【9月号②】「胸が弾む、色とりどりの屋台 ―― 盛男おじいちゃんの山で遊んだ特別な夜 ――」ななほ

  
 縁日当日。  

 この日は元々、雨の予報でしたが、お母さんと河上さんが、盛男おじいちゃんにお願いをしに行くと、縁日の屋台が開く夕方には、ぴたっと雨が止み、縁日を開催することができました。  

 天気予報によると、また空が暗くなることに雨が降り出すということだったのですが、私たちが、「もう何もやり残したことはない」と思うくらいに遊び疲れた頃に、ちょうど、雨が降り始め、遊んでいる間に雨が降らなかったのは、やっぱり、盛男おじいちゃんの存在と、お父さんの晴れ男パワーのおかげだと、私は思っています。  天気の話しはここまでにして、話しは本題へ。  

 そう、ずっと楽しみにしていた縁日祭り。今年は、短期合宿ミーティングの打ち上げ会も兼ねての縁日ということで、来てくれた子が存分に楽しんでくれるよう、みんなと準備をしてきました。  

 準備といっても、私はちょうど、縁日の始まる一週間前から短期合宿ミーティングのサポートメンバーとして、ミーティングに参加していたため、金魚すくいの飾りがどうなったのか、川で小魚は釣れたのか、金魚は無事に到着するのかとヒヤヒヤしてもあり、サプライズのようで楽しみでもありました。  

 そんなこともあって、私自身も、(いったい、どんな遊びが待っているんだろう?)と迎えた、縁日。  

 お母さんとあゆちゃんが一緒に選んでくれた、紺地に白い大輪の花が散りばめられた浴衣に、朱色の帯を締めて、短期合宿ミーティングのみんなと盛男おじいちゃんの山を登っていきました。  

 上を見上げれば、紅白の提灯に桃ライトがきらきらと輝き、あゆちゃん達が用意してくれた櫓に結ばれた竹が、こちらを覗いています。

■山を登った先に  

 山の中は蝉の鳴き声が響き、パッと前を向いたら、そこには色とりどりの屋台が目に飛び込んできました。  

 射的、ヨーヨー釣り、金魚すくい。なのはなの縁日には欠かせない、シューティングゲームにお父さんが大好きな吹き矢の屋台。
  
   
 あゆちゃんが渡してくれた縁日パスポートを片手に、まずは射的のブースへ足を運びました。  

 風車の飾りの中から現れたのは、ちぎり絵で作られた的。グラデーションになったその的のシルエットは、どうやら動物のようです。

 下段が一点、中段が三点、上段が五点。そして、たてがみが金色に輝いているライオンは、二十点。  

 私はライオン狙いで、射的に臨みました。  

 ライオンと決めたからには、どうしてもライオンを倒したい。

 強い気持ちで射的に臨んだものの、球が当たれば倒れるというわけにはいかず、七発中四発は的に当たったものの、ライオンの佇まいは最後まで堂々としていました。  
  
  
 残念ながら結果は零点に終わってしまったのですが、そのあとに一緒に屋台を回っていた子たちが、一点、三点、五点と的を倒していたり、次の屋台へと歩き始めたとき、後ろから、「ライオン、獲得で~す!」という賑やかな声が聞こえ、それを聞いているだけで私も大満足でした。  

 ヨーヨー釣りでは、りひと君がスペシャルヨーヨーをいくつも釣っていたり、二歳になったたけひろ君や、河上さんのお孫さんのようたろう君たちが楽しそうにこよりをプールに落としては、釣れたヨーヨーを手に満面の笑みを浮かべていて、とっても可愛かったです。
     
 あゆみちゃんと、ひでゆきさんが、たけちゃんのために真剣にヨーヨーをとっては、「たけひろ、たけひろ」と、水遊びを始めたたけちゃんと一緒に釣ろうとたけちゃんを呼んでいて、その空気がとても賑やかで、元気が出ました。

