【2月号⑮】「一品一品に真心こめて ―― 彩り添える十二品のおせち ――」ほし

  
 なのはなのお正月に、彩りを添えてくれる大切なおせち。

 みんなと、いいお正月を迎えられるように、真心こめて、気持ちを一つにして作るおせち。相手のことを思って、大切な気持ちで詰めたおせち。

 元日に家族みんなと、幸せな気持ちで、その美味しさを噛みしめながら食べるおせち。おせちづくりには、なのはなでみんなと作った野菜を使います。

 毎年、おせちづくりの際には、調理場となる家庭科室の中が、わいわいとしていて、活気があり、楽しくて温かい気持ちで満ちています。

 なのはなのおせちには、煮しめ、田作り、芋きんとん、カブの甘酢漬け、伊達巻、かまぼこ、たたきごぼう、エビの甘煮、ブリの照り焼き、数の子、黒豆、紅白なます、十二目の彩りを添えます。
  
  
 また、お雑煮のだし汁や、お正月の食事にいただく白菜サラダも、この際に作ります。

 大みそかの午前に一人一個お重におせちをつめ、それが誰の所に渡るか、元日の当日まで分かりません。

 相手の事を思って、良い縁起の意味があるおせち料理を一品、一品詰める時間は、まさに、相手へ届けたい真心を詰めているようです。

■一つひとつが華になって

 私は、今年、伊達巻と白菜サラダを作るチームになりました。

 白菜サラダを作る際には、同じチームののんちゃんが、その都度、手際よくみんなを引っ張ってくれて、順調に気持ちよく進めることが出来ました。

 白菜を切って、ユズ、ショウガ、人参をついていき、調味料と合わせます。

 どんどん野菜や調味料、単体だったものが、自分たちの手によって、料理の形になっていくとき、とても嬉しい気持ちになって、その過程もとても楽しいな、と思います。
  
  
 少し、時間が空いた時には、かまぼこの飾り切りチームに入って、作業をしました。

 等分に切られたかまぼこの上面に、二ミリほどの薄さで切り込みを入れ、そうして薄いたんざくのようになった部分の真ん中に切り目を入れて、手綱こんにゃくのように、一回転させます。

 飾り切りをすることで、かまぼこの形も華やかになって、おせちに入ると華になるよなあ、と思い、嬉しい気持ちになりました。

 一個、二個と飾り切りをするうちに、コツがつかめる気がして、どんどん楽しくなりました。

■伊達巻き

 伊達巻は、以前一度作ったことがあったものの、やはり難しいポイントがあり、極める余地が見えました。

 去年、伊達巻を作ったチームのみんなが、細かく良かった点や改善点などをまとめてくれていて、チームみんなで、そのまとめを意識して、調理に向かいました。
  
  
「調味料の入れ忘れがないように、宣言してから入れる」ということや、「焼くときに生地が偏らないように、フライパンを水平に保つこと」「『ひとつまみ』は、三本指で」などと、細かく記されていました。

 こうして、みんながその時、その時で記録を残してくれていて、年々、ノウハウが積み重なって、質の高いものを目指すことができます。

 その中でおせちを作れることが、ありがたくて、嬉しいなと思いました。
  
  
 一回分の伊達巻の材料は、はんぺん百二十グラム、卵一個、砂糖三十六グラム、塩ひとつまみ、料理酒大さじ一、みりん大さじ一、醤油小さじ一杯です。

 その材料を、すべてミキサーに入れ、かくはんしてから、卵焼き専用の四角いフライパンに流し込み、その上にアルミホイルで蓋をし、中火で遠火にして二十分ほどで焼きあがり、焼きあがったら、巻きすの上に、焼き目を上にして出し、温かいうちに巻いて、固定させます。

 これを七本分、繰り返し、翌日の朝、冷めた時、巻きすから取り外し、一本につき十等分カットします。

■成功体験

 ミキサーに材料を入れるときに、「みりん大さじ一杯入れます」と宣言するのも、気持ちも外向きになって、楽しかったです。

 伊達巻づくりで、一番、手強かったのが、“焼き加減”です。みつきちゃんと、フライパンが水平になっているかどうか見合いました。

 片方の人がフライパンをもって、もう一人の人が、横からフライパンを見ます。
  
  
 「フライパンの奥の角がもう少し上」と細かく言い合ったり、手が空いている方の人が、アルミホイルの中を少し覗いて、「あと、五分くらい火に当てたらいい感じかも」と言い合って、連携しながら、一生懸命に、伊達巻に向かえた時間が嬉しかったです。

 綺麗に焼きあがったものが、フライパンをひっくり返して、出てきたとき、ふわふわの黄色い表面や、焼けた時のほんのりと甘い香りが、幸せな気持ちを運んできました。

 一緒に作っていたみつきちゃんと、「やったー!」と言いながら喜んで、ハイタッチを交わしたり、「上手く焼けました!」と、思わずその場にいた河上さんに声をかけてしまいました。
  
  
 伊達巻は、焼き加減がとても難しいと聞いていたけれど、こうして成功体験も作り上げることが出来て、自分の中にも嬉しい思い出を、みんなと作ることが出来て、とても嬉しかったです。

■相手のことを思いながら

 自分たちのチームのおせちを作っている周りでは、他のチームのみんなが、ブリを焼いていたり、だし汁を取っていたり、芋きんとんを大鍋で混ぜていたり、みんなが楽しそうにおせちづくりに向かっている姿があって、みんなと作るたくさんのおせち料理が周りにあるのが、幸せだな、と思いました。大みそかの午前には、その出来上がったものが食堂に運ばれ、すべてのおせち料理が机の上に並びました。

 渦巻きの形が華になった伊達巻や、カブのピンク色や、きんとんの黄色や、エビの赤色、ブリの照り焼きの存在感、きらきらと上品な黒さを放つ黒豆、飾りの南天の実や葉…

…どの料理も、美しく上気品がありました。

 一品、一品、相手の事を思いながら、大切な気持ちでお重に詰めていきます。
  
  
 みんなで作ったおせちを囲んだ時間が、温かかったです。

 詰められたお重が並べられた時、いよいよお正月だな、という気持ちになり、心が満たされた思いになりました。