【11月号⑮】「出会う喜び・新たな発見 ―― 版画の展覧会へ ――」りんね

  
 毎週木曜日の夜に、藤井先生から教えていただく木版画教室でも、ウィンターコンサートへ向けての作品作りを行っています。

 また、十月八日には、藤井先生からお誘いいただき、瀬戸内版画会の方が開催する版画の展覧会へ、行かせてもらいました。

 版画作品を実際に見る機会はとても貴重なため、版画教室のみんなで、展覧会に行ける日を楽しみにしていました。道中の車内から、華やいだ気持ちで向かいました。

 会場は個人のアトリエのような建物でした。川の土手沿いの道から会場に着くと、藤井先生の姿がすぐに見えて、迎えてくださったことが嬉しかったです。

 会場内はかなり広くて、入ったところのホールと、いくつかの和室に、多くの作品が展示されていました。

■好きな気持ちが深まって

 展覧会の案内に、「ゆかいな仲間たち」という言葉があったことからも感じられるように、主催者の方の作品からは、版画を好きな気持ちや、心から楽しんで作られていることが伝わってきました。
  
  
 天井の高いホールの壁のあちこちに、花瓶や、モアイ像、太陽などのモチーフを使った作品がありました。エントランスに飾られているのは、大胆にデフォルメして表現された大きめの作品が主で、インパクトがあって、モダンな印象を受けました。

 そのほかにも、草花や、旅先での光景を、白と黒を基調に、簡潔な形に置き換えて版画にされた作品は、面白かったり、魅力的だったり、とても素敵でした。

 また、その他の方の版画作品、水彩、油彩画や写真の展示もされていました。大机に瀬戸内版画会、刀の会の版画作品集も一面に並んでいて、小さな和紙に刷られた版画をめくって眺めていても、美しい作品に出会う喜びや新たな発見があり、一日中でも、ずっと見ていたいと思いました。
  
  
 版画の作品を見れば見るほど、版画で表現することのできる上品さ、洗練された美しさを感じて、版画が好きな気持ちが深まりました。

 印象的だったツバキの版画は、白い花弁に、葉は黒で表され、背景は灰色。色と言う色は、雌しべや雄しべの黄色だけでした。花や葉の繊細な彫りや、絶妙な配置で、色数の少なさも際立って、ぱっと見ただけで素敵だなあ、と見入ってしまいました。

 いつもの版画教室で藤井先生から、 「見たものそのままではなく、あえて簡略化をした方が版画らしくなることもある」  と教えていただくのですが、実際に美しい版画作品を見て、こういう意味だったのか、と実感することができました。

 また、白黒であったとしても、山脈の絶妙なぼかしや、葉が茂っている表現など、どうやって表現しているのかな、と思うところもたくさんありました。
  
  
 藤井先生にそのことを尋ねると、どういう風に刀や馬連、絵の具を使っているかということまで、教えてくださりました。藤井先生に教わると、私も、こんな風に刀の出せる味を生かして、版画らしい作品を作りたいな、と感じて、本当にありがたいことだと思いました。

 会場から帰るときは、主催者の方が、みんなに焼き栗を手渡してくださいました。「来てくれてありがとう」と大きな笑顔で、暖かく接して頂けて、とても嬉しかったです。

 版画の展覧会で、たくさんの美しい版画作品を見ることができて、心が耕され、創作意欲も強くなりました。  版画教室では、“宇宙と人体”というコンサートと同じテーマを主にして作っています。

■陰刻で
  

宇宙と人体をテーマに新たな作品作りを開始

  
 最初はテーマの大きさに戸惑いましたが、図鑑を見たり、調べ物をしたりしながら宇宙や、人体に関する絵や写真などを見ていると、それだけでもワクワクして、いくらでも見ていたい気持ちになりました。

 細胞や、惑星や星雲などを見ている中で、図鑑に載っていた、胎児の写真に惹きつけられました。

 その胎児は、人間の形が出来始めたばかりなのに、口元に笑みをたたえ、観音様のように満ち足りた安らかで美しい表情をしていました。

 そこから、胎児を中央にして、いろいろな星座が周りを囲っているような構図が思い浮かびました。

 母胎内を宇宙に見立て、宇宙を包んでいる大きな愛を感じて、胎児が安心していることをイメージしました。

 また、版画を彫るときは、線を浮き上がらせる“陽刻”ではなく、線を彫り下げる“陰刻”で、夜空に浮かぶ星座を表現してみたいな、と思いました。
  

前回のモダンをテーマにした作品も完成!

  
 陰刻で作品作りをするのは初めてで、まだうまくいくかは分かりません。でも、版画の展覧会に行ったとき、陰刻で繊細な表現をしている作品も見ることができたので、きっとできるのではないかな、と思っています。

 展覧会の場で藤井先生から教わった、平刀を使ったぼかしも、子熊座の毛並みや、おとめ座の衣服の裾などに、取り入れたいと思いました。

 版画教室のみんなも、“毛細血管”や、“木と分子構造”などをテーマにして、今までにない、面白くて魅力的な作品作りをしています。
  
  
 今はまだ、やっと下絵が完成したところです。版画制作に残された時間は僅かですが、下絵が決まったらあとは、意を決して彫り進めるのみ。

 想像したように上手くはいかないだろうけれど、それでもどんな作品にすることができるか、とても楽しみです。

 ウィンターコンサートまでに、コンサートの内容を思わせるような作品を仕上げることを目標にして、意欲的に版画制作を進めていきたいです。