【6月号⑮】「夜の桃畑を巡る、桃の霜対策」どれみ

 日中二十度を超える日も出てきて、夜間も暖かい気候が続く中、「今年は、霜対策をする機会はないのかな?」と摘果に行く道中で話していました。そんなとき、ダークマターが私たちに出会いをくれました。
  
  
 山小屋キャンプを明日に控えた日、勝央町に霜注意報が出ていました。
 
 夕方、作業を終えた人の手で、霜対策の準備が急ピッチで行われました。百三本の桃の木たち、霜対策に使う缶も二百缶以上を準備して、各畑に置いていきました。

(大丈夫かな、桃の実が守られたらいいな)
 そんな思いがありました。

 夕食後、当番などに分かれていると、あゆちゃんの放送がありました。

「ちょっと寝不足になってもいいよっていう人がいたら、桃の霜対策に行きたいので、図書室の前に集まってもらえると嬉しいです」

 その声を待ってました、と思うメンバーが続々と集まってきました。図書室前で円になって話している、あゆちゃんやあんなちゃんたちに私も合流。

 集まりだしたときは十人ほどで、使う道具、回る順序などを確認していると、放送を聞きつけたメンバーが、ひとり、ふたりと増えていきました。

 メンバーもあゆちゃん、あんなちゃん、りゅうさんとお仕事組さんもいてくれて約二十人ほど集まり、今回、あゆちゃんとあんなちゃんチームでわかれて桃畑を回ることになりました。

 はじめは両チームが開墾二十六アール、十七アールでスタートして、そこから二チームで分かれて、また開墾二十六アール、十七アールで合流することになりました。私はあんなちゃんチームで、分かれた後は新桃畑、池上畑、奥桃畑を回りました。

 その日の夜は、いつもの霜対策と同じく、音楽室に布団を敷き寝ました。緊張を胸に抱いて寝ていました。夜の時点で、あんなちゃんが、このままいくと三時半頃に零度になるかなと話してくれて、その頃に連絡を取り合い出発する予定となり、そのときを待つように眠りについていました。
  
 
 午前三時半、「これから行きます」の声で準備をして玄関下に集まって、開墾26アールへと出発しました。霜対策に行くと、月明かりの変化も感じます。

 私は月の満ち欠けで夜間の明かりが違っていることを、霜対策に行かせてもらう中で強く実感しました。今回は新月に近い月で、薄い月明かりの中での霜対策でした。少し足下が見えにくいので、畑の移動で畦を走るときは足下注意でした。

 開墾二十六アールで点火。ふわっと火が燃え上がったとき、何かに包まれる気持ちになります。開墾の畑に広がった炎の光、また会えたねと再会の喜びを共有していました。

 今回これまでの霜対策と違って畑を二チームに分けて回ったことで、畑を回る一クールが短く、安心して回ることができました。

 私たちが新桃畑、池上桃畑、奥桃畑を回って開墾畑に戻るとき、もう一チームはどうかな、順調に回れているかなと話していると、ちょうど古畑の見回りを終えたメンバーの車が、野畑の前の道を上っていくのが見えて、タイミングもちょうど一緒に回れていることがわかり、あゆちゃんとあんなちゃんの立てたプランも良かったんだな、と嬉しい気持ちになりました。

 霜対策を進める中、二チームに分かれたことで、これまでより回転が速く、一斗缶の中の燃焼資材をかき混ぜすぎると日の出まで火が持たなくなるので、混ぜるときは混ぜすぎないことも大切、そういうこともあんなちゃんから教えてもらいました。

 火が消えていたら、他の一斗缶から火を持ってきてつけること、それでもつかないときは資材を少し足しながら回りました。

■霜対策の炎の光

 池上桃畑で、

「日の出は六時くらいかな」
「あともう少し持ってくれるかな」

 と話していると、りゅうさんが、

「日の出五時過ぎやで、もうすぐやで」

 と話してくれて、よかった、あと一周したら大丈夫だね、とみんなで安心した気持ちと、最後まで桃の実を守り抜こうという気持ちを共有して向かっていました。

 開墾二十六アールで二チーム合流。もう大丈夫だね、とホッとしました。最後にみんなで石生の桃畑に行きました。これまでの時間、ずっと走っていました。

 石生の桃畑に着くと、ゆっくりと時間が流れている感じがしました。缶の中の火を見て、桃の木を見て、桃の実を見て、地面を見て、そしてみんなを見て笑い合っていました。石生でみんなで日の出を待っていました。ただ桃の木のそばで待っていました。笑っていました。そんな時間が尊いと感じました。

「あっ、出てきた、出てきた」
 と太陽が明るい光を放って昇ってくる喜びを、みんなと共有していました。日の出の光の眩しさって、こんなに強いものだったんだと感じた瞬間でした。
 
  
(終わったね、よかったね)という気持ちとともに撮った記念写真。霜対策に向かった戦士たちの姿です。

 帰ってからは朝食まで仮眠をして、朝食後は缶の回収をして片付け、そしてみんなとの山小屋キャンプに向かった霜対策でした。

 今回はじめて霜対策にいくメンバーも、これまで行ったことのあるメンバーから、桃畑に点々と炎が灯り幻想的な風景の広がる、この霜対策の話を聞いていて、ぜひ行ってみたいと思っていたんだと話してくれました。

 実際に見て、本当に幻想的で素敵な光景だった、できてよかった、と話していました。私も、この霜対策の光景は忘れられず、ずっと残っているなと感じます。そして、みんなと霜対策に向かう時間は尊いものだと感じます。

 今年もダークマターは、桃畑で待っていてくれました。霜対策の炎の光には、桃の木への願いが込められていることを感じます。ダークマターが私たちに希望の炎を焚かせてくれました。