「助け合って初めてできること」 りな

1月25日

 昨日の午後から雪がふぶいていて、昨日の夕方の時点で、もう子供玄関の階段は全部雪で埋め尽くされて、段差が分からない、赤いパッソのタイヤが見えないほどに積もっていました。こんなにもたくさん雪が積もることは、生まれてきて初めてで、外の景色の何もかもが驚きでした。

 朝起きても、雪がふぶいていました。窓の外は、雪明りで光っていて、とても明るく感じられました。昨日よりもさらに高く積もっていて、赤いパッソが、大きな雪だるまになっていて、グラウンド、中庭、全てが真っ白になっていました。窓の桟からは長くて太いつららがずらっと並んでいて、まるで雪国に来たかのようで、いつもの古吉野と、景色、空気がまるっきり変わっていました。

 朝食で、大門ハウスから古吉野まで歩いてきてくれたあゆちゃんが、ユーノスハウスの骨組みが、雪の重さに耐えられなくて歪んでいたことをコメントで話してくれました。ふかふかした、軽い雪が、積もりに積もったら、ハウスの頑丈な骨組みまで歪ませてしまうのか、と思って、自然の力は本当にすごいなと思いました。外の雪景色がとても綺麗で、雪が降って嬉しいと思う反面、人の力では到底たどり着けない自然の脅威を感じて、少し怖さもありました。

 午前は雪が止んでいなかったので、室内で大人数のみんなと一緒に黒大豆の選別を進めました。昨日の続きで、さきちゃんが、この半日で、ハーベスタ2袋分終わらせようと、目標を立ててくれました。
 黒大豆は選別基準が6つあって、豆の中でも一番選別が難しいです。けれど、豆自体の大きさが大きいので、ヨーグルトカップに入れた分を選別トレーにあけると、1回で、カップの中の4分の1ぐらいが減りました。

 選別基準で迷うことがあると、みんなで確かめ合うことが出来ました。どうしても、どちらとも判断が付かなかったときは、さきちゃんが相談に行ってくれて、新たに判別する決め手を作ってくれました。選別基準がはっきりして、だんだんと自分の中にも入ってくると、どんどん選別をするスピードも上がりました。1ヨーグルトカップを10分しないで終わらせられるようになっていきました。

 目標のハーベスタ2袋分の選別を、みんなで終わらせることが出来て、とても嬉しかったです。残るはハーベスタ3袋分で、黒大豆の選別が折り返し地点に来たのかなと思います。また続きも、みんなでスピーディに進められたらいいなと思いました。

 午後からは、家族総出で、古吉野周りの雪かきをしました。午後は太陽も出てきて、雪もおさまってきました。少人数のチームに分かれて、チームでそれぞれの場所を分担しました。
 私は、あんなちゃん、どれみちゃん、よしみちゃん、さくらちゃんと一緒に、古吉野の駐車場から、ユーノスの坂を下りて、大土井さんのお家の、地域の方がもう雪かきをされているところまでを繋ぐ道を担当しました。テミやスコップなど、道具を1人1つ持って、雪かきを始めました。

 あゆちゃんが雪かきをする前に、どこに雪を溜めるか、それをよく考える必要があることを教えてくれました。雪をかくとなると、かいた雪を留める場所を作らなければなりません。そこはなかなか溶けるのに時間が掛かるので、どこだったら邪魔にならないかをよく考えて、雪かきを始めました。

 駐車場は、花壇沿いに雪を集めて、お客さんが駐められるスペースと、一台分通れる幅の道路を、雪かきしました。テミをつかうととてもはやくて、地面すれすれで、テミをずぼっと雪の中に入れて、そのまま持ち上げると、さっくり軽い力でたくさんの雪をすくいあげることが出来ました。
 見た目では少し重そうなのに、積もった雪は空気のように軽くて、テミ山盛りいっぱい入っていても、楽々と運べて、投げることができました。きめ細かくて、小さな結晶がキラキラ輝いている雪が本当に綺麗だなあと思いました。まだ誰も足を踏み入れていない場所は、一面に雪が覆いかぶさって、触っていないけれど、ふわっとした感じがあって、手を付けるのが少しもったいなく思ってしまうほどでした。

 雪の中を歩くと、長靴の高さを越えて、太ももぐらいまで雪に埋もれました。70センチぐらいは積もっていました。30センチ積もったことも経験したことがなくて、目の前の景色、感触が、とても不思議に感じました。雪かきしながらも、幻なんじゃないか、と思うこともありました。
 テミで夢中になって、雪をすくいあげている時間が、とても楽しかったです。とても柔らかいチーズケーキをスプーンですくっているような気持ちになりました。雪に覆われた道を、自分たちで道を付けていくことがとても楽しかったし、花壇沿いに、肩ぐらいある雪の塀が出来ていて、こんなにたくさんの雪があったんだ、と改めてその量にびっくりしました。

