「『クマ』『あずき』」 みつき

10月31日

 今日で10月も終わりです。
 朝はめっきり寒くなって、食卓でお箸を持つ手がぎこちなくなってきました。辺りがしーんとして透き通るような冷たい空気のなか、古吉野に帰ってくれば、みんなが待っています。冬支度をしたみんなはもこもこしていて、それもなんだかあったかくてうれしくて、好きです。

 午前中、やよいちゃんたちと一緒に、小豆の収穫ツアーをしてきました。
 今日は、全ての小豆の畑に行けるよう、スピード重視で、時間を細かく区切って収穫をしました。わたしにとって、クマチャレンジのときがやってきたのです。
 お父さんお母さん! ついにわたしは、クマになれました!

「ああ、もっと取りたい……」と後ろ髪を引かれたりすることもなくなって、次々すずなりのさやを狙って、がしがしと取っていきます。
 頭の中はずっと「クマ」「あずき」そのことだけ。ひたすら、手を動かしました。
 すると、やよいちゃんの考えてくれた時間配分ぴったりに収穫して、畝を移動することができるようになりました。
 クマってこうなんだろうなあと、はっきり気がつきました。クマはおいしい小豆がとりたいだけなんだろうなあと。時間内に終わらせたいだけなんだろうなあと。
 今まで、いかに自分にこもって物事に取り組んでいたのかを、知りました。

 今日、クマになることができたから、収穫の時間がとてもとても楽しかったです。
「あっという間の3時間だったね」「またやりたいね!」と車の中で盛り上がりました。ものすごい達成感で、ほくほくとしながらみんなと帰ってきました。
 次回の小豆の収穫3巡目では、スピードよりかは質の重視になると聞きました。次はなにになろうかな、なってやるぞ! と、とてもわくわくしているし、また頑張りたいです。

 夜のダンスの習慣練習のとき、お父さんお母さんが話してくれたことが印象に残りました。
「ここは体育館で、お客さんは誰もいない。それで、練習のための練習になってしまっている。
 今、何百人ものお客さんがいて、ステージに立っている、そう思いながら踊っている人が居ないよ」
 と教えて頂きました。

 その笑顔は何を伝えたいのか。その振り付けは何を意味するのか。もっと自分なりに考えて、ふくらませて、いつも伝える意識を持って表現したいです。
 わたしは、クマと同様に「なりきる」という意識が乏しいから、ダンスなどでも甘い部分が出てしまうのだと思います。
 わたしは、みんなと舞台に立った忘れられない経験があって、客席で拍手をしてくださるたくさんのお客さんを目にしました。パフォーマーになりました。
 だから、きっとなれます。クマにもなれたのだから、きっとなれます。

 いつも自分から離れて、こころには誰かを置いて、作業や練習に向かいたいです。