【11月号⑪】「大好きなお父さんへ ―― ウィンターコンサートに繋ぐ衣装・ダンス・役者考案 ――」りな

 

  
 お父さん、いつもありがとうございます。一人だった私に、こんなにも心強くて優しい家族を作ってくれました。  

 そして、いつでも帰ってくることの出来るホームグラウンドを作ってくれました。先が真っ暗で、未来がとても怖かったのに、今では毎日毎日とても楽しくて、明日が待ち遠しいほどになりました。  

 そうなれたのは、到底一人ではできなかったことで、お父さんと、お母さんが、たくさん仲間集めをして、私がこれまでずっと求めていた優しい関係、温かい世界を作ってくれていたからでした。

■一つの共同体  

 十月十四日は、そんな、私達の大好きなお父さんのお誕生日です。 お父さんに日頃の感謝の気持ちを伝えて、お父さんに喜んでもらえるようなお誕生日会を家族みんなと作りました。

  お誕生日会のテーマは、十二月に控えるウィンターコンサートのテーマでもある、「人体と宇宙」です。お父さんの脚本書きのアイデアや意欲が湧いてくるように、一チームごとに、テーマに合わせた小さな劇をしたり、コンサートで演奏する曲の衣装やダンスを考えます。お父さんの脚本書きに、少しでも貢献出来たらと、人体の仕組みについて全員で調べました。

 調べていると、興味深いことがいくつも出てきました。一つは、笑顔になると、何十億個もの、人の身体に生きている免疫細胞が一斉に元気になる、というものでした。もう一つは、細胞は、構成している集合体から自分は不要になったり、いない方が良い、と感じると、自ら「アポトーシス」という細胞死をして、生まれ変わるのだということでした。

 一つひとつの細胞は、個の主張をするわけではなく、全体があるべき美しい姿で保てるように、共同体の中の一部として存在していました。そして、絶妙なバランスを取るために、一つとして無駄な細胞はなくて、欠けてはならない存在でした。

 私の身体も、みんなの身体も、数えきれないほどの細胞が、神経伝達物質や、目に見えないエネルギーを出して密接に繋がり、協力している一つの共同体なんだ、と思うと、私の身体が何かによって生かされているような、不思議な気持ちになりました。

 そして、何だか満たされた気持ちになっていくことを感じました。

 私達の原点は、そうした小さな小さな細胞の集まりなのだから、私達も、宇宙の中のとても小さな細胞であるんだな、そう思えました。この宇宙という一番大きな共同体をより良くするために、誰もがその役割を持って生まれてきたんじゃないか、と思いました。
  
  
 あゆちゃんが、チームのみんなと調べたことを元に、MCの脚本を書いてくれました。ナレーションで、役ではないけれど、あゆちゃんが書いてくれた文章を読んでいると、心の雑味がすーっとなくなって、とても癒されるような感覚がありました。この文章を、チームのみんなと読むことが出来ることがとても嬉しいなと思いました。

 また、同時並行で、曲のダンスも練習しました。私は、あゆちゃんチームで『スカイフォール』を披露します。

 スカイフォールは、卒業生ののんちゃんが振り入れしてくれた大人数ダンスで、コンサートで幕開けに演奏する曲です。会でのチームメンバーは七人で、少数だけれど、少数に見えないフォーメーションの工夫をしました。

 チームのみんなと、スカイフォールの振りの細かい所を揃えたり、あゆちゃんに前から見てもらっていると、コンサートのダンス練習をしているようで、全て繋がっているように感じました。

■非日常の世界へ  

 そして、迎えた本番。体育館は細胞をモチーフにしたカラフルな丸い飾りが付けられていて、体育館に集まったみんなの衣装が斬新だったり、とても綺麗だったりして、非日常な世界に吸い込まれていきました。
   
 
 体育館入り口から、ステージの前に置かれた二脚のイスまで、みんなでアーチを作ってお父さんとお母さんを出迎えます。

「おめでとう、おめでとう」「お父さん大好き」と、一人ひとりが細胞になって、お父さんにお祝いの言葉を言いました。

 お父さんの満面の笑顔、お母さんの包み込むような優しい表情を見て、とても幸せな気持ちになりました。
  
 
 一チーム目は、『エンジェルズ』のチームでした。天使のようなふわふわした衣装を着たみんながステージの上に立っているだけで、とても可愛くて華やかでした。オキシトシンという、幸せホルモンになり切って演じているみんなの姿がとても輝いて見えました。

