2022年スプリングコンサート 役者インタビュー
①てつおさんは、どんな人ですか?
一言でいうと、母子共依存の引きこもりです。見かけは一番頼りなくて、ぎこちないけど、純粋で、素直な人だと思います。本当はよく生きたいと強く願っていたけれど、どうすることもできなくて、そんなときに出会った仲間が、おさらば3人組の、とうこさんとたかおさんでした。てつおさんは、3人の中でも、人一倍臆病で、人一倍情熱的で、優しい心の人だと思います。
②てつおさんと自分が似ていると思ったところは、ありますか?
反対に、似ていないと思ったところはありますか?
脚本を初めて見たときから、「もしかして、てつおさんは自分?」そう思ってしまうくらい、てつおさんの生い立ちや、心情が自分と重なっていて驚きました。
母子共依存でずっと家に引きこもり、人とのコミュニケーションが取れず、次第にもう一人の自分を作り、心の中で会話するようになった。それはまさに、なのはなに来る前の自分と重なっていました。私の場合、似ていないと思うところはなくて、むしろ共感するとともに、自分自身がてつおさんに、気持ちをすくってもらったような気がします。
ただ、てつおさんのような勇気が、私には必要だと思いました。今まで恐れてきたものと戦う勇気。
てつおさんが、ソロモン王に会いに行った後、「もう、引きこもりはやめようかな」と言ったとき、自分の心の声をセリフで言うことができました。なのはなに来てから、60人の中にいて、引きこもることはなかったけど、なぜか、そのセリフを言った瞬間に、役のてつおではなく、本心で心の底からスカッとしました。やっぱり、てつおさんは私で、私はてつおさんなのだと思います。
③演じるときに、意識していたことはありますか?
演じるとき一番意識していたことは、「演じるのではなく、なりきる」ということです。役を演じようとしないで、その役になりきる、とお父さんから教えてもらい、私はてつおさんという人になりきって演じようと思いました。
そうすることで、自然とイメージも膨らんで、実際にないものを見ることができます。イメージするか、しないか、それだけで伝わる度合いが全く違うことを、演劇を通して学びました。
なりきることを教えてもらってから、てつおさんはどんな人かイメージし、細かなプロフィールを自分なりに考えました。てつおさんだったら、どう思うかを想像して演技すると、自然と何も考えなくても、その役に入って演技することができました。
④役を演じていて、学んだことを教えてください。
私は、演劇というものからは程遠い人間でした。イベントで寸劇はやったことがあったけれど、公の場で、しかもホールのステージで演劇をするなんて思いもしなかったので、最初は戸惑いや、不安もありました。
そんな中で迎えた初めての演劇練習で、お父さんから基本的な演技のかたちを教えてもらいました。
セリフを言う時、基本的に止まって言うこと。プラスの発言は正面で、マイナスな発言は下手か上手を向いていうこと。セリフを聞く時、身体を横に向けて存在感を消し、セリフを立たせること。お客さんに背中を向けないこと。
基本を踏まえたうえで、何度も練習し、時に厳しく、時に笑いあいながら、いいも悪いも全部受け止めて、みんなで一つのストーリーを作っていく。これはみんなのためでもあり、自分の心を高めていくうえで大切なことなのだと思いました。
本当にたくさん学ぶことがあって、私にとってはどれもが新鮮で、これがなのはなの演劇の見せ方なんだと知って、ますます役を演じることが楽しくなりました。
⑤思い入れのあるセリフ、シーンと、その理由を教えてください。
思い入れのあるセリフは、「博士。人類は、なぜ生まれたんですか」というセリフです。
これは、前半ラストのシーンのてつおさんのセリフです。人類はなぜ生まれたのか、それは私もずっと考えていた疑問だったからです。その答えを、この脚本の中でアインシュタインの手紙を通して伝えていて、この人類はなぜ生まれたのかという疑問が解き明かされました。このセリフを言うとき、私はみんなの声になって、大声でステージの真ん中で叫びました。
私がこのコンサートの中で最も緊張し、最も思い入れのあるセリフです。
⑥練習の過程で、印象的だったことを教えてください。
みんなで、脚本に無いクイズを考えた時間が、印象強く心に残っています。
説明的な長い文章を、どうしたらわかりやすく、声色を変えて伝えることができるのか。
演劇メンバーのみんなで考えた結果、クイズで伝えようということになりました。
そして、お父さんがそれを脚本に盛り込んでさらに面白くしてくださり、脚本になかったシーンが実現を果たしました。
クイズのシーンは、お客さんにも好評で笑ってもらえて、やってよかったと思いました。
もう一つ印象的だったのは、たかおさんの演技をみんなで考えたことです。最初はセリフに振りはついていなかったけれど、たかおさんの変人キャラをいかし、その言葉からは想像もつかないような振りがついて、より劇に面白みが出て、自分たちも一緒にやっていて楽しかったです。
⑦コンサート全体を通して、お客さんの反応をどう感じましたか?
