一月二日は、書き初めをする日です。なのはなの書き初めでは、顔真卿の文字と、今年の抱負を書きます。
今年の顔真卿のお手本の文字は「春光」。これから新年、新たな春が訪れることを感じさせる、希望あふれる言葉です。

まず、お父さんが来てくださって、書き初めをするにあたってのアドバイスをしてくれました。
「自分の個性を消して、とにかく真似ること。個性を出すのは完璧に真似たあとのこと」と、教えてくださいました。
とにかくお手本のように書くぞ、と意気込んで、筆を持ちます。部屋中に墨汁の香りが漂っていて、それだけでも背筋が正されるような気がしました。
しかし、思うようにうまく書けません。とめ、はらいを意識しすぎてしまい、逆に違和感のあるものになってしまったり、なかなか文字のバランスが取れなかったり、何枚も何枚も書くたびに、焦りが生まれてきました。
どうしよう、と感じていたところで、お父さんが、一人ひとりの文字を講評してくれました。
■文字に込められた思い
わたしは、筆を回してしまう癖があると教えていただきました。筆を回してしまうと、出るはずの太さや細さが出ず、力のない文字になってしまいます。それから、わたしには迷いがあるということでした。迷いがあると、筆を運ぶのが遅く、文字がにじんでしまいます。
そのことを意識しながら書いていると、文字のにじみがなくなり、止め、はらいも奇麗に書けるようになってきました。
自分の書く文字に、ハッとさせられることばかりでした。自己中心的になってしまっているぞ、怯えや迷いがあるぞ、と、忠告を受けたような気持ちになりました。
奇麗な文字を書くには、文字に集中し、心を添わせること。自分の不安を捨てること。これは、普段の生活でも同じように大切なことだと感じました。
周りにみんながいることを忘れてしまうくらい入り込んでいて、気が付くとあっという間に時間が来てしまいました。
続いて、ひとりひとりの今年の抱負を書いていきました。
わたしは悩んだのですが、「熱意」に決めました。お父さんお母さんやみんなのように、何事にも意欲を持ち、真剣に本気で取り組めるようになるため、この言葉にしました。
お手本がなかったので、自分のなかで、顔真卿だったらこう書くかな、と想像しながら書いていきました。
この「熱意」が今年、確かなものになっていけるよう、グッと強い気持ちを持ちました。すると、お手本が無くても、思っていたよりバランスの取れた綺麗な文字が書けていて、うれしかったです。
食堂には、みんなの作品がずらーっと並んで貼られていました。黒板に貼られた自分の「春光」の文字を見ると、あれ、なんだか綺麗だな、と感じました。少し納得のいかないまま提出した作品だったけれど、それもあまり感じませんでした。
周りにみんなの文字があってくれるから、そのなかで、わたしの文字にも力があるように見えるのだと感じました。
それぞれの抱負も見させてもらって、この抱負はわたしにも言えることだな、と共感させてもらえたし、文字に込められている強さも共有させてもらえて、とてもありがたいです。
ご飯を食べているとき、顔を上げると、みんなの文字が目に飛び込んできます。とんど焼きで燃やしてしまうまでの間、しっかり目に焼き付けておいて、今年の抱負を忘れないでいたいです。