【2月号⑦】「止まらない坊主コールの嵐 ―― 全力で喜び、全力で悔しがる百人一首 ――」のん

 
 なのはなのお正月、二日目の遊びは、百人一首。私が個人的に一番楽しみにしている遊び、百人一首。なのはなの百人一首は、三種類の遊びがあります。一つは散らし取り。二つめは青冠。三つめは坊主めくりです。

 実行委員さんが、散らし取りに向けて歌を覚えられるように、「あなたの一首」と題して、昼食と夕食のときに、一人ひとりの席に一首ずつ、百人一首の歌と意味が書かれた紙を置いてくれていました。さらに食事のコメントの時に、自分のところに来た歌をそれぞれが読み上げていて、みんなのところに来た歌も知ることができました。

「あなたの一首」は、とてもありがたかったです。食事の席でみんなが歌を読み上げてくれる度、試合で読み手が読んでいるものだと思って、いかに速く下の句を思い出すことができるか、自分のなかで遊んでいました。

 今までは、試合のときに読み手が読むスピードと同じくらいの速度でしか歌をなぞれなくて、結局、覚えてない場合とあまり変わらないことが多かったのですが、この「あなたの一首」で大分、鍛えられました。

 

■待ち構える、狙いの札

 そうして満を持して迎えた二日。午前と午後で、書き初めをする人と、百人一首をする人に分かれていたのですが、私は午前に百人一首をするチームでした。

 遊びは、まず、散らし取りから始まります。

 準備の間に、できるだけ、散らされた札から好きな歌を探して場所を覚えたり、上の句を思い出したりしていました。

 そして、試合が始まります。好きな札のある場所を覚えているのが結構難しくて、一枚とった後、毎回その場所を少し探して、読まれたら即座に飛んでいけるように確認していました。

 読み手は各チームから一人出て、三首ずつ順番で読んで交代していくようになっているため、全員読まなくてはならず、席もそれに合わせて隣にずれていきました。

 席がずれるときに、好きな札が遠ざかってしまうと、誰かに取られてしまわないか、飛び出していけるか、かなりどきどきしました。そんなふうに、どの歌が来るか、全力で待ち構えていたので、私の気持ちの表現としてだけではなく、実際に心臓も、すごい速さでどきどき言っていることを感じました。
  
  
 なので、狙った札を取れたときには、ガッツポーズしたいくらい嬉しかったです。

 でも、試合序盤の、まだ札を探すのに時間がかかるところはあまり取れなかったり、あまり思い入れがない歌は取り逃がしてしまうものも多いです。けれど、同じチームにいてくれた、えみちゃんも歌を結構覚えて、上の句で取ってくれていて、しかも、えみちゃんが素速く取れる札が、私が取れる札と見事に被っていなくて、散らし取りは、一試合目七十九対二十、二試合目七十一対二十八と圧勝することができました。

 一位で散らし取りを終え、二つめの遊びは青冠です。この青冠が、私は、百人一首のなかでも一番好きです。頭も使うけど、運も必要で、そのバランスに絶妙にわくわくさせられます。

 この遊びは、手札がいち早く無くなった人が勝ちですが、面白いのは、向かい側に座っている、同じチームの仲間同士で、無言のうちに手札を読み合いながら、仲間を勝たせることもできる、というところです。

 私はほしちゃんとペアで、同じチームのもう一ペア(トリオ)は、なるちゃん、えみちゃん、りなちゃんでした。
  
  
 同じチームだけれど、作戦会議はできなくて、お互いが、パスをするかどうかや、その悩み方、何の札を多く出しているか、どこからどの札を出したかで、何を多く持っていて持っていないかを推測して、その上で、どちらのペアやトリオが上がるように進めるかを、決めなくてはいけません。

