を蒔いて育ててくれたんだ」それは、本当に私達そのままでした。

 なのはなに来るまでは、依存や、症状、色々なもので自分を守らないと生きていけませんでした。でも、今は違います。自分を守る鎧がなくても、葉っぱ一枚でスースーしていても、私達にはお母さん、お父さん、みんながいるから寒くありません。怖くありません。
  
  
 お仕事組さんが、場を繋いでくれている間に、私達はバースデーソングを披露できるようにティーリーフスカート衣裳へ着替えました。

 「子供組さん、準備オッケー?」図書室から聞こえるお仕事組さんの声に、子供組で勢いよく返事をしました。

 曲が流れてステージに上がると、みんなが笑顔で手を叩いてくれました。お母さんも、とても嬉しそうでした。子供組で練習する時は、お母さんにまだ内緒にしておくために小声で練習しなければなりませんでした。

 でも、今日ついにお母さんに見てもらえる日で、練習よりも一番大きな声で歌おうと思いました。

 会場にいるみんなが、私達をとても温かく包み込んでくれました。お母さんを見ると、目を赤くして、涙が出るのをぐっと堪えているような笑顔でした。
  
  
 その表情を見ると、私も泣きそうになりました。お母さんに喜んでもらえて、たくさんの家族に受け入れてもらって、子供組とステージに立つことが、出来て、嬉しさがこみ上げてきました。私達と、お母さん、みんなとの間で、たくさん幸せをつくることが出来ました。

■お腹が痛くなるほど

 四チーム目は、オノ戦隊ユカレンジャーの登場です。ユカリーナ司令官のもと、五人の戦士たちが今日も怪人リコーシン達と奮闘中。大きな効果音の中で、技を繰り広げて決め台詞をいうレンジャー達が、かっこよくて、面白くて、仲間に入りたくなるぐらい、楽しそうでした。
  
  
 ユカリーナ司令官から教わった数々の言葉を胸に、負けそうになってもパワーを出し切って立ち向かっていくレンジャー達に勇気をもらいました。

 五チーム目は、ひでゆきさん、あゆみちゃん、たけちゃんが、『ディープ・ウォーター』を披露してくれました。たけちゃんの大好きな曲を、あゆみちゃん、ひでゆきさんがたけちゃんを囲んで歌っている姿に、心がとても温かくなりました。

 ラストのチームは、『近未来カルチャースクール』のみなさんです。次世代の遊び方講座、廊下のすれ違い方講座、歩き方講座……。これまで聞いたことのない

ような、とても変わった講座を、カリスマ? 講師たちが次々と登場して、授業を開いてくれました。

 講師一人ひとりのキャラクターがとても濃くて、面白くて、お腹が痛くなるほど笑いました。けれど、それは止むことなく、次々に新しい授業が繰り広げられます。
  

カリスマ講師の皆さ次世代講座次世代講座

  
 なのはなのみんなには日常で通じることも、実はこうして見ると近未来だなと感じることもたくさんあって、興味深かったです。

 みんなの知らない一面を知ることが出来て、こんなにたくさんの才能を秘める仲間がいることが、とても心強く思いました。お母さんが切り拓いてくれた道に続いて、仲間と一緒になら、近未来への道筋をつけていくことが出来ると思うと、たくさん希望をもらいました。

 出し物のチームが終わって、次はゲーム係さんが進行してくれました。

■白熱ゲーム

 一つ目のゲームは、『豆つかみ大会』。お正月で二人羽織豆つまみをしたけれど、その時と打って変わって、まったく新しい豆つかみのルールがありました。  

  
 長机に二つのトレーが置かれて、二チームで対戦する豆つかみリレー。

 自分のチームのトレーの前に座り、自分のトレーに乗っている豆を相手のトレーに、お箸やスプーンを使って移します。時間内ので、どれだけ自分のトレーの豆を減らせるかを競います。

 寿箸だけではなく、菜箸、スプーンも用意されていて、どの順番でどの道具を使うかが決められていました。

 二回戦目はトレーの距離が離れて、より難しくなりました。私はななほちゃんチームで、二回戦目の一番をさせてもらいました。箸を持って、一番高得点な小豆だけを目がけてつかんで、相手のトレーに入れます。

 でも、なかなか小豆がツルツル滑ってつかむことができません。つかめた!と思って勢いよくトレーの中に入れると、その反動と、トレーが浅いのとで、豆がトレーから飛び出していきました。
  
  
 その間に、どんどん相手チームのトレーから小豆が運ばれてきます。小豆をトレーの中から排除しても、排除しても相手チームのトレーから運ばれて追い返されて、とても焦りました。けれど、これまでしたことのないような新しい豆つかみが、白熱してとても楽しかったです。

