「この楽しさを伝えられる人に」 るりこ

 本当に楽しくて、贅沢なゴールデンウィークでした。
 個人的には、今まででのなかでも1番楽しかったと感じられるくらい、充実した山小屋キャンプだったなと思います。

 

〈準備期間のこと〉
 山小屋キャンプの準備が始まったのは、ゴールデンウィークが始まる5日ほど前でした。あゆちゃんがチーム発表をしてくれて、それからそのチームで担当する遊びの発表もありました。
 今回、わたしは、ちさとちゃんチームで、ちさとちゃん、さきちゃん、せいこちゃん、のえちゃん、はるかちゃん、ゆかこちゃんと同じチームになり、遊びは吹き矢を担当することになりました。
 顔合わせをしたときから、チームの空気が明るくて、このメンバーとキャンプを過ごせると思うだけで、よりキャンプへの楽しみが増しました。

 その日から早速、吹き矢の準備を始めました。お父さんが大好きな吹き矢。お父さんがキャンプの遊びのなかでも1番に楽しみにしている吹き矢。お父さん、そしてみんなが楽しめる流れ、ルールにしようという意気込みのもと、まずは吹き矢の楽しさを左右する1番の鍵と言ってもよい、『矢』に重点を置きました。
 昨年の資料を参考にすると、前回担当だったれいこちゃんたちが反省や使った道具の収納などをとてもわかりやすく、そしてきれいにまとめて残してくれてあり、そのことにとても助けられました。昨年使用した道具の中から矢も出てきて、良い状態で保存されてあり、そのまま使えそうだということがわかりました。

 翌日に全部の矢を、実際に的を貼って、一投ずつ検証してみました。すると、8割ほどの矢が使えそうで、数えてみると130本近くあったため、今回新たに作る必要はなくなりました。
 キャンプ準備期間が限られていたため、矢を作る必要がなかったことは係としてはとてもありがたく、次の人が使えるように資料や道具を残すということの大切さを強く感じました。 

 矢の検証をした時間が印象に残っています。
 これまでわたしは吹き矢に苦手意識があって、あまり当たらなかったという記憶しかありませんでした。ですが今回、実行委員として、ちさとちゃん、さきちゃん、せいこちゃんの4人で150本近くある矢を1本ずつ検証することになり、約1時間で40投近くも吹かせてもらえることになりました。
 初めは7メートルで検証しました。
 的には当たるけど、何か力が入らない感じがあって、狙いを定めるのがやはり難しいと感じました。それから名人戦用の10メートルで試し打ちをしました。10メートルになるとやっぱり遠くて、腹筋に力を入れて、一度で思い切り息を吐き出して、ようやく的に届くレベル。
 その横で、力強く的に当たっているちさとちゃんやせいこちゃんを見ていたり、コツを聞いてみると、ちさとちゃんが、「筒を思い切りくわえた方がよい」と教えてくれました。実際にちさとちゃんが吹いている姿を横で見てみると、口の先だけじゃなく、口全体で筒を深く加えていて、隙間から息が漏れないようにぐっと唇に力を入れているようでした。

 ちさとちゃんと比べて、わたしは筒を口の先だけで浅く加えていたことに気がつき、だから筒の中に息が全部入っていく感覚がなくて、矢も弱々しくしか飛ばなかったのかもしれないと思いました。
 そこでちさとちゃんの真似をして、筒をしっかりくわえて、それから思い切り息を吐き出したら、これまでにない手応え、筒の中に息が全て入った、という感覚がありました。

 さらに普段はあまり体験したことのない10メートルで何本も吹いたからか、再び7メートルに挑戦してみると、7メートルがものすごく近く感じて、始めたときよりも的にバシッと刺さる打ち応えもありました。
 検証した時間のなかだけでも、自分の実力が少し上がったと感じられたことがとても嬉しくて、的に当たるようになっていくと、吹き矢って面白い! と、ようやくですが思うことができました。
 それはさきちゃんとかも同じだったようで、さきちゃんも検証中にかなり上手くなっていて、実際にウォークラリーの吹き矢もかなり好成績を収めていました。

