さぁ、本日限りのスペシャルメニューをご堪能あれ。
「なのはなイタリアーノ」開店です!
食堂の黒板には、前日の夜にりゅうさんとあゆちゃんが書いてくれた、ピザとパスタの簡単レシピに、まよちゃんの「nanohana italiarno」の文字、るりこちゃんが描いたイタリア旅行を楽しむ夫婦。余白には、今回のスペシャルメニューに使われた、ナスにミニトマト、玉ねぎ、にんにく、バジルがいっぱいに散りばめられています。
みんなが楽しんでくれるようにと思って、描き始めた黒板が、とっても素敵なものに出来上がり、当日にはみんなが、何が始まるのか、ワクワクしてくれていることを感じて、嬉しかったです。
りゅうさんとあゆちゃんがシェフの、なのはなイタリアーノの良さ。それは何といっても、出来うる限りの、なのはな産。
ナスとトマトのピザ、マルゲリータ、バジルとミニトマトの冷製パスタ、全て、なのはなの野菜をふんだんに使ったスペシャルメニューです。
りゅうさんもあゆちゃんも、いつもみんなが作った野菜で、なにか作れないかと大切に考えてくれていることを感じ、とても優しい気持ちになります。
今回のピザは、生地の強力粉まで、なのはな産。
この生地は前日の夕方に、りゅうさんとまよちゃん、ゆかこちゃんと一緒に、腰を入れて全力でこねたもので、ラストの一分半は筋トレのように思えるほど、生地の弾力が強く、これを半日以上寝かせて、翌日の朝に見にいくと、昨日こねたものだとは信じられないほど、体積が二倍以上に膨れていました。強力粉八百グラムに対して、イースト菌はたった八グラムしか入れていないのに、こんなに発酵するんだと、驚きました。
■綺麗な耳を作って
ツンツン触ってみると、こねたときより、だいぶん柔らかく、あゆみちゃんの赤ちゃんの、たいちゃんのほっぺのようで、可愛いなと思いました。
食堂で、りゅうさんの説明を聞きながら、さっそくピザづくりがスタートします。
りゅうさんの教えてくれたポイントは、
「耳を潰さずに残すこと。なるだけ薄く伸ばすこと」
丸い、こぶし大の生地の中央を四本指でムニムニと押しながら延ばしていき、ふちの耳は、しっかり残したままにします。
りゅうさんたちと前日にこねた生地は、しっかりこねられていて、伸ばしても伸ばしても、また自分で元に戻ってしまうのが、難しく、かといって、戻らないようにしっかり薄く伸ばそうと思うと、生地に穴が開いて、みんなと「意外と難しいね」と話しながら作るもの面白かったです。
ピザづくりの職人さんが、まるでバスケットボールを指でくるくる回すように生地を空中で伸ばしているのを見るけれど、あれは、魔法で出来ているんじゃないかと思えました。
生地を完成させると、今度は、チームで作った半分の枚数に、りゅうさんお手製トマトソースを、もう半分にはあゆちゃんお手製、ナスとトマトのソースを、縁のぎりぎりまで塗ります。
その上に、やよいちゃんとたけちゃんと一緒に、「パッ」と言いながら、チーズをのせました。
トマトソースとチーズのピザには、最後に四枚のバジルを飾り、ナスとトマトのピザには、短冊切りのナスを、綺麗に円状に並べて、完成です。
さぁ一体、わたしたちが思うままに、心を開放して楽しんで作ったピザはどうなるのか。
りゅうさんがオーブンに入れた後、少し見守っていると、二分ほどして、チーズがとろーり溶けていくのが見えて、思わず、
「りゅうさん、チーズが溶け始めました!」
と報告すると、
「思ったよりはやいな!」
と言って、オーブンの前に駆けつけてくださり、二人で、オーブンの中のピザを見つめて、わたしは、(早く七分経たないかなぁ)と思いながら、今度はあゆちゃんが作ってくれる、冷製パスタのミニトマトとバジルのカットをお手伝いしました。
このパスタは、以前も、あゆちゃんが作ってくれたのですが、本当にミニトマトの甘さや酸味、バジルの爽やかな香りと塩が良く合っていて、とってもおいしいのです。
