二人羽織。
私の苦手な種目でした。でした、というのは、今回、りなちゃんと二人羽織をして、そのおもしろさを充分に味わうことができ、それだけでなく、遊びと言えど勝ちに行く、りなちゃんの強い気持ちから、自分の気持ちを奮い立たせてもらいました。
二人羽織を通して、人と力を合わせて何かやるとき、相手を信じたうえで、お互いが意志を持って自分の役割を果たすことで最高のパフォーマンスができることを実感することができました。
試合は、二人羽織で豆つかみをします。
二人羽織の後ろの人がお箸を持ち、前の人が身体で誘導して、トレーに広がっている豆をお箸でつかんで、トレーの隣に置いてあるカップの中に入れていきます。
豆は、なのはなで穫れた黒大豆、白大豆、小豆、落花生で、種類ごとに得点がついています。一分半の制限時間で、どの種類の豆を、どれだけカップに入れることができたかが得点になります。
チームで集まったとき、メンバーののんちゃんが、チームのみんなに二人羽織のコツを教えてくれました。後ろでお箸を持つ人は、前の人にすべてを委ねること。
一番得点の高い黒大豆だけを攻めることにして、お箸は黒大豆よりほんの少し広くしておくこと、前の人は、お箸の間隔が広かったら一ミリ単位で伝えてあげること、ここしかないというピンポイントのときに「つかんで」と言うこと。
のんちゃんが教えてくれた作戦でいこうと、チームのみんなの気持ちがまとまりました。
私はりなちゃんとペアになり、りなちゃんが前、私が目隠しをしてりなちゃんの後ろにまわり、お箸を持つことになりました。
ノーマル戦一回目。
りなちゃんが、「私に委ねてください」と力強く言ってくれて、その言葉を信じてスタートの合図を待ちました。
黒大豆の感覚を思い浮かべて箸の感覚に集中します。りなちゃんの「つかんで」の声に合わせて力を入れると黒大豆をつかんだ感覚がありました。カップの上で豆を離し、ほんの少しだけ箸と箸の間を開けて誘導に任せると、もう一度「つかんで」の声。力を入れるとまた黒大豆をつかみました。りなちゃんが目になって、私は目隠しをしているのに箸の先に黒大豆が見え、感じるくらい、はっきりと黒大豆を感じて、これが二人羽織の楽しさなのか、と思いました。
ノーマル戦二回目。りなちゃんと息が合っていき、「つかんで」「離して」「つかんで」「離して」と、次々に豆をつかんではカップに入れていき、なんと一分半の制限時間で十七個も黒大豆をとることができました。
続いては名人戦。チームから一ペア出場してトーナメント戦で試合をします。
ノーマル戦二回戦目の結果から、りなちゃんと私のペアが出場することになりました。緊張が高まり、手には汗をかいてきました。相手はそれまでの最高得点を出している、ももかちゃんのペアです。(りなちゃんに委ねるんだ)そう思って、気持ちを定めました。
しかし、豆をつかみ損ねることが多く、負け。もう一回の三位決定戦の試合にも敗れてしまいました。
チームに戻ると、りなちゃんが、「悔しい」と笑いながらも目に涙を溜めています。
私は、りなちゃんほどの強い気持ちで臨んだだろうか、あれが全力だったのだろうか、胸が締め付けられるような思いで自分に問い直すと、自分はりなちゃんに委ねたけれど、なにか自分に足りなかった気がしてなりませんでした。
試合は最後にもう一度、全員でノーマル戦をすることになりました。
チームのみんなが、りなちゃんと私にチャンスをくれて、二回戦、りなちゃんと出場できることになりました。チームのために、得点を稼ぎたかったです。
名人戦では何がいけなかったのか、それをつかみにいく思いで試合に臨みました。
試合が始まると、お箸が違うと思いました。名人戦のときに使った箸は滑りやすかった、確かにそれはあるかもしれないけれど敗因が箸のせい、それは違うと思いました。
言い訳したくなるのは自分がプレイヤーになりきれていないからではないか、そう思って最後の試合は、委ねるところはりなちゃんに委ねるけれど、豆をつかむときは自分が力を入れて自分がつかもうと思いました。
結果は黒大豆十五個。つかみ損ねることはありませんでした。
やっていて、これだとわかりました。
敗因は、私がりなちゃんにすべてを委ねてしまったことです。自分をゼロにして、それは自分の責任放棄でした。だから、どうしてうまくいかなかったのかわからなかったし、悔しさも自分の悔しさとして感じることができなかったのだと思います。
最後の試合は、りなちゃん任せではなかったです。委ねるところは意志を持ってりなちゃんに委ね、自分が力を出すときは意志を持って力を出す。
リードする人と合わせる人の役割はあっても、自分をゼロにしていいときはないのだと思いました。お互いが意志を持って自分の役割を果たすことで、最高のパフォーマンスができる、そのことをりなちゃんと一体になって感じることができました。