【9月号⑪】「税理士科目試験 事業税を受けて 」のん

   
 今年の夏、税理士試験のうちの事業税の試験を受けました。これで四科目目の受験になります。去年の相続税を受けたとき、再受験することになると思い、相続税と二科目受験することになるであろうと思って決めた、今回の科目。

 ボリュームは少なめ。なので覚えやすくはあるのですが、それは他の受験者にとっても同じことで、ボリュームが大きい科目よりも満点に近くならなければならず、暗記や計算の正確さが求められる科目です。

 事業税は、事業を行う全ての法人の事業と、第一種事業、第二種事業、第三種事業として定められている個人が行う事業に対して課される税金です。事業税法という法律はなく、法人税などの国税とは違って地方税なので、地方税法に定められているものです。

■事業税

 そんな事業税。受験する科目としてみると、計算より理論の割合が高い、個人的にはちょっと大変な科目です。計算の解答用紙が今までの科目と違っていて、枠のみのほぼ白紙。他の科目はそれなりに細かく枠があって、名前を書くときに、そこから問題を推測できる部分があったのですが、事業税は、ほぼ白紙です。
  
  
 でも、解答用紙の枚数から問題を推測できるのが事業税の科目の、少し面白いところです。計算の問題は、複数の都道府県にまたがって事業を行っている場合を前提としていることがほとんどで、各都道府県に納付するべき税金を按分する計算が入ります。

 この分割基準が事業の種類によって違っていて、どれくらい計算が必要かが違ってくるのです。例えば鉄軌道事業だったら、各道府県の軌道の延長キロメートル数、製造業だったら従業者の数など。

 他にもいろいろなパターンがあり、各事業で計算する量がまったく違うので、この枚数だったらこれかな、というのが予測できるのです。鉄軌道事業と電気供給業が、解くのに時間がかかる問題のツートップ、という感じです。

 そんな事業税。相続税が合格したと知ったころには紅白歌合戦の準備、年が明けたらダンス練習が始まり、スプリングコンサートまで正直のところ、ろくに勉強していませんでした。
  

スプリングコンサートではたかお役を演じました

  
 心の中でうっすらと冷や汗をかいたコンサート期間。そこから勉強モードに切り替えて、森盛庵でえみちゃんと勉強した山小屋キャンプ。模試と被って涙を飲んだケニー・モナーク・フェスティバル。やらずにはいられなかった集中ミーティング。

 去年の相続税の受験から本当にあっという間に一年が過ぎてしまった、という感じがします。気付いたらここまで来てしまっていた、と。去年は勉強が間に合わなくて、上り詰めていって、本番がぎりぎり合格圏に入った、という感じでした。今年は自分ができるピークを最後一週間くらい維持して本番に臨んだ、という感触がありました。

■カウントダウンを心の中で

 事業税は税理士試験のなかでも受験者数が一番少ない科目です。多い科目の十分の一くらいの人数です。私が受けた香川県の会場では、九人の受験番号が座席の表に記載されていて、うち、実際に来ていたのは私を含め五人でした。

 去年、一昨年は一階の大ホールでの試験だったのですが、今年は二階の小会議室でした。

 会場内の見取り図で見ても、びっくりするくらい大ホールと違っていて、実際に入ってみると六年生教室の方が広いかもしれないくらいの部屋で、ちょっと落ち着きました。

 試験は午後三時から五時。午前は近くの図書館で勉強して、お昼を食べてからは会場となったサンメッセ香川のロビーのようなところで勉強していました。もうこの理論を見るのは最後かもしれない、と思うとちょっと切ない気持ちになって、なかなか覚えられず苦戦した理論にも愛着が湧いていたことを感じました。

 また、同時に緊張も感じました。時計を見る度、あと二時間、一時間、とそのときが迫ってくる感じがしました。コンサートの幕開けが近づいてくるような、どきどきした気持ちになりました。
  
  
 二時二十五分に試験を受ける部屋が開場されて、部屋に入ります。私は上手の最前列の席でした。席の都合で長机を一人もしくは二人で使うようになっていたのですが、ラッキーなことに私は一人で一台使うことができました。

 携帯の電源を切って、リュックに入っているストップウォッチなどが鳴らないかを確認します。開始十五分前から試験の説明が始まります。答案用紙が配られて、受験地や受験番号を記入していきます。

 過去の問題からすると、理論も計算も十枚ずつほどが平均的、という感じで、記入しながらそれと照らし合わせて、問題や、かける時間を予測します。

 理論は九枚。妥当です。ところが計算は十四枚。中くらいのボリュームの問題二問か、と思いきや、第一問十枚、第二問四枚。第一問は、多分、鉄軌道事業か、電気供給業。四枚ってなんだろう。保険業かな。第一問は間違いなく、かなり時間が取られることになる。理論は三枚ずつ三問。そんなに大きな問題はない。そんなことを考えながら記入をしていきます。

 そして記入も説明も終わり、前の試験官の人たちが座るテーブルに置かれた、この部屋の試験時刻を計る時計が、十五:〇〇:〇〇になるのを待ちました。緊張と興奮とわくわく感で胸がいっぱいになりました。