今回はピザだけだったはずなのですが、前日にりゅうさんが、あゆちゃんにパスタもお願いしてくれて、あゆちゃんが作ってくれることになり、心の中で、(りゅうさん、ありがとうございます)と思いながら、あゆちゃんにも感謝しました。
大なべで茹で上がった大量のパスタ麺を水で締めるときは、まるで灼熱のキッチンといった様子で、水と氷とお湯と湯気と、大量のパスタが、目の前で一瞬にして処理され、あゆちゃんが冷たくなったパスタに調味料を合えた、具のないパスタ麺だけを味見させてくれたのですが、麺だけでも、さっぱりとしていて美味しく、驚いたし、これにバジルとミニトマトが入ってもっと美味しくなるんだと思うと、期待でワクワクしました。
パスタのお手伝いをしていると、今度はりゅうさんが、「焼けたで!」とおっきな声で、待ってましたとばかりに教えてくれました。
ミトンを付けて、オーブンからピザを出すと、フワーッと焼けた香ばしい香りと、生地の甘い香りが合わさって、幸せな香りが鼻を通りました。
オーブンから出てきたピザを見てみると、みんなと苦戦しながら作った耳が、どれもちゃんと活きて、ふっくら膨れていて、本当に耳がつくれるんだ、と嬉しい驚きでした。
■あゆちゃんの特製パスタ
マルゲリータは、トマトソースの赤に、チーズの黄色がとっても元気の出る色で、ナスとトマトのソースで作ったピザは、ナスもチーズもたっぷり盛られているし、見た目からして絶対に美味しいだろうと確信が持てました。
配膳に来てくれたみんなと、りゅうさんといっしょに、「アチチ!」と言いながら、包丁でピザを切ると、チーズがビヨーンと包丁にくっついて伸びていて、みんながこれを見たら、わたしと同じように、早く食べたいなぁと思うだろうなと思いました。
切られたピザとパスタは台車に乗って食堂へ向かい、お皿に盛りつけられます。大きなお皿にはパスタ、小さなお皿には四分の一のピザが二枚乗ります。
盛り付けはとっても大事な工程の一つで、美しく盛れば、そのぶん食べる人の気持ちも上がるし、期待が高まります。
パスタはくるっと円を描くように盛って、真ん中にくぼみをつけ、その真ん中に、あゆちゃん特製の、ミニトマトとバジルをオリーブオイルと塩コショウで和えた具材をのせると、本当にレストランで見かけるような、とってもおしゃれなパスタが出来上がっていて、なんといっても、ミニトマトの赤や黄色、バジルの緑がパスタの上でキラキラ輝いていて、何て素敵なんだろうと、飛び跳ねたくなるほどでした。
ピザも綺麗に二枚を重ねて盛り付け、細長いグラスにはビタミンC水とアイスロックを入れて、キンキンにします。
これで、テーブルの準備は完ぺき!
お昼御飯ができたという放送をきいて、みんなが今日限定のレストラン「なのはなイタリアーノ」に入ってきます。
テーブルの上を見た瞬間、みんなの顔がぱっと笑顔で輝くのを見ると、もう、とーっても嬉しい気持ちになりました。
なのはなイタリアーノをやりたいなぁと、りゅうさんへ、よしみちゃんとラブレターを書いたのが始まりでした。
りゅうさんは、「窯から作らなあかん」と言って、そこから、レシピや段取り、お父さんお母さん、河上さんとの交渉、全てをこなして、実現してくれて、わたしは、黒板を飾ったり、ミニトマトとバジルをとってきたりということしか出来なかったけれど、りゅうさんと一緒に、みんなに楽しい気持ちを届けるんだ! と思って過ごした二日間は、特別楽しかったです。
りゅうさんは毎週なのはなに来るたびに、とってもおいしい料理を作ってくれます。みんな食べて、幸せになったらなと思って作ってくれます。
そんなりゅうさんの利他心一杯の料理が、本当においしいし、今回は、わたしも作る側になって、りゅうさんの気持ちを一緒に体験させてもらえたことが、とっても嬉しかったし、りゅうさんがいつも元気なのは、みんなのこと を想っているからなんだなと思うと、わたしもこの二日間だけじゃなくて、毎日、みんなのためを思って過ごしていきたいと思いました。
優しさや思いやり、そして隠し味の利他心たっぷりのスペシャルメニューが、とっても嬉しかったです。