コンサートに向けての曲の練習が始まっています。目玉となるなのはなみんなでのビッグバンド演奏の曲に選ばれたのは『時よ、前進!』というオーケストラ曲です。
なぜ選ばれたのかというと、なのはなのアイドルたけちゃんお気に入りの曲で、彼はどんなに不機嫌でぐずっているときもこの『時よ、前進!』の演奏の映像を見せてあげると身を乗り出して画面に釘付けになるのです。これをさとみちゃんが、なのはなのためにアレンジした楽譜を作成してくれて、おのおののパートに配布されました。
曲をみんなで観賞し(ベラルーシの交響楽団によるもので映像付き)、楽譜が配られ、練習をし始めたのは10月25日のことです。交響楽団の方の映像では、ピアノの方が全身を戦慄させながら顔を真っ赤にして、己のすべての力を振り絞っている様子でピアノを叩き割らんばかりに音楽を表現していたのが印象的でした。
この曲はロシアのゲオルギー・スヴィリードフが1965年に作った楽曲で、映画『時よ、前進!』の音楽として制作されました。
スヴィリードフはお父さんも大好きなショスタコーヴィチに1936年にレニングラード音楽院に入学してから師事していました。自分に厳しく、小さなことにもこだわったスヴィリードフは、1つの作品を完成するまでに数年をかけたといわれています。
しかし、この作品だけは例外で、監督に早急に作品を渡す必要があったのと、夜釣りに出かける予定があったため、時計のアラームを設定し、わずか1時間でロシアでもっとも有名な曲の1つを作曲したという逸話があります。
なのはなバージョンでは、パートは全部でフルート、クラリネット、トランペット、トロンボーン、サックス、大正琴、パーカッション、ベース、キーボードです。私はベースギターを担当しています。キーボードはりなちゃんとまなかちゃんが新たに担当することになり、
(2人のキーボードでどんな演奏になっていくんだろう、楽しみだなあ)
と初日に思いました。この曲は前奏が終わると刻みのスネア以外にはキーボードがメロディを弾いているだけなので重要な出だしかと思うので、2人の緊張感はいかばかりか。ベースやパーカッションは永遠に八分音符を刻んでいます。
BPM(曲のテンポを表す数値)が140を越えているのでリズムキープに全精神を注がねばなりません。原曲でバイオリンの繰り返しのメロディが入る箇所のリズムが、頭拍が取りづらくなるので(そこが難関だなあ)というのが、初見で思ったことでした。
11月3日は、平日に仕事で不在のメンバーも交えての、大勢での合わせを初めてやりました。あゆちゃんが指揮をして、お父さんにも演奏を聴いてもらうことができました。
どんなカオスなことになるか、合わせる前から人知れず恐れを抱いていたのですが予想より曲らしくはなっていてびっくりでした。平日仕事で不在のメンバーなんかはこの日初めてこの曲を練習したと思うのですが、それを考えると、すぐに合わせて曲としての体をなすことができる技術の高さに感服でした。あゆちゃんが言っていたのですが、
「早い段階で全体合奏をすると、全体の曲の流れ、自分の曲の中での役割などが分かって練習の方向性も明確になる」
というのを自分もアンサンブル演奏をする際に感じていたので、全体練習を早い段階で行なってもらってありがたかったです。ベースも「ミソシレ」のベースラインを弾くときに頭拍を意識してとアドバイスいただいたので忠実に練習を進めていこうと思いました。
翌日の11月4日、午後にまた時よ前進タイムが訪れました。私はまず、音楽室で一緒に練習しているパーカッションとキーボードとベースだけの合わせに参加しました。そのときはかにちゃんが主導してくれてさきちゃんのスネアをいかに粒をそろえて弾けるかを試行錯誤していました。
永遠に八分を刻んでいるさきちゃんのおかげで私もリズムキープを意識することができます。お互いがお互いのリズム感を意識してもっとシンクロできたらいいなあと思いました。

夕方からはみんなと合わせをして、お父さんにもまた指導をしてもらいました。その日はたけちゃんもいて、みんなの演奏中ずっとぽかんとしていて、
「なんでこの曲を目の前でみんながやってるんだ……?」
という顔でした。
■曲に合った音作りを
お父さんはこの日、私のベースについても改善案を言ってくれました。曲に合った、主張の強い音を出すようにベースのイコライザーの調節具合を指示してくださって、みかちゃんが調節を手伝ってくれました。私はいままでベース本体のイコライザーは全部マックスで弾くものだと思っていて、アンプのイコライザの調節でずっとやりすごしてきていたのですが、どうやらそれは間違いだったようです。
ベース本体のイコライザを調節するのがよいという、私には驚きの事実というか、新たな学びでした。ちなみに低音7.5割、中音6割、高音8割という具合で行くことになりました。
この日初めてさとみちゃんが合わせに参加してくれたのですが、原曲では流れるようにバイオリンが弾いていた難易度の高いパートを、ソプラノサックスを巧みに操り、超絶音階技法とでも名付けましょうか、そんな感じで演奏していてこれもまたスキルの高さに驚かされました。音もはっきりしていて実に耳に心地良い。
漠然とただなんとなくのほほんとしたなかで流されるまま生きていると、意志は薄弱になり、主張するすべも知らず、でもこのどこかおかしい枠組みのなか、生きづらさは感じているから苦しい。そんな曖昧な気持ちを、輪郭を持たせて音として形にするという行為が今必要で、なんとか表現する方法をみんなで試行錯誤している真っ最中なのです。
さあ立ち上がろう。希望の音を轟かせるのだ。
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新曲『レインボー』のダンス&コーラスの合わせをしました!
これからの演奏に向かって、ダンスとコーラス練習を精力的に進めています。
新曲『レインボー』は14人のダンサーに加え、『虹』をイメージしたカラフルな傘を使った演出も取り入れています。
さらに包み込むようなハーモニーを響かせるコーラス隊も加わり、なのはなオリジナルの『レインボー』が日に日に仕上がってきました!