「問題の海に深く潜って」 のん

8月5日

 

○試験

 昨日、税理士試験のうちの事業税の試験を受けてきました。これで4科目目の受験になります。事業税は税理士試験のなかでも受験者数が1番少ない科目です。多い科目の10の1くらいの人数です。私が受けた香川県の会場では、9人の受験番号が座席の表に記載されていて、うち、実際に来ていたのは私を含め5人した。

 

 去年、一昨年は1階の大ホールでの試験だったのですが、今年は2階の小会議室でした。会場内の見取り図で見てもびっくりするくらい大ホールと違っていて、実際に入ってみると6年生教室の方が広いかもしれないくらいの部屋で、ちょっと落ち着きました。

 試験は午後3時から5時。午前は近くの図書館で勉強して、お昼を食べてからは会場となったサンメッセ香川のロビーのようなところで勉強していました。もうこの理論を見るのは最後かもしれない、と思うとちょっと切ない気持ちになって、なかなか覚えられず苦戦した理論にも愛着が湧いていたことを感じました。
 また、同時に緊張も感じました。時計を見る度、あと2時間、1時間、とそのときが迫ってくる感じがしました。コンサートの幕開けが近づいてくるようなどきどきした気持ちになりました。
 2時25分に試験を受ける部屋が開場されて、部屋に入ります。私は上手の最前列の席でした。席の都合で長机を1人もしくは2人で使うようになっていたのですが、ラッキーなことに私は1人で1台使うことができました。

 携帯の電源を切って、リュックに入っているストップウォッチなどが鳴らないかを確認します。開始15分前から試験の説明が始まります。答案用紙が配られて、受験地や受験番号を記入していきます。

 

 過去の問題からすると、理論も計算も10枚ずつくらいが平均的、という感じで、記入しながらそれと照らし合わせて問題やかける時間を予測します。

 理論は9枚。妥当です。ところが計算は14枚。中くらいのボリュームの問題2問か、と思いきや、第1問10枚、第2問4枚。第1問は、多分鉄軌道事業か、電気供給業。4枚ってなんだろう。保険業かな。第1問は間違いなくかなり時間が取られることになる。理論は3枚ずつ3問。そんなに大きな問題はない。そんなことを考えながら記入をしていきます。
 そして記入も説明も終わり、前の試験官の人たちが座るテーブルに置かれた、この部屋の試験時刻を計る時計が、15:00:00になるのを待ちました。緊張と興奮とわくわく感で胸がいっぱいになりました。
 10秒前のカウントダウンを心の中でして、5秒前くらいからは時計から目を離して、問題用紙などに意識を向けます。

 

『5、4、3、2、1…』

 

 開始の合図が告げられました。問題をめくると、まず理論。第1問は個人事業税について。2問あるうちの1問目は特別の定め。2問目は各種控除。難しい理論でも、苦手な理論でもない。でも、特別の定めでぱっと思いつくのは解答用紙3枚分もない。
 そう思って2問目の各種控除から書き始めました。書き始めると、万年筆のインクが思ったより滲んだので、見出しだけ書いて、ボールペンに持ち替えました。

 各種控除はテキストでは2ページ分の内容。間違えずに書ききったら2枚で収まる。第1問の2問は45分以内に書き終えたい。淀みなく書ければ1枚10分で書ききれる。読んでくれ!という気持ちを込めて、解答用紙に勢いよく字を書き殴っていきます。

 書きながら、1問目の足りない部分に書くべきことを考えます。事業専従者のことを詳しく書けばいいのだと気付きました。20分程度で2問目を書き終えて、1問目に戻ります。1問目を書いている途中に、第2問の問題に「延滞金」という文字が見え、もしかして参考程度にしか書いてなかった理論かも、と思い、ちょっと心がつぶれかけます。

