2022年スプリングコンサート 役者インタビュー
①とうこさんは、どんな人ですか?
生きる気力を失ってしまっても、人が生きていく意味、答えを知りたい、それを知るまでは死にきれないという求める気持ちが非常に強い女性です。知りたいという気持ちが強く、物事を取捨選択しながらも、積み重ねて考えていくことができます。
真面目で、正義感が強くて、絶対に嘘がつけない純粋な人ですが、大学も合格し実績はあるけれど、周りとはうまく馴染むことがことができない固い人で、自分自身に対しては自信がかなりないです。
素朴で不器用だけれど、優しくて、よくありたいという気持ちが強い人だと思います。
②とうこさんと自分が似ていると思ったところは、ありますか?
反対に、似ていないと思ったところはありますか。
とうこさんと自分が似ていると思ったところはあります。
真面目で素朴なところも似ていますが、一番似ているのは、思考が広がりやすいところと、自信がないところだと思います。
小さいころから自分の周りことで誰も疑問に思わないことを疑問に思ったり、自分の空想を広く膨らませて見せたり、質問に答えてもらっても、次の質問が次々に出てくるような、追及心、探求心が強いところが似ていると思います。
よくも悪くも、様々なことに思考が広がりやすく、考えすぎるほど考えてしまうところが似ています。
そして、知りたいという気持ちは積極的なのに、人と関係をとることには、気後れしてしまいがちであったことも、似ているとおもいます。
③演じるときに、意識していたことはありますか?
通し練習がある日は、朝起きてからずっと、とうこさんがパワースポットに来るまでの経緯や、彼女の心境を考え、その絶望感や、その中での求める気持ちの強さをイメージし続けて、気持ち作りをしました。とうこのパワースポットに来るまでの経緯を考えると、自分の過去を思い出し、彼女と重なりました。とうこの中に、絶望を感じていながらもありつづける、心の鋭さを意識しました。
また、強く意識していたことは、演じないこと、空気感をつかんで、なりきることです。
④役を演じていて、学んだことを教えてください。
とうこを演じることを通して、私は自分が知らない感情があること、もしくは自分の中で封印している感情があるかもしれないと思いました。
知らなかった感情をとうこを通して知ることで、人は本当はこういうときにどんな感情になるのか、どう感じるべきなのかということを学びました。
はじめのシーンで、とうこが、たかお、てつおと出会うとき、とうこは2人に対してどう思うんだろうか、と考えてもはっきりと分からなくて、はじめは引き気味、あまり好きでない感じを強く出してしまっていたけれど、たかお、てつおは自分と同じように生きる答えを求めて、生きることにつまづいた人であり、本当は優しく純粋な人であることを感じ取り、心を開いていったと思いました。
具体例を一つあげます。
ソロモン王のところへ行ったあとに、博士の研究室に帰ってきたシーン。
このシーンは、あゆちゃんに長い時間をとって見てもらいました。
アインシュタインやソロモン王から、生きていく意味、たくさんの答えを教えてもらったことで、3人は興奮状態です。
だから、とうこのはじめの、
「博士、ただいま。私たち、すごいところに行ってきたんです」
から、そのあとのセリフまでは、幼い子供が新しい発見をした喜び、それを家族に伝えたい気持ちがあふれるように、早口で博士に話しかけるように。どんどん博士に近づいていくように、「旧約聖書のコヘレトの書」は下を向いて、最後の「書いた人で」は上をむいて言う。
キラキラした感じで言ってね。とあゆちゃんが教えてくれて、その通りにやってみると、とてもやりやすかったし、セリフを言った後に涙が出てきました。人はとてもうれしかったこと、感動したことがあると、本当にストレートに伝えたくて、こんな表情でこんな気持ちで話しかけるのかと思いました。
普段の私は嬉しいことや感動したことがあっても、他の人にとってはそれほど嬉しいことでもなかったり、大した事ではなかったりして、口から出た瞬間に消えていってしまうのではないかというような怖さが残っていて、ストレートに飾らずに話すことが上手くできないところがあるな、と思いました。でも、本当は、嬉しいことを大切な人に話すときは、こんなふうに生き生きとして話すのか、本当はそうなんだよなと思いました。
博士はとうこの話しに反応できずにいます。アインシュタインの手紙を見つけて読んだ後で、感動に浸り泣いているからです。
経緯を知らない3人は、そんな博士に近づいていくとき、大切な人が涙を流しているのだから労わるように、気を使いながら慎重に、
でも、すぐにサポートできるように、何か助けられることがあれば助けたいという気持ちで、すすっと近寄るんだよ、とあゆちゃんが教えてくれました。