 ルールを考えた時間も面白かったです。
 今回、新たに取り入れたことは2つあり、1つは的の中心に『緑』を作ってみたことです。これは、これまでの的の中心の黄色だと円の直径がわりと広くて、ど真ん中じゃなくても黄色の範囲に入れば高得点が入る、というところをさらに難しくしてみようということで、黄色の中にさらに小さい、直径1.5センチの『緑』の円を作り、本当にど真ん中じゃないと当たらない、しかも得点が30点という新ルールです。
 黒、青、赤、黄の4段階だった的に、新たに緑を作り足して、5段階の的を作るときは、作っている自分までどきどきしました。

 2つ目は、団体戦です。何か新しいルールはないか、と話し合ったときに、ちさとちゃんが、
「名人の子だけじゃなく、みんなにも風船を割る爽快感を体験してほしい!」
 という声から、名人戦だけじゃなく、団体戦にも風船を取り入れることになりました。
 しかも通常の風船だけじゃなく、のえちゃんが、「ヨーヨーを入れたらどうか」と言ってくれて、風船よりももっと小さいヨーヨーも混ぜたり、さらにバルーンアートで使われる細長い風船も使うことになりました。

 的の土台となる段ボールは、せいこちゃんやさきちゃんが丈夫に縛ってくれて、その上にみんなで南国をイメージしたイラストを描きました。そのイラスト、例えばヤシの木になっているヤシの実やマンゴー、バナナなどが風船に、そして真珠やウミガメの卵がヨーヨーになりました。お父さんが提案をしてくださって、イラストは絵の具ではなく、黒い線のみで描きましたが、コスト的にも時間的にもその方法はとてもよかったと思いました。

 準備は平日の半日や夜の時間しか取れず、出発日前夜、当日の朝までバタバタでした。それでも、そのなかで、さきちゃんがオープニングの寸劇を考えてくれたり、せいこちゃんがルール進行台本を作成して配ってくれたり、1人ひとりが自分ができることや任された役割を果たしていくことで、少しずつ形になっていきました。
 短い時間の中でも声を掛け合えば、気持ちよく連携が取れることを感じ、最後まで協力し合って準備を進められた時間も嬉しかったです。

 

〈1日目〉
 そして迎えた、山小屋キャンプ1日目。朝食後から積み込みが始まりましたが、吹き矢チームはその日もバタバタで、最後は何とか車に積み込みましたが、(本当に忘れ物はないかな……)と少し不安な気持ちも残るなか、いよいよ岩見田に向かって、車が動き出しました。

 出発してすぐの道中、ちさとちゃんがみんなに話をしてくれました。
「このメンバーでキャンプができるのは一度きりで、もうないんだよ。だから、いろいろあるかもしれないけれど、今はキャンプを思い切り楽しもう」
 出発が慌ただしかったり、畑やその他のことなど、出発直後はそれぞれの気持ちがばらばらになっていたのを、ちさとちゃんの言葉で空気を変えてくれたのを感じました。
 ちさとちゃんの言うとおりだと思いました。これからも山小屋キャンプはあるけれど、このメンバーで過ごせるのは一度きり。だからわたしも空気を作る1人として、自分のコンディションは横において、今しかない、もう二度とないこの時間、このメンバーと過ごす時間を大切に、みんなで思う存分楽しめる山小屋キャンプにしたいと思いました。

 ちさとちゃんがリーダーがいてくれてよかったです。ちさとちゃんがいつも誰も1人にしないでチームを引っ張ってくれたから、このメンバーはいついても居心地がよかったのだと感じます。

 山小屋前の駐車場に車を停め、両手に寝袋や荷物を抱えながら、坂を上がっていきました。山小屋の空気は、いつ来ても心が穏やかになって、盛男おじいちゃんが近くにいてくださるような気がしました。

 早速、チームに分かれて、今夜寝るテント張りから始まりました。
 わたしたちがテントを張る場所は少し斜面になっていたため、まずは木や枯れ葉を集めてきて、地面を整地し、それから実際にテントを組み立てていきました。
 わたしははるかちゃんと一緒にテントの組み立てをちさとちゃんから頼まれていたのですが、テント道具が入った袋の中を開けてみると、組み立て方の説明書が見当たりません。はるかちゃんと、「これは自力でやるしかない」となって、部品に貼ってあったポール名を見ながら、これは天井部分じゃないかとか、完成形をイメージをしながら組み立てていきました。どうしてもわからないところは他のチームに聞いたりしながら、徐々に土台が見えてきました。