 曲がかかると、真ん中でまなかちゃんが歌い、その周りを天使のみんなが舞うように踊っていました。

 天使のみんなは、まなかちゃんが立つように、まなかちゃんは周りのみんなが綺麗に見えるように、思いやっている優しい気持ちをとても感じました。
  
  
 一人ひとりの表情を見ても、目にいっぱい光を溜めて、幸せそうで、見ている私まで感動して涙が出てきそうになりました。

 二チーム目は、『オーバーパス・グラフィティ』のチームです。カラフルなバルーンがたくさん付いたスカートが、とても印象的でした。コミカルでユニークな劇は、思わずクスッと笑わずにはいられなくて、一人ひとりのキャラクターがとても愛らしかったです。

 コロコロの車輪の付いた大きな背景のパネルが二枚あり、パネルが開くとそこから物語から飛び出してきた主人公のように、チームのみんなが踊りだします。ダンスは新しさがあって目が釘付けになりました。

 またパネルが閉じられた! 次開くときは、どんな演出が待っているのだろう……ワクワクドキドキした気持ちで待っていました。

 パネルが開いた瞬間、小さな隙間からやよいちゃんとみつきちゃんがキラキラした表情で飛び出してきました。会場に歓声が上がりました。
  
  
 足には、ピカピカと光るローラースケートが。七色に光って床に反射させながら、ステージを滑らかに滑っている二人が、とてもかっこよかったです。ローラースケートの演出は、なのはな史上初めてで、記念すべき瞬間でした。
  
  
 前半ラストのチームは、『ザ・シード』です。頭や手首に、キラキラしたスパンコールが巻かれている衣装が、植物のツタのようでもあり、シードの曲にぴったりでした。スパンコールを使った衣装はこれまでもたくさんあったはずだけれど、とても新鮮で、神秘的で、綺麗で、アイデアが素敵だなあと思いました。

 後半の最初は、私達の『スカイフォール』のチームでした。あゆちゃんとあんなちゃんのロングスカートのセットをして、スタンバイをしました。

■伝えたい

 私達がステージに並んだ時、体育館がシーンと静かになりました。お父さん、お母さん、みんなが、私達の伝える内容に耳を傾けて、待ってくれました。
  
  
「細胞の一つひとつの中に、もう宇宙があるんだよ、とお父さんは話してくれました」

 最初のあゆちゃんの言葉を聞くと、自然と緊張する気持ちはなくなりました。

 何回も何回も、チームのみんなと読んで、言葉に発した文章が頭の中に蘇ってきました。お父さん、そして目の前の家族、目に見えないけれど、まだ見ぬ求めている人に届けばいい、と思いました。自分の言葉で、自分の気持ちとして、伝えたい、そう思いました。
  
  
「あなたが私になってもいいし、私があなたになってもいい。誰が、どんな役割になろうとも、みんなで協力して、この美しい宇宙のバランスをとることに力を尽くすために生まれてきた、それに変わりはないのだから」

 そんな生き方をしていきます、チームのみんなと願うような気持ちで話し、スカイフォールを踊りました。
  
  
 曲が終わったと同時に、とても大きな拍手に包まれました。たくさんの力強い仲間が出来たような気がしました。お父さんを見ると、笑っていました。

 たくさんの温かい家族と、帰ることの出来る居場所を作ってくれてありがとう、心からお父さんに感謝の気持ちを伝えることが出来ました。

■心の底から楽しい
  
  
 その後も、レベル高いダンスや、演劇がありました。

 なのはなのみんなとなら、どんな事だって深く、高く出来ると思いました。そんな仲間がたくさん周りに居ることが、本当に幸せだなと感じました。

 お父さんのお誕生日会で、お父さんに劇やダンスを通して、感謝の気持ちを伝えることが出来ました。みんなでお父さんを喜ばせるつもりが、私達のほうが、何段も何段も高い、喜びをもらったような気がしました。
  
  
 自分ではない何者かになって表現することは、心の底から楽しいなと思います。コンサートのテーマである「人体と宇宙」で調べていると、本来、人としてあるべき生き方のヒントが隠されているような気がして、調べていても興味深くて楽しかったです。これから、この仲間と、このテーマで、一つのステージを作っていくんだ、そう思うと十二月のコンサートがとてもワクワクしました。
    

会には欠かせない、お父さんとお母さんの弾き語りライブもありました

  
  
 そして、私達が調べたことが、少しでもお父さんの脚本書きの手助けになったらいいなと思います。  お父さんのお誕生日会を、コンサートに向かう一つのスタートとして、家族みんなと過ごせた時間がとても嬉しかったです。