
「よしみちゃん、絶対に大丈夫だよ。あとは思い切り楽しんで、見てくださる人たちに私たちの気持ちを精一杯伝えよう!! 」
出番直前、そう言って、あけみちゃんが私に大きな笑顔を向けてくれました。
十月九日に、勝央町の中でも最も大きなお祭りである「勝央金時祭」の代替イベントが開催され、そのイベントになのはなファミリーも出演し、生バンドによる演奏とダンスを披露しました。
金時祭は、コロナの影響で約三年ぶりの開催だったそうで、今年はファーマーズマーケット ノースヴィレッジで行われました。
実は、私にとって今回の金時祭が、なのはなファミリーに来て初めてのイベント出演で、初めての屋外での演奏。なのはなファミリーが出演することが決まってから、大きなわくわく感があったと同時に、緊張感でいっぱいでした。
金時祭に向けての練習は、九月から始まりました。今回、金時祭で演奏させていただいた曲は、モダンダンスやフラダンスなど、全部で七曲です。
七曲のうち、私は『ザ・インビジブルマン』『レインボー』『サム・ナイツ』の三曲に、ダンスメンバーとして出演させていただきました。
約一か月間の練習期間は、改めて思い返すと驚くほどあっという間で、毎日毎日が本当に貴重な時間だったなと思います。
金時祭当日までの期間、日中は畑作業と同時並行でダンス練習を進め、夜の時間も、日中にお仕事へ行っている人と一緒に練習する日々でした。中でも、『ザ・インビジブルマン』はロックダンスというジャンルのダンスで振り付けされてあり、私は生まれて初めて踊る、まさに未知の世界のダンスで、最初は大きな壁に突き当たった気持ちになりました。
なのはなでこれまで踊ってきたモダンダンスやフラダンスとは全然違い、ステップや振りも初めて知るものばかりで、「自分にこんな難しいダンスができるのだろうか……」 と、正直不安にもなりました。
でも、あけみちゃんが本当に一つひとつ丁寧にダンスの振りを教えてくれたり、ロックダンスの基礎練習やアイソレーション、体幹を強くするためのプランクトレーニングなど毎日十五分ほどでできる練習メニューも考えてくれて、「きっとできるようになる!!」と信じて『ザ・インビジブルマン』のダンスのみんなと一緒に練習できた時間が、とても嬉しかったです。
お父さんやあゆちゃんにも、インビジブルマンのダンスを見てもらい、テンポの速い曲だから体に止めがないことや、ダンスの振りの中でどのポーズを見せたいかなど、たくさんのアドバイスをいただきました。
■見せる意識
思い返せば、金時祭までの夜の時間は、ひたすらダンス練習に没頭していたなあと思います。でも、それでも時間が足りないと思うくらい必死でした。こんなにも夢中になれるものがあることが、本当にありがたくて幸せだなと感じた毎日でした。

金時祭の前日は、みんなで会場となるファーマーズに、ダンスの場ミリに行かせていただきました。本来ならそのときからすでに気持ちを作って行くべきだったと思います。
でも、私はその気持ちが足りず、移動もあたふたしてしまったり、待っているときは集中力が切れてしまっていました。
帰ってから、お父さんとお母さんが、「当日だけ演じようとしてもできないよ。日頃の生活の姿勢が本番にも表れるんだ」と話してくださったとき、本当にその通りだと思いました。いつも見られているという意識で、移動のときや待っているときも気持ちを作っていかなければと、今回のイベントで気づけたことがありがたかったです。
金時祭当日は、前日の時点で天気予報は正午から雨予報となっていましたが、当日になると、みんなの願いやお父さんの晴れ男パワーが届いたのか、雨予報が午後三時からに延びていました。朝から曇っていて少し肌寒い気候でしたが、演奏していると丁度良いくらいになりそうだねとみんなで話していると、雨も弾き飛ばせそうな気持ちになれたなと思います。