 そしてようやく立ったテント。少し苦戦しましたが、自分たちなりに良いペースで組み立てられたと思いました。中に銀マットを敷くと、(あぁ、今夜はこの中にみんなで寝るんだな)と思うと、テントで寝るのは3度目の経験ですが、やっぱり何回しても嬉しくて、子供に戻った気持ちになるなと思いました。
 チームのテントが立ったあとは、他のチームのヘルプに回りました。一度、組み立て方がわかると、多少形が違っていても基本は同じなので、このキャンプでテント設営はしっかり自分に落とし込むことができたと感じます。
 各チーム、テントの大きさや形も異なっていて、特にあゆちゃんとりゅうさんが寝るテントは黄色で小さくて、小さい頃に好きだったキャンプの絵本に出てくるテントに似ていて、見ているだけでいいなと思ったりしました。

 昼食はテントの前でオープンサンドをいただき、午後からはいよいよ山小屋ウォークラリーです。
 わたしたちのチームには卒業生のちあきちゃんが入ってくれることになって、正規コースの第1陣として、出発しました。
 アトラクションは5つあり、その得点プラス、クイズ5問の得点。さらに2時間で帰ってくるという時間制限もあり、歩きながら、ペース配分を考えたりしました。

 コースの途中に設けられた5つのクイズが面白かったです。「石の重さは何グラム?」というクイズでは、1人ひとりが石を持ってみて、自分が予想した数値を一斉に言ったのですが、見事に全員がバラバラでした。5分くらい話し合って、ようやく全員の数値の間をとった答えを解答用紙に書きました。このクイズの答えが1番気になっていたのですが、なんと20グラムぐらいの誤差で(確か390グラムくらいだったのを、わたしたちは375グラムと回答しました)、これにはチームみんなで驚いてから喜びました。

 木の太さを答えるクイズでは、真っ先にさきちゃんが、「わたしの中指の先から、手の平の付け根までが17センチなんです!」と名乗り出てくれて、さきちゃんが木の外周を一回一回手の平を当てて数えてくれて、その数×17+余りを解答用紙に書きました。
 その答えは結果発表のときに、最も正解に近かった数値のチームとして1番になることができて、これもかなり嬉しかったです。
 他のクイズも全問正解だったのですが、問題を見つけるたびにみんなで真剣に悩んで話し合って、全員が納得する答えを導き出していった時間がとても楽しく、チームワークの良さを感じた時間でした。
 
 他のアトラクションもどれも楽しかったのですが、やっぱり1番印象に残ったのは、新ゲームの『アーアアー(ジップライン)』です。準備段階から、実行委員のみんなから、「夢が叶うアトラクション」と噂に聞いていて、下見のときに一足早く体験させていただきました。
 テレビなどで見たことはありましたが、キャンプ経験などほとんどなかったので、実際に自分が乗らせていただくのは初めてでした。乗り出しはちょっぴり怖いと感じたけれど、風を切っていく感じが気持ちよくて、さらに当日は須原さんが用意してくださったクイズもあって、気がついたら端に到達していました。

 盛男おじいちゃんの山の中にいると、木や竹の長さとか、木々の隙間から覗く空を見上げたりするだけで、ものすごく大きな世界に包み込まれているような感覚になりました。
 普段は感じることのできない自然が、盛男おじいちゃんの山にはたくさんあって、今回、より山を歩くことが楽しいな、好きだなと思いました。
 まだまだ山の中にいたい気持ちもあったけれど、制限時間が迫っていたため、最後は早足で帰りました。

 夜は山小屋前でBBQをしながら、お父さんお母さんのライブを聴かせていただきました。お父さんの弾き語りの中でも1番に好きな『大空と大地のなかで』から始まって、曲の合間にはキャンプや料理に関する質問にお父さんが答えてくださいました。
 今回は『とんぼ』が何だか心に染みてくるようで、次の機会にリクエストがあったら、またお父さんが歌う『とんぼ』が聴きたいです。
 ライブは少し早めに解散となり、その後は22時の消灯まで、ちさとちゃんチームのみんなと翌日に控える吹き矢の司会進行の確認をすることになりました。

