【新春号⑬】「竹取り、飾り集めから自分たちの手で ―― 盛男おじいちゃんと門松作り ――」りな

  
 盛男おじいちゃんに教えていただきながら、門松づくりをしました。お正月には欠かせない門松。なのはなでは毎年、竹を山から伐ってくるところから始まって、材料も集めて、自分たちで門松を作ります。毎年少し違う門松を、楽しみに待ってくれている人もたくさんいます。

 全長百二十センチほどの大きな門松を玄関に飾ると、一気にお正月のムードも増します。お正月限りのとても華やかな門松、盛男おじいちゃんに一から教えていただきながら、作れることがとても嬉しかったです。

■竹取りへ
  
 

 一日目は、竹を盛男おじいちゃんの山へ取りに行くところから始まりました。山の入り口を通ると、辺りが一変して、高い木の陰に隠れて、薄暗く、涼しかったです。シダ植物が茂る場所に足を踏み込み、少しずつ目当ての竹に近づきます。その竹は、遠くから見ても先端が見えないほど高く、笹の葉を風でわっさわっさと揺らしていました。

 一本の竹が、両手で掴めないような太さで、節もごつごつしていました。そんな、太くて大きな竹が、斜面となったところに、無数に生えています。

 竹取りは初めてではないけれど、こんなに太い竹を取るのは初めてでした。「孟宗竹というんだよ」盛男おじいちゃんが教えてくださいました。竹箒は、孟宗竹でしか作ることができないんだと聞いて、孟宗竹は他の竹よりも、丈夫なんだなあと思いました。
  
  
 竹取りは、怪我を伴う作業でもあります。こんなにも太い竹が、頭上から倒れてきたらひとたまりもありません。

 周りに生えている木や竹に引っ掛からないように、そして誰もいない、安全な場所に竹を倒すことができるように、考えながら切っていきました。

 まず初めに竹を倒す側に切れ込みを入れておき、それから反対側をのこぎりで切っていくと、竹のコントロールがしやすいことを盛男おじいちゃんから教えていただきました。切る位置や、のこぎりの刃の入れ方によっても、切りやすさも違ってくることを知って、驚きました。

「ザクザクザク」

 みかちゃんやまえちゃんが、力強く竹をのこぎりで切っていってくれます。みんなで竹に取り付いて、ちょうど木と木の間に倒すように、竹を押していきます。でも、四人の力で竹を押しても、竹の力のほうが大きく、なかなか思うように傾きません。のこぎりの刃も、なかなか竹の直径をすべて切ることが大変でした。
  
  
 のこぎりの刃が竹を切り終えるまであと数センチ……、というところになって初めて、竹がゆっくりと傾いていきました。でも、このままだと、竹の力に負けて、竹に取り付いている私達までもが倒れる竹に持っていかれそうです。 緊張が走りました。足場は斜面なので、思うような体勢が取れなかったり、踏ん張れなかったりします。でも、なんとか、窪みや植物の根で足を固定させて、渾身の力で竹の倒す位置を調整します。

「ザーーー」

 笹が、こすれ合って、倒れてきます。

「ドーン!」

 切った竹は長さ十メートル以上あって、とても重かったです。計画した通りの場所に、倒すことができて、ほっと胸を撫で下ろしました。スリルのある竹取りが、緊張したけれどとても楽しかったです。

ウラジロやマンリョウもとりに行きました

   
 三本の竹を伐りました。約二メートルほどの長さに細切れにカットし、古吉野に持って帰って一日目は終わりました。

 二日目は、門松の土台作りをしました。二メートルに切った竹を、さらに三十センチほどの長さに切ったものを使って、門松の土台の枠を作ります。のこぎりを使って、竹を切っていると、盛男おじいちゃんが、

「のこぎりを引くときに力を入れたらいいよ」

 とアドバイスをくださりました。引くほうに力を入れると、気持ちのよいぐらいスムーズにのこぎりが竹に入っていきました。
  
  
 竹の粉が舞って、竹が切れていきます。でも、竹が直径十五センチほどもあり、なかなかのこぎりの刃が向こう側へたどり着きません。

 一本の竹を切るだけでも、とても腕の力の要る作業でした。みんなで手分けしながら、竹を押さえる人、切る人でペアになって、竹を切っていきました。
  
  
 三十センチに切れた竹は、ナタで八等分に縦に割って、細い板状の竹を作ります。ただナタを振り下ろすのではなくて、釘を打つように、切りたいところに一本のナタの刃を当てて、金槌でナタの峰をコンコンと叩きます。すると、ナタの刃が次第に竹に食い込み、竹の割れ目も大きくなっていきます。

