「子供のころの自分に」 みつき

「ああ、キャンプが終わってしまったんだ」
 そう感じて、キャンプロスが起きてしまうくらい、今年のゴールデンウィークのキャンプが、とても充実した時間でした。

 キャンプの準備が始まって、あゆちゃんがスケジュールを教えてくれたとき、日ごとのイベントのラインナップやボリュームに、身体がうずうずしてくるのが分かりました。
 どの日も、なんて楽しそうなんだろう! と。

●ウォークラリーの実行委員

 わたしは、ゆりかちゃんチームのメンバーになりました。
 他のメンバーは、あんなちゃん、けいたろうさん、まなかちゃん、あきなちゃん。
 そして、やよいちゃんチームと合体して、山小屋ウォークラリーの実行委員を担当することになりました。

「わたしは小さいころ、カード集めがすごく好きだったんだ」
 やよいちゃんが、ちょっぴり照れくさそうに、そう教えてくれました。
 それを聞いて、わたし含めみんなも、「わかるよ~!」と、即座に共感してしまいました。
 自分だけではなかったんだなあと感じたし、とてもなつかしくて、うれしかったです。
 幼い頃の自分のときめきが、よみがえってきました。

 また、お父さんが、わたしたちの心を読んでいるかのような、とびっきり楽しいアイデアを出してくださいました。
「ターザンになって、木と木を移動するんだよ」
 それを聞いた瞬間、ビビビッと来て、またもや幼い頃の自分がここにいるように感じました。
 そんなときめきや、あこがれを実現するため、制作や準備を進めました。
 カード作りは、思いのほか時間がかかってしまい、当日の前夜まで作り続けていました。
「カードを大量生産するのは無理があったのかな」と、何度も申し訳ない気持ちが芽生えてきたけれど、メンバーのみんなの言葉を聞いていたら、そんな気持ちもスッと消えていきました。
「本当にかわいい! 絶対に宝物になるし、集めたくなっちゃうよ!」
 みんなに任せてもらえることが、喜んでもらえることがたまらなくうれしくて、今回このカード作りができて、本当に良かったです。

 ウォークラリー当日、おじいちゃんの山の中にできた、ターザン。
 みんながやって来るのを待っていると、ドキドキしました。
 みんなの足音が聞こえてきて、姿が見えました。こちらの姿が見えるなり、わたしたちよりも先に、みんなが「あ~ああ~!」と声をかけてくれました。
 ああ、大丈夫だ、みんな同じ気持ちなのだな、と感じました。自分もみんなも楽しもう、楽しませよう。その気持ちだけが浮き上がってきました。
「3,2,1 あ~ああ~!」この掛け声で、滑り出していきます。
 ちょっと悲鳴を上げている子、風と一体になって滑っていく子、最後には、みんなが笑顔で「すごく楽しかった!」と笑っていました。
 そして、「あ~ああ~! ありがとう!」と言いながら、帰っていってくれました。
「あ~ああ~」の合言葉が、みんなとわたしを繋いでいました。
 夢のアトラクションを実現できたことが、その瞬間に居られたことが、うれしかったです。

●チームのみんな

 今回のキャンプは、ずっとチームで固まって行動しました。
 わたしたちのドレスコードは黄色でした。誰が見ても「黄色チームだね」と納得できる、明るくてまぶしい黄色に包まれたみんなが、服の色も気持ちも揃えることができたようでした。
 料理の鉄人や新聞紙ファッションショーのアイデアについて、チームのメンバーが一人でも居たら、そのことを話し合いました。
 すると、気が付いたら、黄色の服を着た全員が集まってきていました。何も言わずとも、スッと集まれるこの関係が、あたたかかったです。
 誰かが言う言葉も、返ってくる言葉も、どれもいつもやさしくて、悩んだときであっても、この時間がすごく好きでした。

 料理の鉄人では、「本当に料理ができるのかな」という不安が半分、「みんなと一緒ならできるだろう」という自信が半分でした。
 ゆりかちゃんが声掛けとオールラウンドに動いてくれました。あんなちゃんが、「火起こしなら得意かも」と、まなかちゃんとあきなちゃんが、「料理、好きなんだ」と言ってくれました。けいたろうさんが重い鍋を持つのをスッと代わってくれました。
 もちろん、火がなかなか通らなかったり、味付けだったり、すべて思い通りに進んだわけではありません。
 みんなが、「美味しい料理が出来る」と信じていたから、本当に作ることができました。
 トマト煮込みとコーンライスを食べた時、心も身体もほっとしました。