控え室に行くと、先発組として機材などを運んでくれていた、あゆちゃんとまえちゃんが笑顔で迎えてくれて、緊張も少しとけて嬉しかったです。衣装に着替え、お父さんお母さん、出演組のみんなで揃ってお弁当をいただきました。台所さんが準備してくださっていた手作りのお弁当が本当に美味しくて、「よし、やるぞ!!」という気力がむくむくと湧いてきたなと思います。
忘れ物がないか最終チェックをし、演奏をする特設ステージへといよいよむかいます。私は控え室を出た瞬間から一気にドキドキしてきて、身体も熱くなってきましたが、ここからは常にもう見られているんだと意識して前をぐっと見つめて歩きました。
ステージへ向かって歩いている途中はもう衣装を着ていたからか、「わぁ〜、綺麗な衣装!!」「頑張ってな!!」などと声をかけてくださる方がたくさんいて、温かい言葉がとても嬉しかったです。
■気持ちで踊る
なのはなファミリーの演奏は午後一時からで、特設ステージのある芝生広場には、およそ三百名を超えるお客さまがいらっしゃいました。
演奏が始まるまでの間は、特設ステージのすぐ隣に設置してくださっていた控えテントの中でダンスメンバーのみんなと一緒に待機しました。
出番を待っている間も、みんなで出はけの最終確認をしたり、衣装が綺麗に着られているかなどをギリギリまでみんなで見合ったりして、自分たちのできる最高のパフォーマンスをしようというみんなの気持ちを感じ、自分も更に気が引き締まりました。
それに、お父さんがテントの袖に来てくださって、 「ステージの中心になるようにお母さんが観客側のほうで立っているから、踊っていて困ったときはお母さんを見つけると良いよ」 と、そっと声をかけてくださって、お父さんの言葉にすごく安心して嬉しかったです。
午後一時。
あゆちゃんのMCと共に、いよいよなのはなファミリーの演奏が始まります。一曲目は今回の曲目の中で、私が一番緊張していた『ザ・インビジブルマン』です。
始まる前に、ダンスメンバーのあけみちゃん、のんちゃん、ゆずちゃん、ふみちゃんと一緒に、「頑張ろう!」と声を掛け合いました。曲が始まって、一曲目が終わるまで、本当に無我夢中で踊りました。
地面は芝生だったこともあって、いつも体育館で練習しているときとは感覚もかなり違い、少し踊りにくい部分もありました。それに、外になると自分の立ち位置や目線が一瞬で分からなくなって、外での演奏がこんなに難しいものなのかと感じた瞬間でした。
個人的に、ベストなパフォーマンスができたとは言えないけれど、いつもお父さんやあゆちゃんが教えてくださる「気持ちで踊る」ことを思って、今できる自分の精一杯で踊りました。
最後のポーズが決まったとき、お客さまから大きな拍手をいただけて、本当に本当に嬉しかったなあと思います。
二曲目の『レインボー』では、私は『ザ・インビジブルマン』からの早着替えがあり、「間に合わなかったらどうしよう」という不安がありました。

でも、ヘルプに入ってくれたつきちゃんとるりこちゃんのコンビネーションが本当に息がぴったりで、リハーサルのときよりもスムーズに着替えをすることができ、レインボーの気持ちを作ってステージに出ることができてありがたかったです。
自分がダンスメンバーとして出ていないときも、演奏しているバンドメンバーやダンサーのみんなと同じ気持ちでいることを心がけました。一曲一曲、曲が終わるごとに、演奏を見てくださっていたお客さまが大きな拍手をしてくださって、その温かい拍手にたくさんパワーをもらいました。

■学びを次へ繋げて
最後の曲、『サム・ナイツ』は、長年演奏されてきている曲です。この曲を踊ると、生きる希望が湧いてきて、「絶対に諦めない」と強く思うことができ、私にとっても、本当に大切で大好きな曲です。踊っていると、みんなと一体になっている感覚になりました。
雨がポツポツと降り始めていたけれど、そんな雨も気持ちで吹き飛ばせそうでした。最後のポーズで空を見上げたとき、なんとも言えない幸せな気持ちになったのを今でも鮮明に覚えています。

なのはなファミリーの演奏は大成功に終わりました。
演奏後は雨が強くなりましたが、楽器の片付けなどもみんなで手分けをしてスピーディーに機材車に積み込むことができて良かったなあと思います。
演奏中、正面を向くと観客側の中央にお母さんやなのはなの応援組のみんな、須原さんや河上さんご家族、卒業生のそらちゃんファミリーなど、本当にたくさんの家族の姿がありました。
みんなに支えられて、無事に演奏できたことがとても嬉しかったです。
今回のイベントで、私はたくさんのことを学ばせていただきました。私にとって初めての外でのイベントは、難しさや悔しさを感じたこともたくさんあり、これからの課題も見つけることができて、出演することができて本当にありがたかったです。
このイベントをきっかけに、次のウィンターコンサートにも繋げていけるように頑張ります。