 二つ目のゲームは、お母さんクイズ。実行委員さんが出してくれるお母さんにまつわるクイズに、チーム対抗、三択で答えます。お母さんが好きな季節、お母さんが好きな魚、好きなお父さんの言葉、行ってみたい国……。

 お母さんのことを知っているようだけれど、知らなかったことがたくさんありました。けれど、クイズを通して、もっともっとお母さんのことを知れたことがとても嬉しかったし、チームのみんなと額を寄せ合って、これまでのお母さんと過ごした生活を頼りに振り絞って考えている時間も、とても楽しかったです。

 三つ目の、最後のゲームはお絵描きしりとりでした。チームのみんなで紙に大きく絵を描いて、しりとりをします。

 制限時間内にどれだけチームで絵を繋げることが出来たか、スピード勝負になります。ただし、どこかでしりとりが途切れてしまったら、途切れたところからの絵は点数から無効になります。気が付いたら、途切れたところから、また続きの絵を描くことが出来ます。
  
  
 チームのみんなと、すぐに描くことが出来て、誰が見ても分かるような絵を描こう! と話しました。

 けれど、そう言った矢先、早くも四枚目で、何を描かれているのか分からなくなり、振り出しに戻りました。何度もそうしているうちに、時間が来てしまい、こんなにも、限られた時間の中でたくさんの絵を繋げることが難しいんだ、と思いました。

 けれど、繋がったチームは黒板にずらーっとみんなの描いた絵が並んで貼りだされていました。もう一度リベンジしたい! という気持ちを残して、ゲームが終わりました。また、次の機会も出来たらいいなあと思いました。

■なのはなユートピア

 会の締めは、飾り・色紙係さんから、お母さんにプレゼントがありました。それは、全員で作った、夢のなのはなランドでした。
  
  
 お母さんは、折に触れて、私達に夢を話してくださります。優しくて、温かくて、誰も苦しくならない生きやすい世界を、なのはなファミリーだけに留まらずに、もっと広げて、もっとたくさんの人が知って、来られる場所を作りたいんだ。

 お母さんの夢を、私達で実現するために、小さな箱を使って、なのはなユートピアを再現しました。

 箱の外側には飾り係さんがマップとして、ランドの全貌が見えるように飾ってくれました。折り紙を小さく小さく切って貼ってあって、とてもミニチュアな世界でした。
  
  
 小指の爪の半分にもならないぐらい小さなキャラクターが道を歩いていたり、桃畑には満開に花が咲いていたり、大きな観覧車がありました。飾り係さんが、緻密にコツコツ作ってくれた箱庭はずっと見ていても飽きることがなくて、心が洗われるようでした。

 箱の中には、なのはなランドの中で、自分はどう活躍するか、プロフィールを描いた色紙が全員分入っています。

 プロフィールには、一人ひとりの似顔絵が描かれた人形を張り付けていて、活躍している自分がどんな制服を着ているか、デザインして着せ替えが出来ました。
  
  
 漠然としていたなのはなランドの夢が、本当に実現できる夢へとぐっと近づいて、想像して色紙を描いているだけでも、とてもワクワクと心が躍りました。自分のボードを着せ替えしてプロフィールに貼りつけると、その小さな人形が今にも動き出しそうなぐらい生き生きして見えました。

 お母さん、お父さん、なのはなのみんなとなら、優しい世界を作っていける! 未来がとても明るくて希望に満ちているなと思いました。

■お母さんに出会えて
  
  
 今が一番幸せだなと思えること、そして未来に希望を持って、前を向くことが出来ること。

 それは、なのはなに出会えて、お母さん、お父さん、たくさんの家族に出会えたからなのだと思います。当たり前のことのようだけれど、当たり前ではなくて、気が付かないぐらい自然に、毎日毎日みんなに助けてもらって、引っ張ってもらっているのだと感じました。

 お母さんのお誕生日会も、思いを伝えたいお母さんが目の前にいて、そして一緒になって、本気で会に向けて練習する仲間がいるから、心から楽しんで喜び合うことが出来るのだと思いました。

 人と人との間にしか幸せはないことを、お母さん、お父さんは話してくださります。会を通してそのことを改めてはっきりそうだと言えるぐらい、実感した一日でした。
  
  
 そして、なのはなユートピアを作るのは、遠い未来ではなくて、今この瞬間だということを思いました。

 目の前の、大好きな家族と一緒に、今を幸せに、お互いさまで生きられる関係を作っていく。その積み重ねで、きっと優しい世界を広げていくことが出来るのだと思いました。

 なのはなの子としての使命を胸に、これからも成長していきます。お母さんの娘になれたことが幸せです。お母さん、お誕生日おめでとうございます。