「きっと誰かの力に」 なる

 山小屋で、古吉野で、たくさん、たくさん遊びました。
 一人ひとりがゲームの実行委員になり、みんなが楽しめるように企画しました。山小屋ウォークラリー、吹き矢大会、自分たちで火をおこし夕食を作る料理の鉄人、新聞紙ファッションショー、夜もお父さんお母さんのライブやセブンブリッジ大会、みんなのライブがありました。交代で湯郷温泉にも行きました。

 ゲームの時はもちろん、何もない時間も遊びのようで、今が遊びの時間、今がキャンプという境界線がなく、ずっと遊んでいるような、ずっとわくわくしているような気持ちでした。お父さんとりゅうさんがお昼の天ぷらを揚げているまわりで薪を集めたり、ウォークラリーから帰ってから山菜を摘んだり、実行委員をするゲームの寸劇を練習したり。何をしても遊びのようで楽しかったです。

 チームのみんなとキャンプの前から一緒にいて本当に家族のようでした。ゲームを考えたり、テントを張ったり、テントに泊まったり、ゲームを戦って喜んだり、温泉にも一緒に行って、まえちゃん、まりのちゃん、つきちゃん、さやちゃん、まおちゃんといられる時間が嬉しかったです。

 キャンプのテーマは「サバイバル」。 
 薪を自分たちで集めて、火起こしをたくさんできたことが嬉しかったです。自分で火をおこせる、と思えるだけで生きる力がついたようでとても嬉しいです。
 薪を集める、と聞いたことはあっても、実際に火をおこしたり、ライブの間、火を燃やし続けるとなると、思っていた以上に薪を使うんだなと思いました。冬だったらもっと薪を使うだろうし、そうなると薪を集めることが一つの仕事になるんだと思いました。
 お母さんが、火をおこしたら夜気を払うことができるんだと教えてくれて、ライブの間に火を燃やし続けたり、夜にテントの近くにも火を持ってきてくれました。

 1日目の夜は、山小屋の山にテントを張って泊まりました。
 私たちのチームはテントサイトの一番奥の場所でした。山から獣が来たら私たちがみんなを守らないといけないね、とチームのみんなと話して笑いましたが、山小屋から歩いて上がっていくと、けっこう山の中に入るように感じて少し緊張もしました。
 テントを張って中に入るととても広くて、寝るときは隣の人と間ができるんじゃないかと思ったけれど、夜になって寝袋を広げてみると、さやちゃん、つきちゃん、まおちゃん、まりのちゃん、まえちゃん、私の6人で、ぎゅうぎゅうでした。

 寝袋に入って横になって話をしました。まおちゃんが読んでいる本の話、明後日の新聞紙ファッションショーの話、まえちゃんが心理テストを出してくれたり。少し疲れた身体と、キャンプが始まって高まる気持ちと、今夜テントで寝る緊張感と、そんな気持ちが入り交じって、家族のみんなと話したり笑ったりしていると、心の深いところが満たされていくようでした。ずっと求めていた家族のなかで安心できる時間、空気に、私のなかの幼い心が喜んで入るようでした。

 ランタンの灯りを消すと、真っ暗でした。どこが上でどこが下かわからなくて、宇宙の無重力空間にいるような感覚でしたが、不思議と怖くなくて、穏やかな空気に身を委ねるように、地面に吸い込まれるように眠りについていました。

 一番印象に残っているのは、吹き矢です。
 前日にくじを引いてチームの場所を決めたとき、山小屋に近いほうが風の影響を受けないと思って、一番山小屋側を選びました。みんなの反応は予想外に良くなくて、吹きにくいんじゃないの? と言われてしまいました。
 試合には、チームにひでゆきさんとあゆみちゃんが入ってくれて、ひでゆきさんはど真ん中に当たっていてすごかったです。
 リーダーのまえちゃんも、名人戦でお父さんと決勝を戦い、3回目に見事風船を割ったときはチームのみんなで飛び上がって喜びました。

 私は右目と左目を交互に閉じたり開いたりしてねらいを定めて吹いていましたが、なかなか安定しませんでした。それをまえちゃんに言うと、「テキトーにやったらいいじゃない?」と言われて、「えっ」と驚きましたが、次の回(それが最後の回でした)にテキトーに吹くと見事に風船の真ん中に刺さって風船が割れました。それがバナナが割れた回の後半戦だったので合わせて高得点になって、本当に嬉しかったです。
 頭で考えるより勘で狙うと、お父さんが言うように刺さる前にまっすぐ飛んだ感覚がありました。サバイバルのテーマのときに、勘の大切さを感じて、頭でっかちになっていたなと気付くことができてよかったです。

 私はあゆちゃん、まえちゃんチーム合同で、今回初めての企画「料理の鉄人」の実行委員をしました。
 料理の鉄人をしている会場はすごい熱気でした。火の熱さもあるけれど、それ以上にチームが一丸となって勢いがあったし、一人ひとりみんなが動いていて楽しそうでした。
 お鍋でご飯を炊けたことが小さな自信になりました。湯気や香りで炊き具合を感じながらお鍋を見守り、炊けたときあゆちゃんがフタを取って、「わー、おいしそう」と喜んでくれて、味をつける予定を変更して白いご飯で頂きました。
 毎日スイッチを入れたら炊飯器が時間通りにご飯を炊きあげてくれて、それは便利だけど、そのために自分でできることを知る機会がなかったなと思います。
 ご飯をお鍋で炊いたことがほとんどなくて、炊飯器がなかったらどうやって炊くのか知らないということが、漠然と不安になっていたんだなと思いました。
 知っているということは、それだけで、自分を信じられる底力になるような気がしました。

 このキャンプは、スプリングコンサートをやり遂げたあとだからか、なにをしていても幸せを感じることができました。なにか役に立つこと、意味のあるものを求めて急かされるような気持ちが薄らいでいたから、楽しめたのだと思います。
 それとサバイバルというテーマで、自然を近くに意識することができました。サバイバルというと厳しいなかを自力で生き抜くというイメージもあったけれど、薪を集めて火をおこしたりテントで寝たりすると、自然にあるもので充分豊かに過ごせるんだなと感じました。

 便利な生活が当たり前にできるけれど、そのなかでも、どれくらい薪を使うのかとか、どれくらいの太さの薪が使いやすいかとか、ご飯が炊きあがる香りとか、今回学んだことが、なにかあっても大丈夫と自信になってくれるし、なにかあったときには、きっと誰かの力になれると思います。