 あゆちゃんがテントの前に火を起こしてくれてあり、その火を囲んで、みんなと過ごした時間がこれまでのキャンプにはないもので、これぞキャンプの夜の過ごし方なんだな、と感じました。
 吹き矢の司会進行の確認は全くできていなかったので、本当にこの時間はありがたく、一つひとつを細かく詰めていくことができました。気がついたら消灯5分前になっていて、山小屋のリビングにいたみんなが上がってきて、火の周りには人がたくさん集いました。
 
 テントに入りました。
 わたしたちのテントはそこまで大きいものではなかったのですが、ちさとちゃん、さきちゃん、せいこちゃん、はるかちゃん、のえちゃんとわたしの6人で寝ました。
 しかし寝袋に入って横になってみてびっくり。あまりの狭さに、両腕を身体に付けることができないほどです。手を前に出して、胸の前で組むしかできなくて、寝返りも打てないくらいに、隣のはるかちゃんとせいこちゃんの顔がすぐ目の前にありました。
 夜中はなかなか寝付けなかったのですが、みんなと密着していたら寒さも感じませんでした。
 朝は早くから目が覚め、テントの周りで鳥のさえずりが響き渡っていて、外が明るく、ものすごく気持ちがよい朝の目覚めでした。身体は縮こまっていたからか、肩周りや首が凝って痛かったのですが、気持ちは元気で、山小屋キャンプ2日目が始まることが本当に本当に嬉しかったです。

 

〈2日目〉
 テントから出ると、外の空気は少しひんやりしていました。坂を下って、山小屋前まで行くと、もうすでに何人かの人が起きていて、火に当たっていたりして、その静かな朝が、何だかいいなと感じました。
 一度、山小屋へ入って身支度を済ませると、吹き矢チームのみんなで午前に行われる吹き矢大会の準備にとりかかりました。的用の支柱の設置に手こずりました。

 朝食は、りゅうさんや台所チームのみんなが作ってくれた、ふわふわのフレンチトーストの朝食をいただきながら、テントで寝た感想をみんなで回しました。まえちゃんチームのテントは傾斜があって、まえちゃんとまりのちゃんがどんどん傾斜の方へ落ちていっていたこととか、他のテントもそれぞれエピソードがあったようで、みんなの話を聞きながら、その光景を思い浮かべるだけで面白くて、たくさん笑いました。
 改めて、テントで寝るという非日常な時間をみんなと味わえたことは自分にとって大きな宝物だと思いました。

 小さい頃、『はじめてのキャンプ』という絵本が大好きで、何度も何度も読み返しては、テントで寝てみたいな、キャンプに行ってみたいなと夢見ていました。でもわたしの両親はそういうことに全く関心がなかったので、キャンプに行ったことは一度もなく、だからわたしはダイニングテーブルの下にシーツを広げて、1人でキャンプごっこをして遊んでいました。ハンモックで寝るのも夢でした。

 なのはなに来て、キャンプがあると知り、初めてテントに眠った日、ハンモックに寝そべったとき、ずっとずっと夢見ていた小さい頃の夢が10年以上も経って、ようやく叶ったんだと嬉しくてたまらなかったです。
 その嬉しさと気持ちが上がる感じは、今も変わらなくて、今年も一緒でした。
 ずっとこの日が続いたらいいのに、と思ったのと同時に、将来、もし自分が親の立場になったとしたら、子供にこういう体験をいっぱいさせてあげられる親、受け取る側ではなく、自分の手で楽しさを作り出せることのできる遊びをたくさん教えて、一緒に共有できる親になりたいと思いました。

 2日目の午前は吹き矢大会が行われました。今回は吹き矢の実行委員として、みんなを楽しませられるようにしたいと思う気持ちから、緊張していました。
 オープニングの寸劇はさきちゃんが考えてくれました。予定ではさきちゃんとせいこちゃんが寸劇をするはずだったのですが、さきちゃんが渡してくれた台本にわたしの名前があって、それもスプリングコンサートのテニアン島のシーンをもじったものでした。コンサートではシリアスな場面だったけれど、吹き矢の寸劇ではそれが面白おかしく言葉が変えられていて、もう一度、「何か言い残すことはないか」と言える日がくるとは思ってもいないことでした。

