【11月号⑤】「一緒に踊ろう パーティーを抜け出して」るりこ

  
 ウィンターコンサートで新しく演奏する曲目の中でも、わたしが特にお気に入りの曲の一つ、『ビューティフル・ピープル』のダンスの振り入れを、ゆりかちゃんがしてくれました。

「この曲は全員で踊って、『フラガール』みたいにしたいんだ」

 振り入れの前、ゆりかちゃんがそう話してくれました。初めは中人数で構成するフラダンスにしようと考案していたけれど、お母さんが、「みんなで踊れるようにしたらいいよ」と言ってくれたそうです。

 『フラガール』はわたしたちの大切な曲で、夏祭りやフラダンスショーなどで全員で踊るフラダンス曲です。

 そんなふうに、これからは『ビューティフル・ピープル』も全員で踊れる新たなフラダンス曲として、なのはなの大事な一曲になっていくのだなと思い、ゆりかちゃんの話を聞き、とても嬉しい気持ちでいっぱいになりました。

 振り入れの前に、あゆちゃんが、『ビューティフル・ピープル』の和訳を廊下に貼りだしてくれました。

「周りの華やかな空気や人々のなかに馴染めなくても、僕たちはありのままでいいんだ」

 これは、とても簡潔にまとめているけれど、そんな気持ちを歌った歌詞でした。この曲を初めて知ったとき、自分の心の中にある気持ちと大きく重なるのを感じました。

 わたしも、生きづらさを感じて生きてきました。社会の中で孤独を感じたとき、その孤独を打ち消すために無理に周りの空気に合わせようとしてきたり、あるいは孤独を感じる自分自身に問題があるのだろうかと悩むこともありました。
  
  
 そんな時なのはなに出会い、たくさんの癒しをもらい、お父さんやお母さんから、わたしが抱えてきた孤独の答えを教えてもらいました。

 わたしが感じていた生きづらさは決して自分自身だけの問題ではなくて、今の世の中の仕組みが生きづらさを生み出してしまっていること。そんな世の中でこれから自分たちはどう立ち直って、どんな心持ちで生きていくべきなのかを、教えてもらいました。

 『ビューティフル・ピープル』は、そんなわたしたちの思いを言葉にした歌のようだと思いました。周りにどう思われようと、わたしはわたしたちらしく生きていく。ありのままでいいんだ。そういう決意を込めた歌だと思いました。

 そんな素敵な歌詞に沿って、ゆりかちゃんがダンスの振り付けも考案してくれました。

 始まりは歌詞に合わせて、場所を示す手の動きからダンスが始まります。

「ここはあゆちゃんがこう和訳してくれてね……」

  一つひとつの振りを、初めにゆりかちゃんが、あゆちゃんの和訳を読み上げてくれて、それからその意味とリンクした振りを伝えてくれる、という流れで進んでいきました。
 
  
 僕たちはここに馴染めそうにないよ、という歌詞の部分では、手と足の動きに合わせて首を横に振ったりします。

 ただ振り付けを頭で覚えて身体に入れていくよりも、こうしてゆりかちゃんがポーズの意味を伝えてくれると、その分だけ、(あっ、このポーズはこういう意味だったな)と思い出しながら踊れて、身体に入るのも早いように感じました。また、曲に合わせると、自然と身体が動いていく感覚もありました。
  
  
 曲の二番では、真ん中でやよいちゃんとのんちゃんのペアダンスが入ります。二人のダンスは、可愛らしさもあれば、ちょっぴり大人らしい魅力的な印象もあり、うっとりして見入ってしまいました。

 そんな素敵な二人を囲むように、他のメンバーで大きな二重の円を描いて、やよいちゃんとのんちゃんの周りを踊ります。

(やよいちゃんとのんちゃんを見て!)という思いを込めながら周り、最後には二人に近づいて、大きく手を広げます。

 ここの部分の振り付けがわたしはとても気に入り、みんなで一つになっているような動きに、踊っている自分の心までもが大きく癒されていきました。

 一通りの振りが入ったら、曲の始まりから最後まで合わせて踊ってみることになりました。一つひとつ練習した動きが繋がっていきます。前で踊ってくれるゆりかちゃんを真似て踊っていると、まだぎこちなさは残るけれど、フラダンスってやっぱりいいなという思いでいっぱいになって、ものすごく幸せな気分になりました。

 そして、ゆりかちゃんの踊る動きや表情を見ていると、大きな希望に満たされた気持ちにもなりました。

 『ビューティフル・ピープル』は、十一月六日の勝央町文化祭のステージで、ウィンターコンサートに先駆けて初披露する予定で、その日に向けて、毎晩習慣練習をしています。

 だんだんと振りが身体に馴染み、楽しさも日に日に増していきます。ゆりかちゃんから教えてもらうフラダンスは本当に楽しくて、みんなと踊れる喜びを全身で感じられる、大切なダンスです。