人はそういう風に感情が動き、気持ちが動きに現れるのかと思いました。人を大切に思ったとき、そうあるべきなのだと思いました。
⑤思い入れのあるセリフ、シーンと、その理由を教えてください。
博士と助手の研究室に、おさらば3人組がはじめて訪れるシーンです。
たかおが、
「僕も性格は歪んでいますが、宇宙の歪みを通り抜けるほどでは…。
僕たちはおさらば3人組という……(2人の顔を見て)、友人です。」
というセリフとともに自分の両手のひらを組むのですが、とうこがすかさず、「友人ではない。」と言って、その手を解きます。組まれた手が解かれると、がっかりしたたかおが手をぐらぐらさせて、そのたかおをてつおが支えるという動きになっています。
たかおらしいコミカルな動きと、とうこの突っ込みが、何度やっても面白いシーンでした。このシーンのとうこのセリフの言い方や動きが、ずっとしっくり来なくて、悩んでいたのですが、たかおさんが新しいたかおさんになってから、お父さんが、ここは、こういう動きがいいと思う! と考えてくださって、役者全体がはまった感じがしました。
とうこの細かい表情は、あゆちゃんが教えてくれました。短い中に、博士と3人組のいろんな連携がからみあっていて、すごく好きなシーンだったし、何度も練習しました。
⑥練習の過程で、印象的だったことを教えてください。
たかお役ののんちゃんが、役がなかなかはまらずに困っていたときに、お父さんが考えてくださって、ニヒリストのたかおさんから、社会不適合者の新たかおさんに変わったとき、のんちゃんがブレイクスルーしたかのように、とてもいきいきと演技に変わったときです。
一つひとつのセリフに、たかおさんにしかできないコミカルな動きがつきました。私も今までよりも格段に演技がしやすくなったし、何よりものんちゃんがいきいきしていたことがうれしかったです。そして本当に面白かったです。
⑦コンサート全体を通して、お客さんの反応を、どう感じましたか?
サミュエル・ウルマンの『青春』の詩を読む場面から、お客さんがステージに引き込まれていることをはっきりと感じました。
『青春』の詩の一節、
「年を重ねただけで人は老いない、理想を失うときにはじめて老いがくる」
と言ったときに、
左手前の客席のほうから、「そうだ!」という年配の男性の方の声が聞こえてきました。やっぱりそうなんだと、ずっと言ってきたセリフだけれど、自分も改めて、この詩の普遍性に気付かされる気持ちになりました。
なのはなファミリーが伝えたいことは、今ここで出会っている方々、世の中に求められている普遍的な答えなんだなと、改めて感じました
ソロモン王のセリフも、客席は暗くて見えなかったけれど、空気が研ぎ澄まされている、全ての人が真剣に聞いている、あゆちゃんの声が吸い込まれていくように感じました。ステージに立つなのはなのみんなと、客席の間、ホールの空間一帯が暗いはずなのに、しんとした中にキラキラとした空気を感じました。
最後の、アインシュタインが娘のリーゼルにあてた手紙のシーンでも、お客さんの声は聞こえませんが、届いている、みんなこの答えを求めていた、という感覚がありました。ずっと練習してきたシーンが本物になったような、これが永遠になるということなのかもしれませんが、お客さんと自分たちの間に、その場にいる人しか感じられない絆のようなものが生まれたように感じました。私たちが訴えていたことは、本当だったのだ、ということをお客さんから教えてもらいました。
⑧今回のコンサート、脚本から得たことは、どんなことですか?
この宇宙は、ダークマターという人智を超えたものによって、意図して作られたものであること。ただなんとく、進化して発達してきたのではなく、はっきりとした意志や考えがあって、身体や心があるのだということを、脚本を通して改めて感じました。
そして、宇宙を包むダークマター、ダークエネルギーは愛そのものであること、人は誰も愛に包まれ、愛されているということ。それをみんなが本気で信じられたら、世界は確実に変わるだろうと思いました。
ダークマターは、愛する心、思いやりや、信じる気持ち、だれかのためにという利他心――人間にしか生み出せない、美しい心を見たかったら、宇宙を作って、地球をつくって、そして人類を作った、その意図を知りました。だから、私もはその意図に沿って、生きていかなくてはいけないということだと思いました。それが、「自分は何のために生まれてきたのか」という疑問への本当の答えでした。
▶さきちゃん(てつお役)へのインタビュー
▶なおちゃん(市ヶ谷博士/アインシュタイン博士役)へのインタビュー
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