【3月号①】「お互いを引き立て合って、気持ちを一つに ―― スプリングコンサートに向けて進むダンス練習――」りな

   
 スプリングコンサートに向けて、音楽合宿が始まりました。お仕事組さんがいて下さって、全員揃う土曜日、日曜日、祝日には、音楽合宿と言い、一日を通して練習のタイムスケジュールで行動します。  

 楽器演奏、ダンス、コーラス、バンド……受け持つ役割は一人ひとり違って、抱えている課題も違うけれど、全体で、どう向かっていくか、その大きな目標があって、それに向かってみんなと気持ちを揃えて練習する時間が、厳しいけれど、とても楽しいです。  

 『マディ・ウォーターズ』『バード・セット・フリー』『ホーリー・ウォーター』は、全員で踊る曲です。  
 卒業生ののんちゃんに振り付けをしてもらって、それからはあゆちゃんに見てもらって、その振りをさらにブラッシュアップしています。
     
 『マディ・ウォーターズ』は、スプリングコンサートのオープニングの曲です。真ん中で踊るのんちゃん、あけみちゃん、しほちゃんを囲んで、みんなで球体を作ります。手をバッと前に突き出しては引いたり、全員が同じ方向へ引っ張られたり……。  

 みんなで作る球体で、一つの生き物を作ります。私達は、その生き物を操る一つの細胞です。命をつかさどる細胞です。  

 あゆちゃんが、『マディ・ウォーターズ』のダンスを、初めから一つひとり分解して見てくれたとき、
「お客さんに、恐怖さえ感じさせるような、何か不穏なものが近づいてくるかのような、ぞわぞわした気持ちにさせたい」
そう話してくれました。

 手を出す動きでも、アメーバ状のものが飛び散っては、また戻って一つになっていくようにします。
  
 『マディ・ウォーターズ』のダンスは、「ダンス」よりも、「動き」のほうが多いです。その動きを、でもどれだけ厳しく、イメージを持って踊るのかで、伝えるものがまるで違うことを、知りました。動きを、ただ運動として踊るのではなく、一つの細胞として、最大限に大きく踊ります。  

 手の指先は一番遠くを通ります。足の指先は、力を込めて、足の延長上で、一直線にします。そうして初めて、見せるダンスにできるのだと思いました。  ダンスは一つひとつのポーズの連続でしかなくて、そのポーズには、一つしか答えはありません。
  
  
 その、あるべき美しい姿を、あゆちゃんが伝えてくれました。ただ立ち姿だけでも、楽をするのではなくて、重心を上に持ち上げて、肩甲骨を開いて、一番厳しい形をするのだと思いました。

 『マディ・ウォーター』では、全員が仰向けになって踊るシーンがあります。仰向けになっていても、気持ちはずっと、真ん中に踊っているしほちゃんやあけみちゃん、のんちゃんに向けて、同じように、厳しさと緊張感を持っていなければいけないのだと思いました。

 一つの大きなステージに、全員が立って、全員で見せる世界を表現します。  
 だから、誰一人として、その世界の中から はみ出ていてはいけないし、取り残されていてもいけません。真ん中で踊るダンサーも、取り囲むたくさんのダンサーも、ステージに立つコーラス隊も、全てがお互いに引き立て合って、気持ちを一つにします。  
  
 そこで、気持ちのずれが生じると、ステージも分裂が起こるんだよ、そうあゆちゃんが話してくれました。気持ちを揃えること、気持ちで表現するステージを、常に心に留めたいと思いました。  
  
  
 あゆちゃんが、規模の大きい三曲のダンスを分解して見てくれて、その曲ごとの景色を教えてくれました。練習している場所は、見慣れた体育館だけれど、その中に、ホールを見て、たくさんのお客さんの姿を見ることを知りました。目の前の、たった一人のまだ見ぬ誰かのために踊ります。  

 まだ見ぬ誰かに、私達のステージを見て、希望を与えたり、癒しになれるようなダンスをするには、私達が、心の癒しを得て、希望を持って、明るい世界を景色で見ないといけないんだなあと感じました。  

 『ホーリー・ウォーター』の和訳は、「聖なる水」です。ダンスの中に水をすくい上げて掲げる振りや、水面を手で撫でるような振りがあります。ちゃんと手の平に注がれた水を見て踊ります。そして、その水で、深い無念や後悔の気持ちを洗い流します。  

 『バード・セット・フリー』では、刀を振る振り付けがあります。長くて、重くて、質の良い刀。一番良い切れ味のところで、目の前の敵を切ります。
  
 自分の前に立ちはだかっている敵、そして、一緒に戦う相棒となる刀をはっきりと見ます。私達の敵とは、私達を苦しめ続けた依存や、価値観です。その敵を一皮も残さずすっぱりと切るには、飛ばされないよう、ぐっと足を踏ん張らないといけません。
  
  
 一瞬にして、力を込めないといけません。
「一人ひとり、心の中には、苦しめるものをすっぱりと切る刀を持っているんだよ。その刀を、磨いていくんだよ」  

 あゆちゃんが、この曲のダンスに込める気持ちを教えてくれました。心の中の、本物の刀を思い描くのだと思いました。『バード・セット・フリー』を踊りこむうちに、気持ちも作られていくようでした。

「いつでも、練習のための練習になってはいけないよ。本番を想定して、本番のための練習をするんだよ」  

 お父さんの言葉が心に残っています。練習で、楽な姿勢で踊っていると、本番もそのままそっくり楽な姿勢しか保てなくなる。それは、普段の心持ちも同じだと思いました。お父さんの言葉を聞いて、とても背筋が正されるような気持ちになりました。

 スプリングコンサートに向かっている練習の時間は、見せる意識を作りやすいです。しかし、普段から、見せる意識を持って、綺麗な歩き方、美しい立ち振る舞いを地にしていきたいと思いました。

 あゆちゃんから教えてもらった正しい形を、ダンスのバディ練習で復習します。夜の時間はダンスのバディ練習の時間があって、チームごとに、体育館や活動の部屋を使って練習します。私は、さやねちゃんチームで、チームのみんなと一緒に振りを揃えています。  
  
  
 バディリーダーさんが、前から見てくれて、一人ひとりの癖を教えてくれます。自分では分からなくて、知らず知らず身についてしまった悪い癖を自覚できて、修正することのできる時間がとても嬉しいです。楽なほうへ逃げないで、厳しい形でチームのみんなと揃えられることが嬉しいなあと思います。

 少人数バディだけれど、バディの中で、影分身になったようにぴったりと揃えると、全体で踊ったときに、全員が正しい形で揃えることができます。 今はまだ正しい形を覚えている途中だけれど、何回も何回もみんなと揃えて、自然と踊れるように、身体に入れたいなあと思います。  

 これからもどんどん新曲の練習が始まります。ダンスやコーラス、バンド……、一人ひとり役割は違うけれど、果たすべき役割に責任を持って、精度高いものを求めて練習を積み重ねたいです。