 面白かったのが、二試合目の終盤。なるちゃんトリオが持ち札四枚、私たちも四枚。なるちゃんたちが相手に出されたカードに対して応える番。手札を出すべきか迷っている姿を見て、これは、〝天智天皇〟を出すか、最後まで手元に残すかを、迷っているなと感じました。(編注:天智天皇は、青冠において、一番強い札です。また、二番目に強い、持統天皇という札があります)

 それを見て、自分たちの手元に持統天皇がいたので、「いいよ」とだけ言いました。

 その意味を察してくれたなるちゃんたちが、天智天皇を出して勝負に出ました。自分たちの番が回ってきて、相手の出した物に応じて、次の相手に向かって出すものを選びます。

 同じチームの人が困らないような札が相手に残るように考えて、祈って、出しました。残り二枚です。

■坊主めくりにギブソン!?

 相手がそれに応えて、次の札を出します。同じチームのなるちゃんたちは、それに応じて出せました。次の札を出して、残りの手札は一枚です。相手はそれに応じて、私たちに〝青冠〟の札を出してきました。私の手元には、〝持統天皇〟と〝姫〟…。ここで持統天皇を出してしまったら、なるちゃんたちのチームが出せる札が回ってくるかどうか、賭けになってしまう……。

 そう思って手札をもう一度よく見ると、姫と思っていた札の歌が、どう見ても男の人の書いた歌で、よーく見ると、青冠の札でした。
  
  
 「やった!」と思ってその青冠で応じて、持統天皇を出して、相手をパスさせ、なるちゃんたちが最後の一枚を出して勝利しました。相手の手札は合計で十枚以上残っていました。

 ここまで圧勝できて、最後のあそび、坊主めくり。勝つために必要なのは、運、のみ。

 二種類の坊主めくりで遊びました。一つは、一組の百人一首を一つ山にして、各チームから一ペアずつが集まり、順に引いていく試合。もう一つは、二組の百人一首を四つの山に分けて並べ、その場のプレイヤー全員でめくっていく、スーパー坊主めくりでした。

 この、全員での坊主めくりが波瀾万丈でした。終盤に、りゅうさんとななほちゃんペアが大量に札を持っていました。

 りゅうさんが完全に、ウィンターコンサートで登場した、悪役ギブソン大王になって、勝ちに行っていました。

 もし坊主をめくってしまったら、自分の手札をすべて場に献上しなければならないのですが、りゅうさんとななほちゃんが札を引くときには、他のチーム全員で坊主が出るように祈って、「坊主!坊主!」と坊主コールをしました。 最初は坊主コールをするのに気が引けたけど、りゅうさんたちの持ち札が増えていくと、だんだんそのペアに坊主が出ることを願わずにはいられなくなってきて、最終的にはのどが痛いくらい、叫んでいました。

 そんなとき、りゅうさんたちが坊主を引き、大量の札が場に出されました。自分のチームの引く番には、場の札をすべてもらえる「姫」コール、他のチームが引く番には「坊主」コールの嵐です。
  
  
 そして、姫を引いて、その札を手にしたのは……りゅうさんとななほちゃんペアでした。そしてそのまま逃げ切られて、りゅうさんたちが百五十枚近い札を持ったまま、私たちの手元には、ほぼなにもないまま、ゲームが終了しました。悔しい。

 余談ですが、私たちが引く番に、りゅうさんがギブソンの声色で「坊主」とささやくと、その通り坊主が出てしまい、苦戦を強いられました。

 ということで、すべての遊びが終了し、気になる午前の結果は……、私たちのチームが一位でした! 

 午後のチームと合同チームということで、午後が終わるまで少しどきどきしていましたが、合同チームのせいこちゃんチームも、午後一位で、他の追随を許さず、私たちのチームが百人一首で一位になりました。気合いを入れて臨んだ甲斐がありました。

 目一杯頭を使ったり集中したり、のどが痛くなるくらい歓声を上げたり、実力も運も全部が試されるゲームができる百人一首は、やっぱり最高に面白くて、大好きだな、と思ったお正月二日目でした。