 十秒前のカウントダウンを心の中でして、五秒前くらいからは時計から目を離して、問題用紙などに意識を向けます。

■開始

『五、四、三、二、一…』

 開始の合図が告げられました。問題をめくると、まず理論。第一問は個人事業税について。二問あるうちの一問目は特別の定め。二問目は各種控除。

 難しい理論でも、苦手な理論でもない。でも、特別の定めでぱっと思いつくのは解答用紙三枚分もない。

 そう思って二問目の各種控除から書き始めました。書き始めると、万年筆のインクが思ったより滲んだので、見出しだけ書いて、ボールペンに持ち替えました。

 各種控除はテキストでは二ページ分の内容。間違えずに書ききったら二枚で収まる。第一問の二問は四十五分以内に書き終えたい。淀みなく書ければ一枚十分で書ききれる。

 読んでくれ! という気持ちを込めて、解答用紙に勢いよく字を書き殴っていきます。

 書きながら、一問目の足りない部分に書くべきことを考えます。事業専従者のことを詳しく書けばいいのだと気付きました。二十分程度で二問目を書き終えて、一問目に戻ります。

 一問目を書いている途中に、第二問の問題に「延滞金」という文字が見え、もしかして参考程度にしか書いていなかった理論かも、と思い、ちょっと心がつぶれかけます。

 でも、それならなおさら書けるところで稼ぐしかない、と思って、書いていきます。

■てんこ盛りの問題

 ほぼ間違いなく覚えている理論で、逆に計算に明らかに時間が取られることが分かっている状態で、どこまで書くかに悩みました。つい書けるので書きたくなってしまうのですが、おそらく全部書いている時間はない。当初思っていた四十五分で書ききれるところまで書いて、第二問はいつも通り後に回して、一旦計算に取りかかりました。

 計算一問目は、やはり電気供給業で、発電事業でした。しかも、製造業と併せて行っていて、かつ、外形対象法人。そんな恐ろしいボリュームの問題やったことあったかな、というくらい、てんこ盛りの問題でした。

 時間がかかる上に、転記と電卓を叩く計算が多くなるので、ミスが出やすいです。

 問題自体はそんなに難しくなかったのですが、一か所、分割基準で、総固定資産の価額が、電気供給業のものと、製造業のものと、法人全体の資料が与えられていて、分かりませんでした。

 法人全体で解き進めました。違っていたら、そのあとの計算は全部間違ったことになります。事業税の怖いところは、一か所の間違いが大きく響くところです。この判断が吉と出たか凶と出たか。後から大原の解答速報を見たら、吉と出ていましたが、四十五分くらいかかりました。

 計算二問目は、特定内国法人の問題でした。分割の計算は大変ではない問題だったのですが、課税標準である所得を求めるのが難しい問題でした。

■やり切った二時間

 外国の事業に帰属する所得の金額は明記されているし、外国税額の全体も、損金に算入された外国税額も分かっているのに、外国の事業に帰属する所得に対して課された外国税額のうち、損金算入された額が分からない、という問題で、どうするの!? と思いました。

 残り時間もないし、理論に戻りました。参考程度にしか見ていない理論かも、と思っていたけれど、そんなことはなく、出るかもと思っていた理論で、書けるのに、書けないだろうと思っていたので時間をあまり残していない! という状態になりました。聞かれていることに最低限答えることができるように、書くべき場所を絞って書きました。

 最低限書いて、余った時間は一分弱。計算に戻って、頭を切り換えた瞬間、そういえばこんな問題どこかでやったかも、損金算入分の内訳が分かってなかったら外国の事業に帰属する所得に対して課されたほうに優先して損金算入分割り振っていいんじゃなかったっけ……と思って数字を見て書き始めたところで試験終了となりました。しかもその数字を間違ったところから持って来た気がするなあ、と思いながら、ペンを離しました。

 二時間、問題の海に深く潜って、集中して、やり切った、と思いました。たまらなく楽しかったです。一年間のどのときよりも、どの問題よりも、コンサートの本番でお客さんがいてくれると一番緊張も高揚もするように、緊張したけど、楽しくて、気持ちよかったです。あとは試験の神様にお任せします。

■希望の光

 帰りはずーっと、ぼーっとして、何もせずに景色を見て、ぼんやり何かを考えたり、考えなかったりしながら帰ってきました。津山駅に着くと、なおちゃんが迎えに来てくれていました。帰って来たんだ、と思いました。

 帰りの車では、二日間であったことを話しながら帰って来て、徐々に気持ちが戻ってきました。古吉野に帰って来たら、会う人みんなが、「おかえり!」と笑顔で言ってくれました。
  

なのはな金時太鼓のメンバーに仲間入り

 

 「遊べるね!」と声をかけてくれました。お父さんがこんなこと言ってたよ、とみんなが教えてくれました。

 ここからたくさん遊んで、作業して、ちゃんと気持ちを作り直して、また、最後の一科目に向かいたいと思います。税理士にならなくてもいいや、と、つらくなったときに思ったりもするけれど、なおちゃんが出発前にくれた手紙に、

「なのはなや、新しくつくっていく税理士事務所を想うとき、のんちゃんの存在が私の希望です」

 と書いてくれてあるのを見て、そう思ってくれる人がいることが、私を導いてくれる希望の光だと想いました。まだ私は頑張れる、と思いました。

 そう思ってくれる気持ちに応えるためにも、私はこの一年で、人間としての力をちゃんと身につけて、ちゃんと生きられるようになろう、と思いました。

 試験が終わって、久しぶりにみんなのなかに入ると、慣れないことがたくさんあって、戸惑うこともあるけれど、楽しいし、毎日が充実しています。もっともっと気持ちも身体も充実させて、最後の一科目に挑みたいと思います。