【6月号⑭】「桃の摘果、桃会議、休憩時間はミニゲーム」りな


 畑や田んぼも、夏に向かって動き始める中、なのはなの桃畑も、春から夏へ、季節が移り変わっています。

 春にピンク色の花を咲かせた桃の木は、五月になるともう花は散り、がくだけになります。春から夏の季節は、桃の手入れは次から次へとやってきて、花が散るとすぐに、摘果の作業に入りました。

 摘果は、二巡行って、最終着果数に絞ります。一巡目は『予備摘果』といって、最終着果数の二倍まで落としていきます。まだガクに守られて、桃の実が見えたり見えなかったりする時から、摘果は始まりました。

 あんなちゃんから、摘果の方法を詳しく教えてもらいました。予備摘果ではあるけれど、もう、この時点からどのぐらいの桃の実を生らせるのか、そのイメージを持つことが大切なのだと知りました。

 本摘果で残す実の間隔は、大体三十センチ間隔に一個です。その二倍なので、予備摘果では、十五センチに一個の間隔になるように実を落としました。
  

 花が散った後も、赤いガクが星形に広がっているのが、ヒトデのようで可愛いなあと思いました。

 中心にはめしべが残っていて、めしべの元を見ると、ほんの五ミリほどの小さな小さな桃の実が見えました。ふわふわした産毛に囲まれている桃の実が、親指姫のように可愛くて愛おしく感じました。

 これまでで、摘蕾を二巡していて、花を咲かせたものは絞られていました。しかし、摘果に入りさらに基準は厳しくなり、今付いている実の半分以上を一巡目で落としていきました。実には大小差が付いていて、よくよく見てみると、元の膨らみが一つひとつ違いました。

「小さい実は、受粉していなかったり、最後まで実が止まらないこともあるから、大きくて、綺麗な実を残してください」

 あんなちゃんが話してくれました。桃は果樹の中でも個体差ができやすい果物だと以前、教えてもらったことがありました。

 今、付いている一つひとつの桃の実を見て、この実なら、最後まで大きくなって甘い桃になってくれそうだなあと、大きくなったところをイメージしながら摘果していくのが楽しかったです。

 一つひとつの桃の実の大きさ、顔色を見て、対話しながら慎重に選択するのが、緊張するけれど、良い実を見つけられた時、とても嬉しい気持ちになりました。
  

 枝の良い位置につけることも重要なポイントの一つです。あまりにも枝先だと、枝がしなって勢いが弱くなります。

 かといって枝の元に近すぎると、実が大きくなった時に枝に挟まれて、傷が付きます。実がこのまま大きくなったことを想像して、枝の中で一番良い、真ん中の位置に実が付けられるように残します。良い位置に、良い実を付けられるように一本一本を丁寧に見て、摘果をしました。

 摘果を進めている間、桃の実も少しずつ膨らみ始めていました。ガクから見え隠れするような小さな実が、だんだんと、豆粒ぐらいの大きさになり、オッケーサインぐらいの大きさになってきました。

毎日毎日、少しずつ大きくなっている桃の実の成長をみんなと共有して、作業に向かいました。

 休憩時間は、桃畑でちょっとしたゲームをしました。池上桃畑で手押し相撲や山手線ゲームをしたり、開墾桃畑では「だるまさんが転んだ」をしました。
  

休憩時間には桃畑でだるまさんの1日

  
 みんなで桃の木の間の原っぱに座って桃会議をしている時間、桃畑の中で、思いっきり走って遊んでいる時間が、とても楽しかったです。桃の木に包まれながら、笑い合える時間が温かくて幸せだなあと感じました。

 二巡目は本摘果です。最終着果数に実を絞ります。一巡目で残した実の、さらに二分の一ほどにしていき、残る実は、摘蕾の時からするとほんの一部です。大きな実を落とすと、地面に実が落ちる音がしたり、脚立に当たると、「カン!」と大きな音がしました。

 大きな実を落とすことが少しもったいないような、可哀そうな気持ちにもなったけれど、桃の木一本に対して養える桃の実があって、その数に近づけることが、一番桃の木にとって優しいんだなあと思いました。

 桃の木一本に付けられる数よりも、多く残してしまうと、一つひとつの桃の実が小さく、糖度も乗らなくなります。

 けれど、反対に落としすぎると次は栄養が一つの桃に行き過ぎて種が割れてしまったり、良い桃に作れないのだと、あんなちゃんから教えてもらいました。

 その加減が難しいなあと思いました。けれど、慎重に慎重に、桃の木の全体のバランスを見て摘果をしていきました。
  
  
 葉百枚で、桃の実を一つ養うことが出来るんだとあんなちゃんが話してくれました。ただ三十センチ間隔に一個、ではなく、葉の数や、その枝の勢いを見て、残す実の数を決めました。

 迷ってしまっても、あんなちゃんが丁寧に教えてくれました。その品種によっても、本摘果で残す量は違ったけれど、だんだんと決断できる引き出しが増えていくようでした。

「満開期から約四十五日後の、硬核期には、摘果を終わらせたいです」

 あんなちゃんが、摘果を始めた時から、そう話してくれていました。硬核期は、桃の木にとって、とても大切な妊婦さんのような時期です。

 桃の実の中にある種を形成する時期でもあります。この時期にたくさんの実を落としてしまったり、急な水分変動があると、種が割れてしまったり、生理落下をしてしまうのだと、あんなちゃんが教えてくれました。硬核期までに摘果を終わらせたい!

 みんなと目標を一つに、質を高く、でもスピードも意識しながら集中して摘果した時間が、とても濃い時間でした。

■夏の香り
  
 あんなちゃんが時々、摘果した桃の実を剪定ばさみで割って、みんなに見せてくれました。すると、種となる部分が白くなっていて、その中心に胚芽、と呼ばれるものが入っていました。摘果桃の小さな時から、桃のフルーティな夏の香りがしました。

 少しかじってみると、無意識に顔をしかめてしまうほど渋かったです。でも、渋さと甘さは紙一重なんだよ、そうあんなちゃんが話してくれました。渋みがあるから、その分、甘い桃になるんだなあと思いました。そう思うと、渋さも嬉しく感じました。

 目標としていた硬核期までに、本摘果を終わらせることが出来ました。これからは袋掛けの季節です。桃の木が、甘い桃にするために頑張っている間、私達も桃の木と同じように、袋掛けを頑張りたいなあと思いました。

 今、木に付いている実を大切に、収穫に繋げられるように、あんなちゃんやみんなと心を込めて、手入れをしていきたいです。