 このチームは、決してみんなが同じキャラクターではないけれど、でもお互いに気遣い、思い合っている心が、同じなのだろうなと思いました。

●初めてのこと

 夜に、初めて山小屋のテントの中で眠りました。
 みんなとテントに入って、寝袋に足を入れてみると、その今までにない感覚にびっくりしました。
 すっぽりと身体が包まれて、みのむしになる自分。そして隣にも、みのむしのみんなが並んでいる。なんだか面白くて、ほっとしました。
 鳥や虫の鳴き声が頭のすぐ上で聞こえたり、誰かが歩く音がすぐ近くで聞こえたり、自分が自然の中のひとつになったようでした。
 ランタンの灯りを消したとき、真っ暗闇になった空間が、ものすごく不思議でした。
 1日が終わった、この世にあるすべてのものが目を閉じて休んでいる、そんな静かな暗闇でした。

 朝になると、目を細めるくらいに明るい光を感じました。
 あちこちから動物の鳴き声が聞こえて、みなが目を覚まして、新たな1日が始まる、そんなエネルギーにあふれている気がしました。

「虫が出るでしょ」「狭くて居心地が悪いでしょ」
 テントの中で過ごす夜を知らなかった、教えてもらえなかった、今までのこと。
 子供に不便させない、その考えはやさしいようで、やさしくないです。
 テントを建てる、テントの中で寝袋で眠る、しば刈りをする、火をおこす。
 おじいちゃんの山が、自然の恵みを教えてくれました。
 お父さんお母さんが、非日常の中にある、面白さや楽しさを教えてくださいました。
 それが、本当に人間らしくて、1番やさしいです。

 また、その日の夜、初めて流れ星を見つけました。でも、そこまで喜びの感情は湧きませんでした。
 わたしは今、本当に幸せで、欲しかった居場所も仲間も感情も、ぜんぶ持っている、そう感じました。
 もう、星に願う必要もないのだと思うと、涙が出そうなくらい、うれしかったです。

●子供に戻るということ

 お母さんが、よく、「なのはなで子供に戻って、作り直すんだよ」と話してくださいます。
 今回のキャンプでは、子供のころの自分が帰ってきてくれたような喜びを、何度も感じました。
 ウォークラリーやナゾトキなど、様々なところで、子供のころのときめきや憧れを感じました。

 わたしは小さい頃からずっと、絵を描くことが好きでした。
 でも、そのことは誰にも言えませんでした。
 わたしより絵が上手な子はたくさんいて、劣るわたしが絵を好きだということは、恥ずかしくて、こわくて、とても言えませんでした。
 絵を描くこと。それはわたしだけが知っている、わたしだけの楽しみで、ささやかなものでした。
 わたしは走ることも好きでした。
 でも、絵を描くことと同じ理由から、走ることが好きだとは言えませんでした。

 半ばおそるおそる、「これ、わたし出来ます」と言うと、
「みつきちゃんにお願いするね!」「みつきちゃん頼りにしてるよ!」と、チームのみんなが声をかけてくれました。
 そのとき、衝撃を感じました。
「これが得意です」と言ったら、誰かが喜んでくれる、誰かの役に立てる。
 それが当然のようにはなのはなにあるけれど、本当にお互いさまなのだと、改めて気づかされました。

 自分の身体が自分だけのものではなくて、みんなのためにあるのだと感じました。みんなのために自分の身体が使えることが、生きる理由と言ってもいいくらいの喜びを感じました。
 自分の周りに居る人たち誰もがそうであるのだと思うと、役目がない人も傷ついていい人もこの世にはいなくて、やさしくありたい、と感じました。

 なのはなのみんなが、大大大好きだという気持ちが深まって、この大大大好きなみんなと、またここから一緒に生活できることが、本当にしあわせです。

 また、大切な思い出が増えました。
 子供のころの自分に、今、楽しいよ、わたしはしあわせだよ、そう伝えることができました。