■段々と形に

「カコーン!」

 竹が石畳の地面に転がる大きな音がして、とても驚きました。一瞬で竹が両サイドに跳ね返って、とても驚きました。地面に転がった竹を見ると、真っ二つに割れていました。ささくれ一つなく、滑らかで奇麗な断面をしていました。

 気持ちの良いぐらい奇麗に、スパッと竹が割られていくのを見ていても、割っていても、とても楽しかったです。こうやって竹を割るんだ、と知ることができました。
  
  
 板状にした竹の節目を取り、竹を一列に並べて、シュロ縄で上下二か所を編みます。盛男おじいちゃんが編み方を教えてくださって、おじいちゃんの見本を見ながら、ななほちゃん、まなかちゃんとトリオになって竹を編んでいきました。

 シュロ縄は麻縄のようにぐっと力を入れて引っ張ると、繊維同士が絡まってあまり緩みませんでした。編みあがった竹は、すだれのように長くて、頑丈でした。これを立てて、丸い土台の形をとると、それだけでもう、門松の迫力を生み出していました。
  
  
 一周した竹の枠組みの中に、土を詰めます。土が、竹の枠組みの間から漏れないようにするにはどうしたら良いか、みんなで話し合いました。

「透明ビニールを、内側に巻くといいよ」

 盛男おじいちゃんが話してくださりました。透明ビニール……、「もみ殻袋は!」

 ななほちゃんが提案してくれました。もみ殻袋だと、透明で外からもあまり目立たないし、袋になっていて、土も詰めやすいです。早速、もみ殻袋を試してみました。

 もみ殻袋は竹の枠組みの大きさにぴったりで、「いいね!」と盛男おじいちゃんも言ってくださいました。なのはなにたくさんあるもみ殻袋を、まさかこんな形で使うことができるとは思いもよらなくて、とても嬉しかったです。
    
 土を詰めて、門松の土台が完成しました。いよいよ三日目は、門松に飾り物を付けていきます。門松に飾ると良い、縁起物の「松竹梅」を調達します。

 盛男おじいちゃんとみかちゃんが、アカマツの枝を、二本取ってきてくださいました。葉が鋭くた

くさん伸びていて、とてもかっこよかったです。中心には小さな松ぼっくりの赤ちゃんもいて、可愛いなあと思いました。
  
  
 私は、梅林へ梅の枝を取りに行きました。その日は霜が降りてとても寒い日でした。梅の木を見ると、枝に白くて細い、糸のようなものがたくさん絡まり合っています。何だろう……、近くへ寄ってみてみると、クモの巣が凍って、小さなしずくの氷をたくさん付けて、繋がっていました。一つひとつの氷の粒がキラキラ輝いていて、ダイヤモンドのようでした。梅林に来ないと見られない、貴重な光景があって、感動しました。

 大きさの様々な梅の枝を四本、取ってきました。梅の枝には、二ミリほどの小さな花芽が付いていて、春になるのを待っていました。盛男おじいちゃんが、この枝を暖かいところに置いて、花枝にして門松に飾ったら一番いいんだよ、と教えてくださいました。

 梅の白い花を、マツの葉や笹の葉に合わせたら、どんなに華やかなんだろうなあと思いました。今年は花枝にできなかったけれど、来年や、またお正月の季節になったら、梅の花を飾れるように、少し前から花枝の仕込みをできたらいいなあと思いました。

 松竹梅と聞くと、とても高価なものに思えるけれど、盛男おじいちゃんの山や、なのはなの畑から、自分たちで取ってきて、集められることが、本当はとてもありがたいことなんだなあと思いました。

 松竹梅が揃って、一番大切な、中心の竹の斜めカットに取り掛かります。出来るだけ鋭角に、三本の竹の切り口の角度を同じにするために、印をつけてから、切り始めました。

 斜めカットは、真っ直ぐに切るよりも断面も大きく、竹の繊維にも背くので、とても難しかったです。時間はかかるけれど、断面が真っ直ぐ綺麗になるよう、慎重に丁寧に切っていきました。