 朝食前に初めて3人で寸劇の練習をしました(10分くらいですが)。そのときにせいこちゃんやさきちゃんが演技指導をしてくれて、せいこちゃんが伝えてくれたような動きや表情をすると、さらに面白みが溢れてきて、さすがせいこちゃんだなと思いました。
 知らない間に衣装まで準備して持ってきてくれていて、あのジャケットを羽織ると、一気に気持ちが、(やるぞ)というモードに切り替わったのを感じました。

 今回、吹き矢の実行委員をするなかで、係のみんなと、「全員が楽しめるために、1人ひとりが吹く回数を多くしたいね」と話していました。
 そこでノーマル戦は1人3投を3回戦回すことにして、さらに団体戦でも全員が必ず2投は打てるようにしました。
 ノーマル戦で取り入れた『緑』の的はどうかなと、実行委員のわたしたちもどきどきしていたのですが、初めはなかなか緑に当たる人はいませんでした。実行委員だけれど、お父さんが吹くたびに、心の中で、(お願い! 緑に当たって!)と応援していて、でも本当にギリギリで外れると、自分のことのように悔しかったです。

 さすがに緑は難しすぎたかなと思ったころ、とうとうかにちゃんが緑の的を当てました。その瞬間、その場からものすごい歓声が上がって、わたしも的まで見に行くと、的の真ん真ん中に矢がしっかりと刺さっていました。
 わたしは矢の回収係として、当たった矢のカウントや回収をしていましたが、お父さんやけいたろうさんの矢が的の段ボールに深くのめり込んでいて、軽い力で引っ張っただけでは抜けませんでした。他にもあんなちゃんなども結構取りづらくて、一矢一矢を回収しながら、みんなの肺活量や、「絶対に当てたい」という気持ちの強さを感じました。
 
 名人戦は、キャンプ準備でお父さんに確認しにいったときに、「10分くらいで終わらせる」というお父さんの言葉通り、本当にすぱすぱっと勝負が決まっていき、15分足らずで優勝が決まりました。
 やはり名人というだけあって、代表の子たちは本当に一発で風船を打ち当てていた姿が本当に格好良かったです。
 特に決勝戦のお父さん対まえちゃんの対決は、見ているわたしたちも心臓がばくばくで、手に汗握る名勝負で面白かったです。

 5分の休憩を挟んで、団体戦です。的に風船やヨーヨーを取り付けると、イメージしていたものが立体となり、思いがけず真珠が本物感が出たのが嬉しかったです。
 やっぱり面白かったのは、バナナです。なかなか当たらないバナナを、お母さんが、「バナナに当たったら300点はどう?」と言ってくださり、3回戦目からはバナナを300点に変更しました。すると、どのチームもバナナ狙いになり、しかも4人全員がフォーメーションのように列をつくって、集中的にバナナを打ち当てていく光景は面白くもあり、格好良くもありました。

 バナナはバルーンアート用の風船だったため、細長くて、何投もわずか2,3ミリくらいのズレで外れていましたが、とうとうお父さんとさやちゃんが割ったときは、実行委員としてもとてもとても嬉しかったです。
 お母さんの一声でゲームがより盛り上がり、わたしもこれからゲームを考えたりするときは、ちょっとした一工夫を取り入れられるように頭を使っていきたいと思いました。

 今回、吹き矢の実行委員をさせていただいて、例え自分がやる側じゃなくても、みんなが楽しむ姿、本気で試合に挑む姿を見ているだけで、こんなにも心が熱くなったり、嬉しくなったりするのだなと感じました。みんなの姿から、わたしも一緒にプレイしているような気持ちになり、そんなふうに楽しめている自分にも少し驚きがありました。
 誰かを楽しませたいと思う気持ちは、自分から離れることに繋がり、結果として自分も楽しめるのだと学べた機会でした。
 全てが良かったわけではないけれど、みんなが楽しかったと言ってくれて、これまでチームのみんなと試行錯誤しながら準備してきたものが無駄じゃなかったと感じました。
 もしまた吹き矢の実行委員をする機会があれば、今回学んだことを生かして、もっと楽しい吹き矢にしたい。そう思えたことで、自分の中に積み上げられたものがあるように感じています。

