【3月号④】「ミステリアスに、楽観的に ―― ワックの振付けで踊る『キュア・フォー・ミー』 ――」ななほ

ワックダンスは、腕を鞭のように使う、複雑で素早い動きが特徴です。

 二月中旬ごろ、卒業生のりかちゃんが新曲『キュア・フォー・ミー』のダンスの振り入れに、なのはなへと帰って来てくれました。 

「これから毎晩、ワックの基礎練習をできたら嬉しいです!」  

 さやねちゃんにそう声をかけてもらった日から、約一週間。  
 ワックダンスについて何の基礎知識もなければ、ワックを踊ることができるなんて想像もしていなかった私にとって、ワックは新しい世界を教えてくれました。  
  
  
 基礎練習では、さやねちゃん、のんちゃん、ゆずちゃんの姿を見ながら、見様見真似でワックの動きを身体に入れていきました。ワックを踊ってみると、右肩よりも左肩の方が硬いようで左になると手が四方八方へと飛んでいきそうで、とても難しかったです。  

 でも、ゆっくりのテンポから倍速へ、そして元のテンポへと戻る練習をしていくと、毎晩、毎晩、ワックの基礎練習をしている内に、段々と手や腕が動き始めていきました。  

 りかちゃんが来てくれる前日の夜、さやねちゃんが、 「明日は、りかちゃんの姿を目に焼き付ける日だよ。振りを覚えるのはその後で、じっくり身体に入れていこう」 と話してくれて、少し緊張はしたけれど、落ち着いた気持ちで振り入れの日を迎えました。  

 りかちゃんが振り付けてくれる『キュア・フォー・ミー』のダンスは、とても魅力的で、しなやかさや力強さがあり、このダンスを踊れると思うと心が躍りました。  
  
  
 早速、りかちゃんが踊りながら振りを伝えてくれたのですが、私はまだ真似するのにも精いっぱいだったけれど、りかちゃんの身体の使い方、表情を見ていると、自立した女性、力強い女性という印象があり、その美しさや魅力が、『キュア・フォー・ミー』の世界観を表現しているように感じました。  

 私もりかちゃんの姿をコピーするようにダンスを踊っていくと、最初は、自分の想像する美しさや、りかちゃんが見せてくれるあるべき形と、実際の自分の動きとは、あまりにもかけ離れているように感じて、悔しいなと思ったのですが、(絶対にできるようになる)と信じる気持ちと、(今日は、りかちゃんの姿を目に焼き付けるんだ)という気持ちのほうが勝ち、ものすごく楽しかったです。

 りかちゃんの見せてくれるダンスは、振りと振りの間にタメがあり、情緒があり、それでいて止める所は止める、カチッとする所はカチッとするというメリハリがついていて、ダンスの静と動がハッキリしていました。
  
  
 (わあ、何て美しいんだろう)
 振り入れをしているのにもかかわらず、つい、踊ることを忘れて、りかちゃんの踊る姿に見惚れてしまいます。

 振り入れはたった一日だったのですが、りかちゃんが詳しく形を伝えてくれて、私も必死でりかちゃんの姿を目に焼き付けました。 振り入れをした日の夜は、一日で記憶する量が莫大だったので、『キュア・フォー・ミー』のコーラスメンバーのみんなに、「どんな振りがあるの?」 と聞かれても、一つ二つしか出てこなくて、(あれ? さっきまで踊ってたのに)と思ったのですが、その夜はしっかりと睡眠をとると、翌朝には振りの半分を思い出すことができていました。  

 それからは、毎晩。夜のダンスバディが終わった後、九時から九時半で『キュア・フォー・ミー』のダンスメンバーで集まり、習慣練習を進めています。

 この曲は六人の少人数ダンスなのですが、そこになのはなバンドの演奏と、コーラス部隊のみんなが重なると、とても可愛らしく、ちょっぴりミステリアスで、自然と踊り出したくなります。  

 毎晩、メンバーのみんなとダンスを踊り、初めの一週間は振りを覚える。そして、次の一週間は細かいニュアンスや手の角度を揃えるというふうに習慣練習をしていくうちに、段々と踊れるようになってきました。 
  
  
  振り入れの日にしっかりと、目に焼き付けたりかちゃんの姿。まだ、りかちゃんのようなしなやかさ、落ち着き、魅力のあるダンスには程遠いのですが、振りに踊らされるのではなく、自分がこの曲を意思を持って踊り、ダンスを通して気持ちを表現していきます。

  あゆちゃんが訳してくれた『キュア・フォー・ミー』の和訳にあるように、 「私には、あなたからの救済は必要ないわ。本当なの、信じてちょうだい。私には、あなたの言う救済は、『い・ら・な・い・の』」 という気持ちで、りかちゃんの振りつけてくれたダンスを踊ります。  

 りかちゃんのように美しいお手本があると、練習をしていても高い所を目指すことができたり、あるべき形に向かって振りを揃えていくことができます。  

 ダンスを踊るのにも本当に踊れるなんて保障はないけれど、スプリングコンサートまでにはりかちゃんのように踊れるようになります。踊れるまで、踊り続けます。  仲間の存在があるから、怖がらずにできると信じてダンスも踊ることができるし、卒業してからも自立し、働きながら私たちの為にダンスを考えてくれる、りかちゃんと一緒にコンサートに出られることが嬉しいです。