■夢のある屋台

 金魚すくいの屋台は、遠くからでも分かるくらい、紅白の飾りが華やかで、こんなに綺麗なお祭りの屋台はなのはなにしかないと思いました。

 みんなで作った張り子の金魚ちょうちんや、ほしちゃんとリメイクした金魚の大看板。金魚すくいチームのみんなが作ってくれた風船飾りや、障子を利用した金魚の影絵もとっても華やかでした。
  
  
 金魚すくい自体は、金魚の泳ぐスピードが速いために長居してしまったのですが、五匹の金魚をすくうことができました。

 そのときは五匹だけれど、全体では三位だったのですが、縁日が終わる頃には、ダントツ一位がお父さんの十一匹だと聞いて、さすがお父さんだなと思いました。  

 シューティングゲームはミーティングチームの子も一緒に飾り付けをしたこともあり、少しなじみがあったお店でした。
  

カラフルな鳥の的でシューティングゲーム

  
 ゲーム自体は難しかったけれど、三匹の鳥を仕留めることができました。

 山の中に突如、カラフルな鳥の的が木にとまっている光景は可愛いかったです。

 また、山小屋へと戻れば食欲をそそられる香りで満ちていて、気がついたら焼きそば屋さんの前に立っていました。

 今年も、河上さんの旦那さんである、まさはるさんがマイ鉄板を持って、山小屋縁日へと来てくださったのですが、やっぱりまさはるさんの焼きそばは格別においしいです。
  
   
 遊びの屋台以外では、河上さんとなっちゃんによるどら焼きに、りゅうさん特性のごま団子、あゆちゃん特性マクワウリスムージー、お父さんはわたあめ屋さんなど、お祭りらしく夢のある屋台がたくさん出ていて、どれもとてもおいしかったです。  

 どら焼きにはなのはな産の桃で作ったコンポートや、餡子が入っていたり、スムージーは何杯でも飲めるくらい、冷たくて、甘くて、大好きになりました。

■深くなっていく  

 なのはなのみんなと一緒なら、縁日も屋台も、おいしい料理もすべて手作りで、質の高いものができて、なのはなのみんなと作る、なのはなにしかない縁日がとても嬉しく、幸せでした。
  
  
 お化け屋敷では、とっても大変な思いをしながら屋敷を出たのですが、存分に怖い思いをするのも年に一度なら良いかなとも思いました。

 合宿ミーティングに来てくれた子たちも、お化け屋敷も含めて屋台を楽しんでくれたみたいで嬉しかったし、なのはなで縁日などのイベントをするたびに、みんなとの心の距離や、協力関係、信頼関係がより濃く、深くなっていくように感じます。
  
  
 ただ、浴衣を着て背中を並べて屋台を歩く時間。
 ただ、楽しいねと笑い合って、悔しいねと笑い合って、おいしいねと笑い合う時間がこんなにもかけがえのない幸せで、大切なことだったのかと、今、しみじみと思います。

 誰かと喜びを共有したり、誰かが楽しんでいるのを見るだけで私も楽しくなったり、幸せを感じられる今がとても幸せです。

 なのはな山小屋縁日。きっと、盛男おじいちゃんも空の上から、いや、山の上から私たちのことをそっと見守ってくれていたかなと思い、毎年、山小屋でキャンプや縁日ができるのがありがたいなと思います。

 私は山小屋に住んでいたことはないのですが、私にとって山小屋はもう一つの家であり、落ち着いて安心する居場所で、そんな山小屋がこれからもずっと、同じ形で在り続けてくれると思うと、私も山小屋、なのはなファミリーの未来を作り、未来につなげて行く一人でありたいと思いました。
    

お父さん、あゆちゃんのわたあめ屋さん

  
 みんなが童心に返ったように全力で遊び、悔しがり、時に恐怖で叫び、本当になのはなではいつも全力で、いつも本気で、いつも一生懸命で、そんな仲間がいてくれて幸せだなと思いました。

 仲間のおかげで、私は今、生きていられるなと感じた縁日でした。