 吹き矢の実行委員を無事終え、ちょっと一安心した、わたしたち(ちさとちゃんチーム)。昼食を食べ終えたら、さきちゃんとせいこちゃんとはるかちゃんと再び山に入り、二度目の『アーアアー』をしに行きました。お父さんがさらに改善してくれてあり、よりスピードが上がって、より端まで滑るようになっていて、ちょっぴり絶叫度合いが増した『アーアアー』にまた笑いました。

 そして午後からは、今回のキャンプで初めての試みで、新ゲームの『料理の鉄人』が開かれました。これはなのはなのカレーの具材をもとに、そこから各チーム好きな材料を3つ足して、火起こしから自分たちの手で今夜の食材を作る、というものです。
 何を作るのかは、準備期間の内にチームで話し合い、決めてあって、わたしたちのチームはナポリタンとコンソメスープを作ることに決定しました。
 話し合いの段階でせいこちゃんが見つけてくれた、キャンプ中の人がナポリタンを作っている動画を見て、作り方をイメージトレーニングしたり、プラスする具材はさきちゃんがいたので、即決でピーマンに決まっていました。
 そこまで手の込んだ料理ではないけれど、麺が固まらないように茹でるのが難しそうだなと思っていました。

 山小屋前にドラム缶がセットされ、さらにお父さんとお母さんからのプレゼントということで、七輪がジャンケンで勝ったチームに配られました。
 時間のコールと共にゲームがスタートし、わたしたちは火を起こす人と野菜を切る人に分かれました。スペースや道具が限られているなかで、野菜を切る順番とか、切った野菜をどこに入れるのかなど、普段だったらあまり考えないことが、サバイバルとなると制限があるため、先を読まないといけない難しさがありました。また、袋一枚でもこういう場では貴重になり、簡単に捨てないで入れ物にするなどの工夫も必要でした。

 始まってすぐの段階から、普段いかに物がある生活を当たり前にしていたのか、ということを痛感しました。何でも手に入る、何でもすぐそばにあると思っていると頭も使わなくなって、平和ぼけしてしまうけれど、そうではいけなくて、お母さんが教えてくださるように自給自足がいつでも自分の手でできる知恵を身につけていかなければならないのだなと自分のこととして感じた機会になりました。(火の起こし方も同じく)

 個人的には料理経験がなくて、野菜を切ったりすることしか役に立てなかったけれど、のえちゃんが焦がすことなくフライパンで器用に野菜を炒め続けてくれて、のえちゃんの新しい一面を知ることもできました。また、はるかちゃんがパスタを茹でてくれました。

 最後にはのえちゃんが炒めてくれた野菜やウィンナーと、はるかちゃんが茹でてくれたパスタを混ぜ合わせて、ケチャップと中濃ソースで仕上げの味付けをして完成しました。ナポリタンにプラスして、ジャガイモとニンジンが入ったスープと、切りすぎてしまったコマツナとセロリを使ってカレー粉で味付けした炒め物も急遽加わった3品が出来上がりです。

 お皿に盛りつけしたら、お父さんの講評です。各チームが作った食材がずらっとテーブルに並べられ、本当にどれも手が込んであって、本当にみんなが作ったの!? と思うような完成度の高さに圧倒されました。りゅうさんチームのオムパスタや、ゆいちゃんチームのキーマカレーはボリューム-感があって、見た目も色鮮やかで、この時間でこれだけの品数を作れたことに驚きました。1番魅力を感じたのは、あゆちゃんチームのラザニアで、見るからに美味しそうでした。

 お父さんの講評を終えて、いよいよ実食。自分たちの手で作ったナポリタン、スープはどうだろうと、まずはコンソメスープを一口含んで驚きました。予想以上にコンソメの味が効いていて、とても優しい味がしました。「美味しい」と言う前に、隣にいたはるかちゃんが、「うまっ」と声を上げて、ゆかこちゃんもせいこちゃんも大きく頷いていました。

