9月3日
26歳の誕生日を迎えました。
収穫に行く身支度をしている時から、ゆいちゃんや、やすよちゃんが走ってきてくれて、
「今日、仕事だから、古吉野ではお祝いできないけど! お誕生日おめでとう!!」
と、キラキラした笑顔で言ってくれて、朝からもう胸がいっぱいになりました。
日中は、みんなで蛇淵の滝へ。初めて行く川遊び。卒業生のさきちゃんやいとちゃんも帰ってきてくれて、チームに分かれ、お宝探しと船作りをして遊びました。
私はあゆちゃんのチームでした。お昼までの間は、チームの中でもペアやトリオに分かれて、お宝や船の材料になりそうなものを集めてくることになりました。
私は、あゆちゃんとなるちゃんと一緒に滝のまわりでお宝を探しました。私は、昔から、「〇〇をしなさい」と言われて、それをノルマとしてやる、ということは出来るのですが、「遊ぶ」ということにすごく苦手意識がありました。
何をどうやって、遊んだらいいのだろう。周りの人をつまらない気持ちにさせたらどうしよう。そんな不安でいっぱいになって気疲れするので、なのはなに来る前まで、人と遊ぶということが一切できませんでした。
お宝探しを始めた直後も、「あゆちゃんたちを、つまらない気持ちにさせちゃったらどうしよう。ちゃんとお宝探しをできなかったらどうしよう」と、過去に感じていた不安な気持ちを少し抱いていました。
でも、あゆちゃん、なるちゃんと一緒にお宝を探す時間は、ほんとうに温かい時間でした。
「ほら見て! ここにいっぱい船に使えそうな木がある! いい感じの長さに折って集めよう!」
「見て見て! この蔓、船の土台を縛るロープに出来そうなんだけど、すっごいキュウリの匂いがする!! なんで!!」
「ねえねえ、お宝と全然関係ないんだけど、この虫、さっきからずっと岩の上をうろうろしてるんだけど、川には入りたくないみたいで、お尻についた水を後ろ足で拭いてるの。すっごい可愛い!」
2人のお姉さんと一緒だと、川辺にあるどんなものも、キラキラして見えました。
お宝になりそうな石を探していた時のこと。
「この石、すっごい綺麗な色が出るよ!」
あゆちゃんの元へ行ってみると、あゆちゃんが石を岩で磨くようにして擦っていて、岩には、すごく綺麗に石の色が出ていました。
淡い茶色のような色。
「こんな感じで、いろんな石を削って出た色を集めてみるのはどう?」
素敵すぎるアイデアを出してくれて、早速、綺麗な色が出そうな石を夢中で集めて、岩に色を出していきました。
柿ようなオレンジ色、ちょっとクリーム色っぽい白色、小豆のような紫色…。
色を出すたびに、近くにいるなるちゃんに見せると、「すっごい綺麗!」と喜んでくれて、「私のも見て!」と新しい色が出る石を見せてくれました。
遊ぶって、こんなにも楽しいものなんだ。こんなにも気持ちがワクワクして、ときめいて、それを共有して喜び合える人がすぐ側にいて。遊ぶって、なんて素敵なことなんだろう。生まれて初めて、遊ぶ楽しさを感じた時間でした。
集めた石たちから出る色は、どれもこっくりとした秋らしさがありました。一色ずつ、岩に描き出していったものを私たちのお宝にしました。ずっと見ていたくなるようなうっとりとするこのパレットは、「大蛇がその昔、人間に化ける時に使ったお化粧道具」という物語をつけて、私たちのチームのお宝として、お父さんに鑑定してもらいました。
お昼ごはんをみんなで川辺で食べているときも、みんながお誕生日をお祝いしてくれました。
川の音に負けないくらいの大きな声で、一人一人が、「せいこちゃん、お誕生日、おめでとうございます!!」といってくれて、本当に嬉しかったです。
船づくりも、「『せいこちゃんの26歳の船出』っていうタイトルの船にしよう!」と、私の誕生日に因んでくれて、みんなで船作りがスタート。ひろこちゃん、どれみちゃん、あんなちゃんは、さすが桃チーム。器用に、木と蔓で簾を作る方式で土台を作ってくれて、その上に苔を敷き、その上に飾るかざりはなるちゃんが作ってくれました。
私は、紫の綺麗な実がついた植物を見つけてきていたのですが、
「あ、それ、実を潰して水に溶かすとすっごく綺麗な紫の色水が作れるよ!」
とあゆちゃんが教えてくれて、それはぜひやりたい! と意気込み、早速バケツに川の水を入れ、色水を作りました。
「いいね! それ。船出のお祝いのぶどう酒にしよう!」
みんながそう言ってくれて、カップに移し替えて、船の上に飾りました。
今日、蛇淵の滝で見たもの、みんなで作ったもの、みんなと過ごした全ての時間の全てを自分の心の宝箱に入れておきます。本当に本当に幸せな時間でした。
お父さんがお祝いの時に言って下さった言葉。
「せいこは、かなり、論理的な男性脳的な思考。理詰めで、理解できないと、納得しないような、良くも悪くも頑固なところがあって、そこがせいこらしさなのかな、と思います。でも、今、分からないことがあってもそれを保留にして、『分からないところがあっても良い』というスタンスを持てるようになると、もっともっと成長が早いと思います」
確かに、私の思考回路を言い当ててくれたような感じがして、また一つ自分の考えの癖みたいなものを、自分自身で理解できて嬉しかったです。自分の論理的思考を、より利他的な方向へ使える強みにできるような柔軟性を身につけて行きます。
お母さんの言葉。
「せいこは優しいので、せいこのなのはなに来るまでの環境は、せいこ自身が思っている以上にかなり苦しかっただろうと思います。今までの経験で覆われてしまったものを脱ぎとって、せいこらしさをもっと発揮出来たら、と思っています。せいこの優しさは、なんていうか、そよ風みたいなんだよね。もっともっと、自分の喜怒哀楽をはっきりさせて、情緒と心の幅を広げてくれたら、と期待しています」
私は、自分を肯定できない時、自分を汚してしまいたい衝動に駆られる時に、いつも、お母さんが度々私に言ってくれる、「せいこは、優しいんだよ」という言葉を、思い出し、それをお薬にしています。私らしい優しさをもっともっと深めて行きます。いつか、同じ痛みを抱えたまだ見ぬ誰かにとってかけがえのない存在になれるよう、なのはなのみんなの中で成長していきます。
あゆちゃんの言ってくれた言葉。
「せいこちゃんは、よく『自分は不器用だから』っていうけど、論理的な思考のなかで、優しさを忘れていない」
お父さんの言葉とお母さんの言葉を融合してくれたような、あゆちゃんの言葉。あゆちゃんは私がもうどうしようもなく困ってしまったときでも、いつも、半歩先の成長した私を思い描いてくれているような言葉を掛けてくれて、その度に力が湧いてきます。あゆちゃんの言ってくれるような人になれるよう、成長したいと改めて思いました。
今までの人生で一番幸せな誕生日でした。みんなのことが大好きです。
この気持ちを、なのはなのみんなや、この先の未来に出会うまだ見ぬ誰かに還していけるよう、日々成長していきます。