【10月号⑪】「一つひとつの作業が未来に繋がる ―― さくらピーチの収穫・秋季剪定 ――」つき

  
 「はなよめ」の収穫を皮切りに、六月末から途切れることなく、約二か月間、収穫をしてきた桃。真夏の暑い中、旨味や甘味をじわじわとため込んで、じっくりと熟れてきた、ラストの品種は、「さくらピーチ」です。

 「さくらピーチ」は、夕の子桃畑に一本だけある貴重な樹です。夕の子桃畑は土質が固く、生育があまり良くないそうですが、今年はできが良いとあんなちゃんが話してくれていました。また、晩生品種になればなるほど、玉の大きさも、甘さも乗ってくるので、桃メンバー一同、「さくらピーチ」の収獲の日を今か今かと心待ちにしていました。

 初収獲の日は、試し取り程度の収穫でしたが、これまで収穫してきたどの品種よりも大玉で、ソフトボールよりも一回りも二回りも大きく、驚くほど立派な桃でした。

 収穫基準は、少し緑色が残っていても全体がオレンジっぽくなっているのが目安です。

 これまで収穫してきた品種は黄色がかっている感じでしたが、「さくらピーチ」は、あんなちゃんの表現の通り、オレンジっぽい感じが独特の色でした。

 でもやはり、今年は緑色が抜けきらないことがどの品種も全体の傾向としてあったようで、その点は「さくらピーチ」も同様でした。微妙な色の違いを判断するのはすごく難しかったけれど、

 あんなちゃんが見せてくれた収獲適期の桃は、雰囲気が柔らかい感じで、ふわっとした肌触りが手に心地よかったです。

 まだ熟れている実が少なかったので、数日後に二回目の収穫に行くと、ほとんどの桃が収穫できそうなくらいに熟れていました。

 まだ少し緑色が強かったり、硬そうな実もあったものの、「さくらピーチ」は追熟して食べる桃ということもあり、もう全収穫をしてしまおう、とあんなちゃんが判断をしてくれました。収穫二日目にして「さくらピーチ」は全ての実を取りつくすことになり、思いがけず、今年の桃の収穫はこの日が最終日となりました。

■桃の概念が変わる甘さ

 選果ハウスで糖度測定をしてみると、十八度から二十度という桃が続出!

 一番高かったのは、“二十四度”という一同驚愕の数字でした。これまで糖度の高かった「白皇」でも、十八度が一番高いくらいだったので、どんなに甘いのだろうとワクワクした気持ちになりました。追熟させて、あんなちゃんが一番良い時期を見てみんなに出してくれた桃は、桃の概念が変わるくらい甘かったです。

 それだけでなく酸味や渋みや旨味も絶妙に絡み合った深い味わいが口いっぱいに広がる、本当に美味しすぎる桃でした。
  
  
 これで今年の桃が最後だと思うと、すごく寂しい気持ちもしましたが、みんなと一緒にいただけたことが嬉しかったです。

 今季、桃の収穫に毎日入らせていただいて、桃の収穫は、一言で言えるような収穫基準はなくて、自分の心の目で一つひとつの実を見て、色の抜け具合や触感、桃が醸し出している雰囲気のようなものを感じ取ることが大事なのだと、実感しました。

 それはすごく難しくて、神経を研ぎ澄ませないとできないことでした。

 あんなちゃんに頼りきりではなく、しっかりと自立心をもって、かつ自分を信じる気持ちと疑う気持ちを両方もって、謙虚に桃に向き合うことが常に必要でした。

 そんなふうに気持ちを使う毎日は、私にとって自分を成長させる大きな機会となって、今季、桃の収穫をさせてもらえたことが本当にありがたかったです。

 収穫が終わると、休む間もなく秋季剪定が始まりました。初日は、あんなちゃんがずっと剪定をしてくれて、どういう理由でその枝を切るのか、一本一本丁寧に説明をしながら進めてくれました。私たちは、トップジンという殺菌&保護剤を切った断面にぬっていきました。

 そうすることで、枯れこみを防いだり、保湿にもなります。

 秋季剪定の主な目的は、樹形と整えること、日あたりを良くすること、作業性の改善です。あんなちゃんの説明を聞いていると、すべてがその目的につながっていて、納得できることがすごくおもしろかったです。
  

 剪定が始まる少し前に桃の防除をした時、内側に向かって伸びている内向枝が勢いよく伸びて、わさわさ茂っているのが気になりました。それが剪定をすると気持ちが良いくらいにすっきりとして、地面に光が差し込むくらいに全体の日あたりが良くなっていくのを感じられました。

 二日目からは、自分たちでもノコギリと剪定バサミをもって剪定をしました。桃の樹は三本主枝になっているので、一人が一本の主枝を担当して、あんなちゃんが全体を見てくれました。

 まず、自分の担当するところの主枝がどれかを見て、そこから要らない枝や邪魔な枝を見つけ、その根拠も自分の中で考えていきます。

 目安を付けたら、あんなちゃんに見てもらいながら答え合わせをしていき、疑問点も詳しく教えてくれます。この方法はすごくやりやすくて、自分の考えが合っているのか、見られていなかったところ、気付けなかったところもその都度分かり、理解が深まっていきました。
  
  
 本数を重ねていくごとに視野が広がって、気付くところが増えて、根拠も具体的になっていくことが嬉しかったです。

 日あたり、作業性、隣り合っている枝同士の兼ね合い、樹全体の勢い、枝ごとの勢い、様々な視点から考えて、残すべきか落とすべきか判断していくのは難しくて、まだ私には判断ができないことが多いですが、二年後、三年後のことまで、桃の未来を考えながら、俯瞰的に、視野を広く持って的確な判断をしていくあんなちゃんが本当に格好良かったです。

 あんなちゃんが剪定をしていると、いとも簡単にノコギリでサクサクと枝を切っていくように見えたのに、いざ自分がやってみると枝一本切るだけでも難しくて、注意すべき点やコツがあるのを実感しました。

 切る時は、葉芽の直上で切ることで養分が行きやすくなるため、枯れこんでも傷の修復が早いということ。

 脚立も的確に立てて、しっかりと力が入るようにして、切りやすい姿勢にすること。そうすることできれいに切ることができて、樹にも負担が少なくなること。

 そんな基本的なことまで惜しみなく教えてくれることがすごくありがたかったです。