◇なのはなファミリーで見られる花◇
〈第51回〉
『矢車菊(ヤグルマギク)』
高らかにセレモニーのラッパを、
四方八方に吹き鳴らす青紫の花、花、花
野にあって、人の目を惹き付けるけれども、
容易にはそれ以上、人を寄せ付けない高貴な佇まい
それもそのはず、豊かで、華やかで、品格の高いこの小さな矢車菊は、
その昔、プロイセン国の傷ついた王子たちを支え続けた
今から200年以上も前のこと、
ナポレオン率いるフランス軍にプロイセン国が攻め込まれたとき、
幼い王子たちを引き連れ、ルイーズ王妃は難を逃れた
傷心の王子たちを慰め、励ましたのがこの矢車菊だった
ルイーズ王妃は矢車菊を摘んで王冠を作り、
王子達の頭に載せて、再起の日を誓った
やがて王子の1人ウルヘイム王子が初代ドイツの皇帝に就くと、
皇帝の紋章として選んだのは、不遇の時に志を支え続けてくれた矢車菊だった
それ以来、矢車菊はドイツの国花として、
いまに至るまで特別な存在感を放つ
矢車菊はいまも誰かを励ますために、
高らかに四方八方にラッパを吹き鳴らし続けているのだ
写真:さとみ
文:たけひと
撮影場所:ユーノス畑