「目覚めの日」 ちさ

2月2日

 ニコニコの2月2日、暖かい日に、僕ら糀菌は命をもらいました。
 僕らの名前は、パワフワと言います。
 ずっと僕らのことを温めてくれていた糠を、昨日丁寧に落としてもらい、少し寒くなってしまったけれど、なんだか新しい事が始まる気がして、少しドキドキしながら朝が来るのを待ちました。

 朝が来るとみんなが僕らを、ざるから上げてくれました。少し寒かったけれど、できるだけ水とさよならすることが僕らの仕事だと聞いていたので、ざるの急な傾斜から滑り落ちないように、みんなとおしくらまんじゅうをするように待っていました。
 少し待っていると、なんだかお部屋が暖かくなって、あたりは湯気でもくもくとしていました。何が始まるんだろうと思っていると、蒸籠の中の蒸布にふわっと包まれ、そして、とてもむわっとする場所に連れて行ってもらいました。それは蒸籠の中だそうです。

 10分間、沢山汗を流しました。これがサウナの心地よさか。どっぷりとサウナを満喫しました。すると、ちさとちゃんやゆりかちゃんが優しくしゃもじですくってくれて、みんなが優しい表情でこっちをみながら、優しい顔で、“びにっ”と僕をつぶしました。少し痛かったけれど、「ひねりもち!」「超いい感じ!」みんなの嬉しそうな声に包まれて、なんだかうれしくなりました。

 次は、今までで一番広いお部屋にお引越ししました。ここはどこだろうと考えていると、そこは僕たちの手入れをしてくれる机だそうです。リビングみたいなところかな。引っ越したと思ったら強烈な風が吹いてきてびっくりしました。二人の力で、力いっぱいうちわで扇ぎ、僕らを冷ましてくれているのだと気づき、気づいてからは安心して、熱かった汗を流してスッキリしました。

 すると、「42度くらいじゃない!? いいね!」という声が聞こえて、風が止み、次は魔法の粉が上から降ってきました。それは緑色の粉でした。「BF1号菌」というそうです。上からスプーンで均等に少量ずつ振りかけるさくらちゃんと、下で茶こしを持ってまんべんなくふりかける、りなちゃんとが、抜群のコンビを発揮していました。
 僕は見とれている場合じゃなくて、魔法の粉を僕にもちょうだいと叫ぶべきなのに、それを忘れて見とれてしまうほどでした。

 すると、みんなが「おはよう」と明るい声で声をかけてくれました。優しくて、温かい世界でした。うっとりとしていると、いきなりギュッと潰されてびっくりしました。これはいわゆる愛の鞭みたいです。傷をつけられることで、魔法の粉のエネルギーを身体に取り込めるみたいで、痛かったけれどみんなの想いを受け止め、ぎゅっと我慢しました。

 僕たちは歩くことができないけれど、みんなが、僕たち一人ひとりがエネルギーをもらえるように均等に、だけど僕たちは30度くらいでいたいから手早く、僕たちの世話をしてくれました。そして木の箱にいれられて、みんなとギュッとなりました。白くて暖かい布団をかぶせてくれて、そしてこれが僕の部屋だと教えてもらいました。そして、朝からいろんなことがあって少し疲れたなと思ったころ、暗くて、あったかくて、少しむわっと湿度の高い、そんなお部屋で少し休憩中です。

 ――糀はこんな気持ちだったのかな、と書いてみました。作業をしていると、糀の気持ちが見える気がして、すごくそっちが書きやすかったです。緊張もしていましたが、メンバーのみんなと朝からいよいよスタートできて、そしていいスタートダッシュが切れて嬉しかったです。
 糀が生まれて、もう半日が経ちます。みんなと作業をし、その中での最も大きな発見は、何にも代えがたい愛おしさ、の感情に出会ったことです。理性で好きになったり嫌いになったりするような、瞬間的なもの、派手なものではなくて、もっと体の芯の奥の奥の、本能が愛する、そんな可愛さと愛おしさ、守るんだという気持ち。今までに感じたことのないものでした。あ、けれど、ここまで意識をしたことがないけれど、たけちゃんやたいちゃんを見るときの気持ちと似ています。
 それぐらい人を好きになったり、それぐらい物を好きになったりする気持ちがあれば、さみしくないし、それくらい愛の詰まった毎日ならとても濃いなと思いました。

 そういう気持ちをもっと広げて、育てていきたいなと思いました。
 また、今からも切り返しの手入れがあります。みんなと大事に育てたいです。