 続いてナポリタン。こちらは麺が茹で上がった状態のときは、若干、芯が残っていて固いかなという感じでしたが、食べてみたら全くそんなことなく、プリプリの食感がありました。ケチャップやソースの量が何度も味見をしているうちにわからなくなってしまっていたけれど、最後は程よい味付けになっていて、具材ともよくマッチしていたと思います。
 わたしも含め、料理経験者が少ないメンバーだったけれど、自分たちでは自画自賛してしまうほど満足できる味でした。あえて冒険しないで、シンプルな料理で攻めたのが正解だったのかなと思います。

 最初に『料理の鉄人』をやると聞いたときは、(本当にできるだろうか……? 食べられるものにならなかったらどうしよう)と不安の方が大きかったけれど、火を起こすところから始まって、火加減とか湯をわかすこととか、自分たちの手でもできることがわかり、終わったときはまた挑戦してみたいなと思う気持ちがありました。
 また、『料理の鉄人』を通して、チームのみんなと協力して料理をし、同じものを「美味しいね」といただけたことで、よりチームの絆が深まったようにも感じて嬉しかったです。

 その晩は鷺湯温泉に行かせていただきました。
 夜、布団に入るまで身体が芯から温まっているようで、また、明日を挟んで、2日後からまだまだゴールデンウィークが続くのだと思うと、ものすごく満たされた気持ちになりました。

 

〈3日目・みんなのライブ〉
 夜に有志でライブがありました。
 わたしは出演しなかったけれど、みんながステージで歌ったり演奏したりしている姿が本当に輝いていて、手拍子をしながら応援していると、ものすごく心が温かい気持ちになりました。
 特にみつきちゃん、まなかちゃん、あきなちゃんチームは、3人がこれまで一緒に過ごしてきた時間で築いてきたものが3人の間にあるのが見えて、あきなちゃんがものすごく伸び伸びと歌っている姿に目が離せませんでした。
 最後のインタビューのときにも、まなかちゃんもみつきちゃんもあきなちゃんも、自分のことじゃなくて、「3人で歌えて嬉しかった」と話していたことが印象的で、みんながみんなを思いやって、ステージを作っている姿が本当にきれいでした。

 

〈謎解きゲーム〉
 個人的にですが、今回の山小屋キャンプで1番楽しみにしていたのが、謎解きゲームでした。
 謎解きゲームは第1回のときにヒントマンをしたことがあるけれど、自分が解く側として遊ぶのは初めてで、最後の最後に謎解きが待っていたのがずっと楽しみでした。
 これまでの遊びの成績は奮わなくて、ちさとちゃんチームのみんなとは、「最後の謎解きこそは1位を目指そう」と意気込んでいました。さきちゃんもずっとヒントマンだったようで、お互いにヒントマンだった経験を生かして頑張ろう、とも話していました。

 オープニングがあってから、1枚目の問題が手渡されたときは、試験問題を解くときのように心臓がどきどきして、ここまで緊張しているのは自分だけかなと思うほどでした。
 あゆちゃんの合図で開くと、歩いている人の絵と缶詰の絵、その間に『VS』と書かれてありました。

「『VS』は「たい」と言うよね」
「缶……かん」
「たいかん……体育館?」
「ん~……行ってみる?」

 初回はこんな感じで曖昧なままに、とりあえず体育館に行ってみることになりました。すると、体育館に入ってすぐの台に、『ちさとちゃんチーム②』と書かれた用紙が貼られてありました。ヒントマンとして謎解きに参加していたときは、問題用紙を隠す側だったけれど、解く側として参加して、次の用紙を見つけられたときはこんなにも嬉しいのだなと、体験してみることでわかりました。

 2問目の答えは『郵便ポスト』。その答えがわかると、いちもくさんに走り出しました。こんなにダッシュしたのは久しぶりだと感じるくらい、とにかく走りました。いつの間にかまたこんなに体力が戻ってきているのだということも感じました。
 どうしてもわからないときには、ヒントマンに4回挑戦しました。卓球経験者のちさとちゃんとさきちゃんがいたので、1番最初はあゆちゃんとまえちゃんがいたブースの玉入れを選んだのですが、予想以上に難しくて、そこでかなり時間をロスしてしまいました。

