なのはなファミリーで見られる花――第52回『紫陽花』

◇なのはなファミリーで見られる花◇
〈第52
回〉
『紫陽花(あじさい)』

 

思春期に入った少女は毎日、母とぶつかっていた
  傷心の少女に伯母は使い古しの油絵の具セットを渡した

 庭の紫陽花に少女は心を寄せ、
   ありあわせの板に初めての油絵の具で紫陽花を描いてみた
       描き上げるとその絵のことは忘れてしまった

 

それからも母との衝突は続いた
  少女は家を出て、結婚し、子供を2人もうけたが、
    実家に帰省する度に母とは折り合いの悪さを感じた

 

 やがて離婚し、再婚すると、
        母の怒りは極限に達し、
      二度と家の敷居をまたぐなと娘に絶縁を言い渡した

 

不幸の報せを聞いて、娘は禁じられてきた家の玄関に入った
   玄関の壁に1枚の絵が飾られていた
         あの日、板に描いた紫陽花

 

 

   母は奔放な娘を案じつづけ、
       娘を思う気持ちから衝突の連続だった
    玄関に誇らしく飾られた紫陽花に、
         娘はやっと母の気持ちを受け取ることができた

 

永い間、本当に永い間、
   母と娘は、互いに深い想いを抱きながら、
             厳しく律しあって生き続けた

 

    その2人の間にそっと沿い続けてきた紫陽花
         青の紫陽花の花言葉は「辛抱強い愛情」
                 白の紫陽花の花言葉は「寛容」

 
写真:さとみ
文:たけひと
撮影場所:体育館東側花壇