【10月号⑯】「自然溢れる 蛇淵の滝で お宝探しの旅へ」りな

  
 川へ行きたい!

 願いが叶って、お仕事組さんやりゅうさんのいて下さる夏の土曜日、家族みんなで蛇淵の滝へ出かけました。

 その日は晴れていて、暖かい陽気でした。けれど、山に入って、太陽の光が木々に隠れると、ひんやりとしました。蛇淵の滝に着いて、車を降りると、車の中では聞こえなかった、「ゴー!」という勢いよく水の流れる音がしました。山鳴りしているように大きくて、自然の壮大さを感じました。

 私は、以前も蛇淵の滝へ遊びに行ったことはあって、今回で二回目でした。忘れていた光景が蘇って、こんなにも綺麗な場所だったのだと驚きました。川の水は澄んでいて、川底を覗くと、ピンクや白や黒、形も様々な石がよく見えます。

 川には木で作られた橋が架かっていて、通り抜けると、小屋が立てられていて、小さな憩いの場になっていたり、広葉樹が植わっている山道に出ます。どこを見ても緑があって、来ただけで心が躍って清々しい気持ちになりました。

 着いてまず目に留まったのは、うねうねとまるで生き物のように、枝をくねらせて垂らしている木でした。それが手の届くぐらいの低い位置にあったので、もしかすると木登りができるんじゃないか……そう思い、枝にぶら下がってみると、不安定で木登りはできなかったものの、その枝がぐわんぐわん揺れて、ターザンになったようでした。
  

木の枝に掴まって、気分はターザン

 

 ななほちゃんやなつみちゃん、ももかちゃんと、木の枝に掴まって遊びました。人が全体重をかけても、枝はびくともしませんでした。ここにある一本の木だって、自然が作り出すものに比べたら、私達はとてもちっぽけだなあと思いました。大きな自然に囲まれていると、何かに見つめられて、包み込んでもらっているような、満たされた気持ちになりました。

 全員が揃って、お父さんが、「二〇二二年ジャブリンピック」の開会宣言をしてくださりました。

 今年は、猛暑も過ぎた時期なので、水の中での遊びではなく、水着を着ていなくても、川の周辺で遊べるゲームを、実行委員さんが考えて下さっていました。
  
  
 一つ目の遊びは、お宝鑑定団、もう一つは、川に流れる舟を、自然のものから作りだすゲームです。どちらも講評は午後で、午前中は、チームのみんなとお宝や、船に使えそうな材料集めに費やしました。

 みんながそれぞれチームで散ってしまう前に、あゆちゃんが、「三歩太郎の伝説」について、話してくれました。

 伝説には、ここから京の都まで三歩で歩いて着けたという大男がいて、その大男を産んだのは、蛇淵の滝に住んでいた大蛇だったということでした。これまで、なぜ、「蛇淵」という名前なのか疑問に思ったことはあるけれど、由来は考えたことがありませんでした。伝説を聞いて、そうだったのか、と疑問に思っていたことが解決して、嬉しかったです。 
 
  
 私は、お父さんチームで、よしえちゃん、ももかちゃんと一緒に、お宝を探す旅に出ました。伝説を聞いて、これまで何も知らずに見ていた景色が、また別世界のように見えてくる気がしました。現実ではない、遥か昔の、大蛇がいた頃を想像して、歩きました。私達が今歩いているところも、昔大蛇が住んでいたところなのではないか、イメージを膨らませながら観察するのがとても楽しかったし、伝説の世界へ引き込まれていくようでした。

 川の近くに何か生き物はいないかと、三人で探しました。川の水に足を入れたら、その冷たさに驚きました。水に足を付けた後、周りの空気の温かさを感じました。海に行ったときは、太陽の光を浴びて、海水が少し暖かく感じるときがありました。川は、はるかに冷たくて、透明でした。

 鑑定団になって、お宝がどこかに潜んでいるのではないか、と探していると、周りの自然のものすべてが、美しく繊細で、お宝のように見えました。価値が高そうだと思うものをバケツに入れていくと、チームの拠点へ戻るころにはバケツがいっぱいになっていました。
  
  
 持ち寄ったお宝の中で、これだと思うものを選びます。チームリーダーのお父さんにも見てもらいました。すると、次々にお父さんが品定めしてくれました。

「これは、三歩太郎の母の大蛇が、三歩太郎が泣き止まないときにしゃぶらせていた石。石に見えるけれど、実は、大蛇の目そのものなんだよ。三歩太郎が舐めて、形は少し歪にはなっているけれどね」

 お父さんが、お宝を見てすぐに、そのストーリーを話してくれました。もう一度、そのお宝を見ると、お父さんが話してくれた品にしか見えないぐらい、お父さんの解説には説得力がありました。

 お父さんは私達のチームリーダーでもあり、全体でのお宝の鑑定家です。だから、お宝の値段は、私達で考えました。
 
  
 お昼ご飯は、川のそばで御座を敷き、みんなで座っていただきました。その日はせいこちゃんのお誕生日で、みんなでせいこちゃんにお誕生日のお祝いを言うことができました。

 舟づくりは、順風満帆に進みました。お椀型になっている木を土台に、ふかふかのコケを敷いて、小さな石や葉で飾りつけ、最後は、肉厚の大きなシダ植物で帆を作りました。名前は「おくり船」。素朴だけれど、立派な船が作れて、誇らしい気持ちになりました。 
  
  
 浅瀬の川の中に、長机が置かれて、いよいよお宝と船の講評会です。全六チームのお宝と舟が机に置かれました。どのチームの舟も、形や大きさは様々でした。自分たちで作ったとは思えないぐらい、精密で頑丈で、本当に凄いなあと思いました。

 お宝の講評は、お父さんが鑑定家になってくれました。他のチームのみんなが、とても珍しいものを見せてくれたり、ありきたりのように見えるけれど、ストーリーがユニークで面白かったりして、見ていても、聞いていても飽きませんでした。特に印象に残っているのは、あゆちゃんチームの、大蛇が人間の美女に化けるために浸かっていたメイク道具でした。
  
  
 黒くて大きな黒板のような石に、十三色の色が塗られています。どうやって塗ったのだろう、そう思ってじっくり見てみると、その色の隣に小さな石が置かれていて、石を刷って、水で溶いて色を出したのだと、あゆちゃんが教えてくれました。子供の頃、アスファルトに石を擦り付けて絵を描いて遊んだことがあるけれど、石だけでこんなにもたくさんの色を出すことができるんだ、とびっくりしました。 
  
  
 船の講評は、実際に舟を水の中に浮かせたり、流れの速いところで流してみました。お母さんチームの「蛇淵の母」という船が、沈まずに、最後まで下流へ流れていきました。枝で大蛇にモチーフがされていて、舟の土台は、いかだのように太い枝を、植物のツタで結び付けられてできていました。まるで、大蛇が川へ下っていくかのように、船が小刻みに揺れて流れていく光景がとても綺麗でした。

 私達が作った船は、水に浮いたけれど、流れの速いところでは転覆してしまい、少し残念でした。でも、今度舟を作るときは、いかだのように、水が入ってきても抜けるような仕組みにできたらいいなと知ることができて、嬉しかったです。

 家族みんなと、大きな自然を感じながら一日、蛇淵の滝で遊ぶことができて、その時間が満たされていて、とても楽しかったです。