サミュエル・ウルマンの『青春』の詩を、やよいちゃん演じるとうこさんが読んでいるとき。年を重ねただけで人は老いない。理想を失うときに初めて老いがくるのだ、というセリフを言った後、一人のお客さんが、「そうだ!」と大きな声で言われました。
そのことが、コンサートが終わってからも記憶に残っていて、そうやって共感してくださる人がいるということが嬉しかったです。
最後のアインシュタインの手紙のシーンでは、会場全体が一体となり、セリフ以外の音が全く聞こえないほど、アインシュタインの手紙の内容を、とても聞き入られているのを感じました。これまでに劇で伝えてきた、人類はなぜ生まれ、宇宙は、なんのために作られたのか。その誰もが抱える疑問を、アインシュタインがたった一人の娘を思っていたときに、その答えを発見したという事実に深い感銘を受けました。それは、会場のお客さんの空気からも感じられて、「ああ、伝わった」と思う瞬間でした。
⑧今回のコンサート、脚本から得たことはどんなことですか?
脚本では、これまでにお父さんが話してくれたミーティングや夜の集合での話が、脚本の中に書かれています。
どの場面でも違うことを言っているようだけれど、究極のところでつながっているということに気づきました。
このコンサートのメインとなる、アインシュタインの手紙のシーン。亡くなる前にアインシュタインが、娘のリーゼルにどうしても伝えたかったことはなんだったのか。博士は宇宙に答えを求めるあまり、最も愛すべき娘リーゼルの存在をないがしろにしてしまった。けれど、アインシュタインが人生をかけて生み出した究極の答え、宇宙を包む膨大なエネルギーの正体は、愛であり、愛のエネルギーだった。そのことを、たった一人娘のリーゼルに伝えることで謝罪とさせてほしい。と最後にリーゼルへの謝罪と、リーゼルを愛する気持ちが書かれています。
そこで、アインシュタインという偉大な人物であっても、何かを犠牲にしてまで答えを見つけようとした。人間は、ともすると目の前の幸せに気づかずに、遠くにあるものを幸せだと追い求めてしまう。それが、アインシュタインは宇宙の究極の答えを見つけたとき、一番大切なリーゼルの存在に気づかされました。
アインシュタインとリーゼルの話は、今の家族のありかたに対する疑問や答えが詰まっています。アインシュタインの手紙で、
「愛する心とは、毎日、家族と食事を楽しみ、会話を楽しみ、日々、目の前の幸せを感じることだ」
とあります。
その愛する心が、宇宙を救うことになり、地球の環境問題をすくうことになるのだとわかりました。
愛のエネルギーを使って、私たちはよく生きたいと強く強く願います。それが使命だと思います。
そして、宇宙のエネルギー、ダークマター、ダークエネルギーは、私たちのすぐそばにあって、それは優しい心でいたならば感じることができるのだということを教えてもらいました。
▶なおちゃん(市ヶ谷博士/アインシュタイン博士役)へのインタビュー
▶やよいちゃん(とうこ役)へのインタビュー
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