 でも、それならなおさら書けるところで稼ぐしかない、と思って、書いていきます。ほぼ間違いなく覚えている理論で、逆に計算に明らかに時間が取られることが分かっている状態で、どこまで書くかに悩みました。つい書けるので書きたくなってしまうのですが、おそらく全部書いている時間はない。当初思っていた45分で書ききれるところまで書いて、第2問はいつも通り後に回して、一旦計算に取りかかりました。

 計算1問目は、やはり電気供給業で、発電事業でした。しかも、製造業と併せて行っていて、かつ、外形対象法人。そんな恐ろしいボリュームの問題やったことあったかな、というくらい、てんこ盛りの問題でした。
 時間がかかる上に、転記と電卓を叩く計算が多くなるので、ミスが出やすいです。問題自体はそんなに難しくなかったのですが、1か所、分割基準で、総固定資産の価額が、電気供給業のものと、製造業のものと、法人全体の資料が与えられていて、分かりませんでした。
 法人全体で解き進めました。違っていたら、そのあとの計算は全部間違ったことになります。事業税の怖いところは、1カ所の間違いがめちゃくちゃ響くところです。この判断が吉と出たか凶と出たか、まだ知りません。45分くらいかかりました。

 

 計算2問目は、特定内国法人の問題でした。分割の計算は大変ではない問題だったのですが、課税標準である所得を求めるのが難しい問題でした。外国の事業に帰属する所得の金額は明記されているし、外国税額の全体も、損金に算入された外国税額も分かっているのに、外国の事業に帰属する所得に対して課された外国税額のうち、損金算入された額が分からない、という問題で、どうするの!?と思いました。
 残り時間もないし、理論に戻りました。参考程度にしか見てない理論かも、と思っていたけれど、そんなことはなく、出るかもと思っていた理論で、書けるのに、書けないだろうと思っていたので時間をあまり残してない!という状態になりました。聞かれていることに最低限答えることができるように、書くべき場所を絞って書きました。
 最低限書いて、余った時間は1分弱。計算に戻って、頭を切り換えた瞬間、そういえばこんな問題どこかでやったかも、損金算入分の内訳分かってなかったら外国の事業に帰属する所得に対して課された方に優先して損金算入分割り振っていいんじゃなかったっけ…と思って数字を見て書き始めたところで試験終了となりました。しかもその数字間違ったところから持って来た気がするなーと思いながら、ペンを離しました。

 

 2時間、問題の海に深く潜って、集中して、やり切った、と思いました。たまらなく楽しかったです。1年間のどのときよりも、どの問題よりも、コンサートの本番でお客さんがいてくれると一番緊張も興奮もするように、緊張したけど、楽しくて、気持ちよかったです。あとは試験の神様にお任せします。

 

 帰りはずーっとぼーっとして、何もせずに景色を見て、ぼんやり何かを考えたり、考えなかったりしながら帰ってきました。津山駅に着くとなおちゃんが迎えに来てくれていました。帰って来たんだ、と思いました。

 帰りの車では、2日間であったことを話しながら帰って来て、徐々に気持ちが戻ってきました。古吉野に帰って来たら、会う人みんなが「おかえり!」と笑顔で言ってくれました。「遊べるね!」と声をかけてくれました。お父さんがこんなこと言ってたよ、とみんなが教えてくれました。

 ここからたくさん遊んで、作業して、ちゃんと気持ちを作り直して、また、最後の1科目に向かいたいと思います。税理士にならなくてもいいや、と辛くなると思ったりもするけれど、なおちゃんが出発前にくれた手紙に、「なのはなや、新しくつくっていく税理士事務所を想うとき、のんちゃんの存在が私の希望です。」と書いてくれてあるのを見て、そう思ってくれる人がいることが、私を導いてくれる希望の光だと想いました。まだ私は頑張れる、と思いました。

 そう思ってくれる気持ちに応えるためにも、私はこの1年で、人間としての力をちゃんと身につけて、ちゃんと生きられるようになります。大分時間がかかっていますが、もうしばらくお付き合いください。とりあえず、1年間、本当にありがとうございました。そしてこれからの1年、どうぞよろしくお願いします。