 本当に駐車場の端までたどり着けるのだろうか……不安になるぐらいに、目の前が雪だらけで、先が少し遠く感じました。けれど、それは最初のうちだけで、どんどん雪かきをしているうちに、時間の流れるスピードもはやくなって、だんだん先に進むスピードも上がりました。駐車場の端まで来たとき、他のチームのみんなが付けてくれた道と合流することができました。厨房に上がっていく道です。両端に、雪の塀がそびえたっていて、それが先の見えないところまでずらーっと並んでいる光景が、とても綺麗でした。

 私達は、その道から分かれた、ユーノスの下り坂へ進みます。ユーノスの坂道から見えるの石生の田んぼは、一面真っ白で、家の屋根はてっぺんが白くて少し赤茶色の瓦が見え隠れしている光景が広がっていました。まるで普段と同じ場所とは思えない別世界でした。非日常な光景に、何度も目を奪われて、ここがどこだか一瞬分からなくなるぐらい見入ってしまいました。

 ふかふかの雪の中にダイブしてみたい、と密かに夢を持っていて、今日実現できて嬉しかったです。よしみちゃんと一緒に、背中から雪の中にダイブすると、雪が厚くて地面に当たらずに、雪が全体重をキャッチしてくれました。天然のフカフカベッドがとても気持ちが良かったし、雪かきでポカポカした体をちょうど良く冷やしてくれました。

 雪かきをしていると、まりこちゃんが来てくれて、何を片手に持っているのだろう……とよくよく見ると、廃油の入ったペットボトルでした。なぜ? と思っていると、まりこちゃんが、油をテミに塗ると雪が貼りつかなくてやりやすくなることを話してくれました。まりこちゃんが、一人ひとりのテミに油を塗ってくれて、試しに一度雪をすくって、ほうってみると、つるんと雪がテミに貼りつかずに、綺麗に取れました。ほんのひと工夫で、こんなにもやりやすさが違ってきたり、より楽しさが増すんだなあと思いました。テミから、サーターアンダギーのような甘い香りがするのも、嬉しいなと思いました。
 
 4時20分ぐらいに、担当する場所の雪かきを終えて、あゆちゃん達のチームに合流しました。お仕事組さんの坂道のほうに出ると、滝川までの下り坂が、もうすでに雪かきがされていました。そして、もう少し進むと、何十人ものみんなが、滝川沿いの道の雪かきに取り掛かっている姿が見えました。自分のところが終わったチームが次々とヘルプにかけつけて、滝川の道で大集結していて、その光景を見ると、とてもほっとした気持ちになったし、みんなの存在が、とてもたくましくて心強く思いました。

 1人でするには、悲しくなってしまうような距離でも、みんなで手分けして、協力してすると、こんなにも楽しいんだなと思いました。担当のところを手を付けている間にも、同時にみんなが色んな所を進めてくれていて、気が付けばあっという間に道が出来てしまっていました。仲間がたくさんいることよりも、強いことはないなと思いました。

 地域の方も外に出られて、一緒に雪かきをしてくださりました。私は、たけちゃんハウスまでの道のりを、ひでゆきさんが家に車で帰ってこられるように、車幅を確保するように、道路の雪をかきました。たいちゃんを抱っこしたあゆみちゃんも出てきてくれて、「ありがとう」と言ってくれて、その言葉と、笑顔だけでどこまででも頑張れるような気がしたし、ひでゆきさんが無事に家に帰ってこられたらいいなと思いました。

 自然の力はものすごく大きいけれど、みんなと助け合って、環境を整えている時間がとても温かくて心が満たされました。お父さんが、北欧の国は、周りの人と助け合わないと生きていけないような厳しい環境だから、利他心がよく育つ、と話してくださるけれど、本当にそうなのだろうなあと、雪かきをしながら思いました。一人でなんとかしようと思って、出来ることではなくて、周りの人と助け合って初めて、出来ることだなあと思いました。外は寒いはずなのに、いつの間にか汗をかくぐらい身体は暑くなっていて、心も温かったです。雪かきの休憩、おやつに食べた焼き芋が、これまで食べた焼き芋の中でも、一番おいしく感じました。

 綺麗な雪景色に囲まれて、みんなで雪かきが出来て、その時間がとても嬉しかったです。雪が止んで溶けたら、ハウスの中の野菜が無事か見に行きたいなあと思うし、自分も対処出来るところは、力を尽くしたいなあと思いました。
 読んでくださりありがとうございました。おやすみなさい。