【11月号⑦】「楽器と向かうウィンターコンサート」かに

 

  
 集まったバンドの面々と、音楽室のなかに円を作るようにして向かい合いました。ウィンターコンサートの主要な曲を、この夜に初めて合わせることへの緊張感と、楽しみな気持ちと、今の精一杯の準備の成果を持って。

 十月二十一日に、バンドメンバーは、『スカイフォール』『リカバリー』『シヴァーズ』『ビューティフル・ピープル』の一回目の合わせを行いました。

 今回のコンサートでは、多くの曲に第二キーボードが入っていたり、ツインギターの構成があったり、『スカイフォール』にはトランペットやトロンボーン、サックスが加わったりと、バンドのパートが充実していて、より厚みのある演奏にしていくことができそうです。
  
  
 この日は、初めて合わせる曲ばかりでしたが、曲を一通り形にすることができました。それぞれに音取り、音作りからはじめて、練習をしてきたのですが、キーボードのせいこちゃんが作り込んだ魅力的な音などにも、気持ちが高揚しました。

 合わせを繰り返すときには、各場面で主となる歌や旋律を全員が意識して引き立たせることで、音を少し整理することができました。

 そして翌日には『ビューティフル・ピープル』を、翌々日には『リカバリー』を、体育館でダンス、コーラスと合わせました。

■『リカバリー』

 今回合わせた曲のなかで、私が特に印象に残っているのは、『リカバリー』です。今回のウィンターコンサートで演奏する曲は、スケールの大きなものが多いと感じていますが、『リカバリー』はその筆頭で、ボーカルのあゆちゃんが、一年以上前から、今度のコンサートでこの曲をしたいんだと、私たちに紹介してくれていた大切な曲です。

『リカバリー』は、原曲よりも三度、キーを上げて演奏しています。どのキーで演奏するか、ということは、メインボーカルのあゆちゃんと、ウィンドシンセサイザーを担当しているさとみちゃんが相談して決めていました。

 あゆちゃん曰く、さとみちゃんが提案してくれたキーは絶妙で、低音も、サビの一番盛り上がる高音の部分も、あゆちゃんの声域の限界、一番良い音をちょうど辿るようになっているそうです。
  

ウィンドシンセサイザーの音作り

  
 それは、何度も続けて出すことは難しい、たった一度だけ思い切り出せる音だと、あゆちゃんは話してくれました。さとみちゃんは、なのはなのオリジナル曲の作曲者ですが、原曲をもとに曲を演奏する場合でも、そのようにバンドの各パートを理解した上で、アレンジを加えてくれる魔法の力の持ち主です。

 体育館での合わせのとき、コーラスが合唱する後奏へ向けてバンドがクレシェンドしていくなか、あゆちゃんの突き抜けるような声が響きました。踊っていたみんなも、合わせが終わったあと、大サビのあゆちゃんの声が、とても印象に残ったと話していました。 
   
  
■一番良いテンポを

 『リカバリー』で私が担当しているドラムパートは、アコースティックドラムに、電子ドラムパッドによる効果音を組み入れながら演奏します。

 どんな曲でもそうなのですが、この曲はテンポをキープすることが特に難しいと感じていて、ついサビの十六ビートを急いでしまったり、逆に遅くしてしまったりします。あゆちゃんや、そのときどきでメインとなる人が思い切り歌えるよう、そしてダンスが一番良いパフォーマンスをできるテンポを保てるよう、もっと練習をして、次の合わせに臨みたいです。

 今回の合わせが一つの目標であったように、バンドは、音響部(バンドメンバーで構成されています)が立てた計画に沿って、楽譜作りや練習を進めています。時には、他の作業との兼ね合いで、ごく短期間で集中して曲を仕上げることもありますが、そうして練習したものを家族と演奏して、良くしていける時間は、得難いものだなと思います。 
  
  
■ビッグバンド練習  

 また、全員が楽器を持つビッグバンド演奏では、『ドラムライン』という曲の練習を進めています。

 この曲は、過去にも、五人のドラマーが、管楽器演奏をバックに、舞台に並べたスネアドラムを叩く、という演出で演奏をしたことがありますが、今回は、マーチングを組み込んだ演奏にします。
  
  
 今は各パートが、マーチングの振り入れに備え、演奏の練習や暗譜を進めています。新しくフルートやトランペットに入ってくれた子、これまで打楽器を担当していたけれど管楽器に移行した子などがおり、楽器の扱い方や音の出し方について、経験者が伝えながら練習を始めました。

 トランペットを新しく始めた、最年少のももかちゃんは、今日はこの音が出せるようになった、今日はここまで進んだと、よく嬉しそうに話してくれます。

 『ドラムライン』の新鮮さは、ベルリラという楽器を使う点にもあります。ベルリラは鉄琴の一種で、ちょうど軍配うちわのように取手がついており、その先に鍵盤が並んでいます。左手は取手を持つために使うため、複雑なリズムも右手だけでこなす必要があります。
  
  
 実際にマーチングで動き、目線を前方へ向けたまま演奏をこなすという難易度の高い楽器です。ベルリラパートは、まりのちゃんとさくらちゃんが担当しています。

 普段は、野菜の種苗の管理や、建築作業や農業機械の運転などを丁寧にこなしてみんなを助けてくれる二人が、日々、練習しています。私は二人と並んでマーチングスネアドラムを演奏することになっているので、二人と一緒でも恥ずかしくないように、見応えのあるステージにできるように、頑張りたいです。

 パーカッションパートでは、つきちゃんがドラムセットを、さきちゃんが電子ドラムを担当してくれていて、打楽器のことが大好きな二人と演奏できることも、とても嬉しいです。

■勇気を持って

 他にも、少人数での管・打楽器アンサンブルや、アコースティックギターアンサンブルの練習も進んでいます。
  
  
 これから挑戦するアンサンブル曲のなかには、技術的に高難易度の曲もあります。しかし、例え高いテクニックを持ったプロがたった一人で弾きこなす難曲でも、みんなで模索し、力を合わせて演奏しようと、打ち合わせをしたり、次の合わせの約束をしたりすると、あたたかい気持ちになり、やる気が出ます。

 それは、どんな状況でも、自分たちみんなが成長するために、私たちにしかできない、なのはならしい演奏をしよう、過程を私たち自身にとって深い意味のあるものにしようという気持ちを強く持ち続ける仲間がいてくれるからだと思います。

 私も一瞬一瞬、勇気を持ち、拾い視野を持ち、役割を果たしたいです。