 意外だなと思ったのは、自分のチーム以外にも周りに他のチームの子たちがいるのに、問題を解いたり、次の場所に走っているときは全く目に入らなかったということです。ほかのチームの子を見ていれば、答えがわかってしまいそうだけれど、そんなこと考えている余裕も、見ている余裕もないくらいに、とにかく目の前の問題を解いたり、走ったりすることに夢中で、ヒントマンをしていたときに気にしていた心配は無用だったのだなとわかりました。

 わたしたちのチームは、実は4番の問題を飛ばして、最後まで進んでいました。ようやくゴールの札を見つけたときは、ものすごくテンションが上がったけれど、やっぱり4番がないということになり、遡って、4番を探しに行きました。
 その最後の問題は答えが『ブルーベリー』だったのですが、ヒントマンにヒントをもらってもわからないくらいに難しくて、もし順番通りに辿り着いていたら、こんなにスムーズに最後までいかなかっただろうなとも思います。

 そしてようやくゴールを切りました。なんと思いがけず2位でした。
 1位にはなれなかったけれど、ちさとちゃんチームのみんなで、「わたしたち謎解きは苦手そうだね」と話していたこともあったので、2位という結果にはメンバー全員で驚きで、その分喜びも大きく、心の中では1位の気分でした。
 その日、チームメンバーのはるかちゃんは学校でいられなかったのですが、帰ってきてから結果を報告すると、「すごいね!」と自分たち以上に喜んでくれました。
 謎解きは期待通り、ものすごく面白かったです。またいつかの機会に挑戦したいなと思います。

 

〈キャンプを通して感じたこと〉
 今年の山小屋キャンプは、さらにパワーアップしていて、本当に特別なゴールデンウィークでした。
 今回、ちさとちゃんチームでさきちゃん、せいこちゃん、のえちゃん、ゆかこちゃん、はるかちゃんと一緒にチームにならせてもらって、メンバーのみんなにもたくさん気持ちを上げてもらって、ちさとちゃんチームで良かったと心から思います。

 ちさとちゃんがいつも誰も1人にしないで、優しい空気でまとめてくれて、吹き矢の実行委員ではちさとちゃんの緻密な仕事で無事成功に終わらせることができました。
 さきちゃんとせいこちゃんはユーモアでチームを明るくし、道中もテントの中でも、ゲーム中もたくさん笑わせてくれました。
 のえちゃんは『料理の鉄人』で新しい一面を披露してくれて、のえちゃんがいてくれたから焦げのない、具材と調味液が程よく混ざり合った、美味しいナポリタンをみんなでいただくことができました。
 ゆかこちゃんは、なかなか一緒に活動する時間を持てないなかだったけれど、吹き矢の準備をしてくれたり、当日は縁の下の力持ちでチームを支えてくれていました。
 はるかちゃんは誰よりも無邪気にゲームもキャンプも楽しんでいて、でもそのなかで自分の役割や立場とかを考えて、適切に手早く仕事をこなしていて、はるかちゃんの姿から、わたしもこうあらなければいけないなと学ばせてもらうことが何度もありました。

 山小屋キャンプの1日目に、車の中でちさとちゃんが話してくれたこと。
「このメンバーでキャンプができるのは、一度きり。本当に人1人の力は大きいんだよ」
 その言葉が、キャンプを終えて、より身に染みて感じました。本当にそうだったと思います。誰もが欠けてはいけない存在で、このメンバーだったからできたこと、作れたこと、感じられた気持ちがあったと思います。
 でも、それはちさとちゃんチームだけじゃなく、チームを超えて、今なのはなにいるみんなとだから作れたキャンプ、楽しむことができたキャンプだったのだと思いました。
 本当にこの期間、みんなのなかでたくさん笑ったし、心から楽しいなと思える瞬間が確かにあって、それは一度きりしかないもので、宝物だと思います。

 今回の山小屋キャンプを通して学んだこと、知恵、そして幸せだと感じた気持ちを、ちゃんと自分の中に落とし込んで、いつか自立して親の立場になったとき、子供にこの楽しさをしっかり伝えられる大人になりたいと思いました。そのためにもっと多くの力をつけていきたいです。