【5月号④】「舞台背景で表現する脚本の世界」りな

  
 スプリングコンサートがありました。開催は二年四か月ぶりで、コンサートをまだ経験したことのない、新しいメンバーとも一緒に迎えた、四月十日のコンサートでした。

 私は今回のコンサートで、舞台背景係に入らせてもらいました。舞台背景係に入ることは初めてで、とても緊張しました。

 でも、少しでも、舞台背景の制作の力になれることが嬉しくて、ワクワクしました。舞台背景係は、コンサートの内容にあった世界を、ステージの上で再現できるように大道具や小道具を作ります。そのため、コンサートの脚本が出来上がって、演劇練習が始まるころから、舞台背景も本格的に動き始めます。
     
 脚本が出来上がるまで、ステージの上で組むパイプの数を出したり、片付けていたところから出して、実際に体育館で組み立てることをしました。

 体育館の中で、パイプが組まれると、体育館が小さく感じるぐらい、とても組み立てられたステージが大きかったです。サイドには、十数段ある階段が設置されていて、ステージがとても高いところにありました。本番、このステージにバンドメンバーさんや、ボーカルのあゆちゃんが乗るんだなあと思うと、スケールの大きさにとても驚きました。
  
  
 お母さんやまえちゃんが、舞台背景の一案を、図に描いてくださりました。そこには、博士の研究室を連想させる黒板や、数式の模様が描かれていて、とても素敵だなあと思いました。そして、バンドメンバーさんのステージの頭上には、たくさんの星が散りばめられていて、中央には、三日月と、大きな流れ星がありました。

 流れ星は、青、水色、黄色の三色の、長い尾が付いていました。まえちゃんが、「流れ星を吊るんだ」と教えてくれました。大きな流れ星が、照明でピカピカ光っている中、物語が進んだらなんて綺麗なんだろうと、想像するだけで、嬉しい気持ちになりました。

 大道具の制作に取り掛かって、私は大道具の下地のペンキ塗りをさせてもらいました。ペンキ塗りは、思っていた以上にとても難しかったです。刷毛にどのぐらい水をつけるかでも色の濃淡が出来てしまったり、塗る回数や、刷毛につけたペンキの量などでも、色むらが出来てしまいました。

 近くで見ると、あまり分からないのに、何メートルか離れて遠くから見ると、どこが綺麗に濡れていて、どこがまだらになっているかが良くわかるぐらい、その色の濃さがはっきりとしていました。 

 コンサートのステージの上で、たくさんのお客さんが見るので、下地塗りでも責任重大でした。下地の時から、隅々まで綺麗でないと、良い舞台背景が作れないことを知りました。
  

大道具の制作は須原さんと大竹さんを中心に!

 

 歴代のコンサートで使われた舞台背景も、制作したたくさんの人の気持ちが詰まっているんだなあと、思いました。今回の舞台背景も、ストーリーや、役者のキャラクターの良さをより引き出すような、素敵なものにできたらいいなあと思いました。舞台背景はコンサートで伝えたい気持ちを表現する一つの手段なんだなあと思いました。

 コンサートはステージの上のことだけではなくて、たくさんの係が歯車のように何一つ欠けることなく噛み合って、初めて出来るんだなあと思いました。私も大きな流れの中の一つの部品として、係の作業ができることがとても嬉しかったし、コンサートだけではなく、この過程がとても大切なものになるんだろうなあと思いました。

■布の吊り込み

 ホール入り一日目、この日は照明係と舞台背景係で、ホールのステージをお借りして、吊り込み作業をしました。照明係のみんなが、照明の吊り込みをしている間、大道具や、パイプの搬入をしました。

 ホールに入ると、自然と気持ちが引き締まりました。一週間後には、ここでコンサートをしているんだなあと思うと、それまでの一日一日がとても貴重に感じました。
  
  
 まずは布の吊り込みをしました。ホールのステージの頭上には、いくつもの美術バトンがあって、ホールの方が、吊り込みが出来るように、バトンを手の届く位置まで下げて下さりました。

 紺色と、青色の布を吊りました。あらかじめ吊る位置に印がつけられた布と紐が用意されていて、その紐をバトンに取り付けるだけで、布をどこに吊ることになるかがすぐに分かりました。

 バトンが上がっていくと、布も一緒にどんどん上がっていきました。テグスで吊られているので、遠くから見ると、布が宙に浮いているように見えて、まるで魔法が掛かったかのようでした。
  
  
 客席のほうで、お父さんとお母さんがみてくださって、一番綺麗なように、何回も手直しをしました。手直しをするたびに、ホールの方が、バトンの上げ下げをしてくださって、とてもありがたくて嬉しかったです。

 紺色と青色の布が、ドレープを作って浮いている光景が、まるで宮殿のようでとても上品で綺麗だなあと思いました。この布を背景に、もう一つ前のバトンに、いよいよ流れ星を吊ります。

 流れ星の先端につける星は、須原さんやさくらちゃん、るりこちゃんが作ってくれたもので、とても大きかったです。星に黄色と青と水色の布が付いていて、図面に描かれていた通りの流れ星が、実寸大で作られていて本当に凄いなあと思いました。
  

影絵を使った演出も考えました

  
 バトンに吊ってみると、布と布の間があいてしまったり、星が重くて正面に向かなかったりとアクシデントもありました。でも、そのたびにお父さんお母さん、係のみんなと一緒に修正をしました。

 布を安全ピンでとめて間をあかないようにし、星は一点ではなく、二点で吊るようにしました。さらに、お父さんが布をバトン近くで絞ってくださると、本当に星が流れているように動きがついて見えて、実際に図面で見た流れ星がステージの上で再現出来ていることが、とても嬉しかったです。

 ステージの照明が紫になると、舞台に吊られた星がホログラムテープでキラキラと輝いて見えて、まるで夜空がステージいっぱいに広がっているようでした。立体的な星があるだけで、ステージがとても広く感じました。

 ホール入り前に大竹さんがなのはなに帰ってきてくださって、小道具の制作もしてくださりました。重厚感のある小道具が、舞台に置かれているだけで目を引いて、物語がより色鮮やかになるなあと思いました。大道具や小道具は、そんな役割があるんだなあと思いました。
  

大竹さんがデザインをしてくださった、キノコ雲の影絵です

  

 本番当日まで、最後の最後まで、より良いものにしよう、とみんなが役割を全うしていて、舞台背景でも、大竹さんや須原さんが制作を進めて下さっていました。どうしたら、目まぐるしく展開する物語に対応して、いつでもその世界を再現することが出来るのか、その工夫がたくさん詰められた舞台背景でした。

 劇中に背景の布を取り付けたり、外したりする場面もありました。ステージの上での音楽劇が伝わるものに出来るように、舞台袖や、色んな所で、たくさんの人の気持ちがこもっていることを、係を通してたくさん感じる機会がありました。

 そのことが大きな気づきで、お客さんから見えるところでも、見えないところでもみんなが一体となって、作り上げるコンサートがとても楽しかったです。 係で分からないところもたくさんあったけれど、たくさん同じ係のみんながフォローしくれて、引っ張ってくれたから、コンサートを作る過程が楽しいなと思えるものに出来ました。

 大道具の制作に入らせてもらって、少しでも作った部分がステージの上に乗っていると、少しでも役に立てられたことがとても嬉しく、自信になりました。

 コンサートの舞台背景係として活動させてもらえたことが、私にとってかけがえのない体験になりました。