■美しく見える飾り付け

 斜めカットした三本の竹を、一束にするためにシュロ縄で括り付けます。盛男おじいちゃんが、「男結び」という新しい結び方を教えてくださいました。難解な結び方だったけれど、結び目がとても奇麗だなあと思いました。ななほちゃんやみかちゃんが実際に男結びで結んでいて、凄いなあと思いました。

 竹を門松の中心に立てて土で埋め、前には葉ボタンを植えて、ウラジロやマンリョウの実をさします。後ろには、背丈の高い、マツや梅の枝、笹の葉をさします。少しずつ、門松が華やかに、大きくなっていきました。

 門松の土が見えないように、コケを敷き詰めたり、ナンテンの実が見えるように刺したり、みんなで美しく見えるように、工夫しました。お正月や成人式の時には、門松の前で、全員での集合写真を撮るときがあります。次に残る良いものを作ることができるよう、知恵を出し合って、盛り付けていきました。

 最後に、門松の土台に、しめ縄をぐるっと一周させました。私はこれまで、しめ縄飾りを作るためにしめ縄をなったことはあるけれど、藁の長さだけの、短いしめ縄しかなったことがありませんでした。どうやって長いしめ縄をなうんだろう……。そう思っていると、盛男おじいちゃんが、お手本を見せてくださりました。
  
  
 編んでいる藁が短くなってきたら、少しずつ、藁を足していって、新しく足した藁も一緒に、ねじってなっていく方法でした。最初は、新しく藁を足しても、上手くその藁が絡まり合わなくて、なかなか織り込むことが難しかったです。でも、盛男おじいちゃんの手さばきを見ながら、ゆっくりでもいいから丁寧になっていくと、少しずつではあるけれど、藁がかみ合うようになってきました。

 しめ縄の太さが一定になるように、常に太さの加減を考えながら、なっていきます。しめ縄をなっていると、無心になって、集中できました。

 いつの間にかみんなの足元に長い尻尾のような、しめ縄ができあがっています。それがとてもあっという間に感じるぐらい、とても楽しかったです。少しずつしめ縄も奇麗になうことができるようになっていました。

 長くなったしめ縄を、門松の土台に一周させて、正面で、端と端を結びます。蝶々結びが奇麗かなと思ったのですが、少し縄の長さが足りなくて、かた結びをしました。両端の余ったところは、ぐるっと一周させたしめ縄の編み込みを少し緩ませて、その中に通して一本の縄に見えるように繋げました。

 この方法も、盛男おじいちゃんから教わった、縄を繋げる方法です。シュロ縄を短く切りすぎて、竹を結ぶのには長さが足りない、どうしよう! と思ったときに、盛男おじいちゃんが、切れ端の短いシュロ縄をとって、二本を繊維に編み込ませて、繋げて下さったことがありました。

 両端から二人で引っ張ってもその繋がった紐は切れなくて、まるで魔法のようでした。結び目を付けずとも、綺麗に一本の縄にすることが出来るんだ、と知ってとても驚きました。そのつなぎ目は目立たなくて、盛男おじいちゃんが凄いなあと思いました。
 
   
 こうして、しめ縄も付けて三日間の門松づくりが終わりました。玄関下を通り抜けるみんなが、作ったばかりの門松に目を止めて、「すごいね!」と声を掛けてくれたり、喜んでくれました。

 豪華で、迫力のある門松が玄関に左右に二つ、置かれていると、なのはなのお正月がついに来るんだなあと、実感が湧いてきました。

 門松づくりを通して、盛男おじいちゃんから縄の結び方や、長いしめ縄の作り方、竹の切り方まで、たくさんのことを教えていただきました。

 しめ縄を作ることは、今はお正月の季節しかないけれど、昔は色んな所でしめ縄を作って、生活の中にしめ縄作りが身近にあったんだなあと思いました。だから、しめ縄を一つ作るだけでも、生きる知恵がたくさん詰まっているんだなあと思いました。
  

余った材料でミニ門松も作りました

   
 今は物が自在に手に入って、便利な時代だけど、自分たちで長い縄をなうことが出来たり、自給自足できることが、本当はどんな時代でもとても大切なことなんだなあと感じました。

 門松の松竹梅を調達した時間、盛男おじいちゃんの山の中の竹を切らせてもらった時間。

 自然から、たくさんの恵みをもらって門松を作ることが出来て、そのことがとてもありがたいことだし、そんな大きな自然に囲まれている私たちは、幸せだなと思いました。

 立派な門松を作ることができて、新年をめでたく迎える準備ができました。新しい年も、なのはなにとって良い一年となりますように。