「フルートに名前を」 みつき

10月17日

 目を覚ますと、しとしとしと、と雨の音が聞こえました。
 畑には出られなかったけれど、水やりになるから、植えたばかりの野菜たちは喜んでいるかな、と想像していました。
 それに、お父さんのお誕生日会を終えて、コンサートの練習が進められるかな、と思うと、うれしい雨でした。

 今日から、全体演奏の『ドラムライン』の楽器練習が始まりました。
 今回わたしは、フルートパートになりました。人生初の管楽器を扱わせてもらうことに、緊張のどきどきや、期待のどきどきでいっぱいです。
 ちさとちゃんから受け取ったフルートは、コンパクトな黒い箱に収まっていて、開けると、銀色のボディ、並んだ丸いボタンが、きらっと光りました。
フルートが「よろしくね」と挨拶してくれたようで、わたしも新しいお友達ができたようで、とてもうれしかったです。

 さっそく、るりこちゃんやさやちゃんが、頭部管を使って音を出す方法を教えてくれました。ですが、音を出すにはいくつものポイントがあり、「そうだったんだ!」と思うことばかりだったし、とても難しいものでした。

 息を全て穴に入れても音は出ないということ、下唇を突き出すようにすること、唇の中央からほんの少しだけ息を出すように吹くこと……。などなど、初めて知ることばかりで、何度も何度もやっていると、鼻と口の間のあたりがくたびれてきて、ハアハアとしてしまいました。これが、みんながよく話してくれていた「口がつかれる」ということなのかもしれないなあ、と思ったりもしました。

 2回だけ、奇跡的に音が出てくれました。
 頭部管の少し低めの音だけれど、フルートの声が聞けたことがとてもうれしかったし、さやちゃんとるりこちゃんが、いっしょに、飛び跳ねて喜んでくれました。
 ああ、フルートって面白い、楽しいなあ、と感じました。

 すべての条件が合わないと、音が出てくれないフルートが、わたしはなんだか、とてもかわいいと思えます。音が出てくれないけれど、音が出てくれないから、ようし、聞きたい、頑張りたい、と思えます。

 最後に、ちさとちゃんが、有名なフルート奏者の演奏の動画を見せてくれました。その音色が、ささやかだけれど、とてもやさしくて綺麗でした。
 また、「自分の楽器をすきになることが1番大事だよ」と話してくれました。みんなが自分のフルートに名前を付けているそうで、わたしも、フルートに名前を付けてあげたいです。
 早くフルートが話してくれるように、仲良くなれるように、毎日会いに行って、練習をしたいです。