【11月号⑭】「イチジク栽培が広がる ―― なのはなで育てる、四品種の特徴と味わいを楽しんで ――」りんね

 今秋は、今までのなのはなで最も多く、イチジクの収穫をすることができました。  
 駐車場斜面、古畑、河原畑の成木十本と、梅林手前畑の二年生の二本、計十二本からの収穫で、一か月半の間に約百三十キロの収量がありました。  

 なのはなとイチジクとの出会いは、五年前、盛男おじいちゃんから頂いた苗を、古吉野校舎正面の駐車場の斜面と、古畑に植えたことから始まりました。  
    
  
 盛男おじいちゃんが、 「古吉野の上の山に降った雨、グラウンドに降った雨、全部この斜面に流れてくる。これはイチジクにとって、最高の場所だ」 と教えてくださったことがありました。  
 
 盛男おじいちゃんの見込み通り、年月が過ぎ、イチジクの苗は自然なままの樹形で、伸び伸びと大きく成長し、多くの実をつけてくれるようになりました。  

 また、二年前にはアコースティックギター教室の藤井さんからも、四本の苗木と剪定枝を頂きました。  
 藤井さんは、お家の前の畑で、近所の方にも、「藤井さんのイチジクは美味しい」と評判の、美味しいイチジクを育てられていました。  

 アコースティックギター教室のときに、イチジクについて何度か質問させていただいたことがきっかけで、藤井さんのご厚意により、苗木や剪定枝を頂くことになりました。  
 藤井さんから頂いた剪定枝を、挿し木にして育てることで、なのはなのイチジク栽培が大きく広がり始めました。  
  
   
 イチジクの名前の由来は、「一日一つずつ実が熟していくから」と言われています。その通り、イチジクは枝の下のほうから順に実が熟れていくので、まだ青く小さな実と、よく熟れた実が、一本の木に混在している、という特徴的な果樹です。  

 また、イチジクの実は一度木から取ると、追熟をしません。熟した実は日持ちもしないため、スーパーに売られているようなイチジクは、かなり早採りされていて、甘みも少ないようです。  

 木でしっかりと熟させてから、収穫したイチジクは、甘さがぎゅっと詰まった蜜のようで、格別においしいです。  
  

収穫したイチジク。左の2つは『バナーネ』、中央の3つが『蓬莱柿』、右の3つが『ブラウンターキー』という品種です。

 

 なのはなのみんなから、なのはなでイチジクを食べてから、イチジクが好きになった、と言ってもらうこともたくさんありました。そんな声を聞くと、本当に美味しいイチジクを多くの人へ届けたい、という気持ちが湧いてきて、励まされます。  

 イチジクの実を、一番美味しく食べられる状態で、しっかりと収穫したい。そんな思いで、収穫へ向かいました。  
 収穫前には、みんなで協力をして防鳥ネットを成木全面にかけたことで、鳥の被害を百パーセント防ぐことができました。  

 九月に入り、ある程度まとまって実が熟れるようになると、毎朝、収穫をしていきました。  はじめは度重なる雨で、お尻が腐ってしまう実も出てしまったのですが、じとじととした日が止み、快晴が続き始めると、ほぼ全ての実をきれいな状態で収穫することができるようになりました。

■四品種の特徴  

 なのはなで育てているイチジクは、品種も四種類に分かれています。品種によって、それぞれ木の性質、葉の形、実の色形や熟れ方も、違っています。  

 なのはなの駐車場斜面、古畑に植わっている九本の成木は、盛男おじいちゃんから頂いた苗から育てた、五年生の成木です。  
 そのうち六本は、『蓬莱柿』という品種です。別名は『日本イチジク』。今から約四百年前に、中国あるいは南洋から、日本に渡来したと伝えられています。  

 昔から日本の庭木として植えられていたのは、この『蓬莱柿』のようでした。そのせいか、私はなのはなに来てから初めて頂いたけれど、甘酸っぱい実は、どこか懐かしみがあって、安心する味だと感じました。  

 果実は、優しい黄緑に赤味がさしてきて、お尻が少し割れて、柔らかくなったときが、収穫のタイミングです。少し小ぶりで上品な実は、日本人にとって親しみやすいように感じ、私は『蓬莱柿』が大好きです。  

 葉は大きな三片葉で、樹勢も強く、耐寒性があり、とても育てやすい品種だと感じます。なのはなで今、一番多く収穫されているのも『蓬莱柿』です。

■艶のあるワインレッド  

 『蓬莱柿』以外の三本は、『桝井ドーフィン』という品種です。  
 これはイチジクを育てている農家では主流になっている品種で、スーパーなどでも見かけられます。  

 果実は大玉で、つやのあるワインレッドをしています。一つの実の存在感、高級感は、この品種が最も強いと感じます。 味わいは『蓬莱柿』に比べると甘みは少ないけれど、よく熟させてから収穫すると、さわやかな甘みで、とても美味しいです。  
  

ダイカンドラの種

  
 『桝井ドーフィン』は、耐寒性に乏しく、育てることには少し苦戦しています。
 けれど古畑の一本は、今年も大玉の実をたくさん実らせてくれました。来年からは、さらに色づきが良く、質のいい実が収穫できるように、剪定などの手入れを考えたいと思っています。

 河原の畑の成木は、畑をお借りしたときすでに植わっていたもので、推定十年生以上の大きな木です。  
 品種は、実の形や葉の形から、『ブラウン・ターキー』だと思っています。  

 この木は、一本だけれど、生命力がとても強く、一本としては最も多く収穫をすることができました。  
 老木であっても、美しい葉を無数に広げて、成長し、たくさんの実を実らせる木の姿に、勇気づけられもしました。  

 『ブラウン・ターキー』の実は、その名の通り、茶色くて、お祝いの七面鳥に似ているとも言えるような見た目です。小ぶりで、とても甘い実をたくさんつけるという品種でした。

 木が大きいため、収穫のときは枝をかいくぐって、少しジャングルの中を行くようなのですが、慣れてくると収穫がとても楽しくなっていきました。 いつもは小ぶりだけれど、雨が降った翌日は、一回り以上も大ぶりな実をたくさん収穫できたこともありました。  

 最後は、藤井さんから頂いた苗から育てた、梅林手前畑に植わっている二年生の木です。品種は、『バナーネ』という品種です。  

 私は、この木で初めて、植え付けからイチジクの木を見守らせてもらいました。そのため、初めての収穫でしっかりといい実が実ったときは、「ああ、ついにここまで成長してくれたんだなあ」と感慨深く感じました。  

  

無地、ダイカンドラは発芽しました!

  
 『バナーネ』はフランス原産の品種です。非常に耐寒性が強く、生命力があり、育てている中でも、大きな可能性が感じられます。  
 今年収穫できた秋果の実は、中くらいの大きさで、何とも言えない妖艶な黄緑に、紫の縞模様が滲むような見た目をしていました。

 『バナーネ』の秋果の特徴は、〝とにかく甘い〟ということです。 フランス原産ということもあり、見た目も味も、洋菓子のようだと感じました。  

 『バナーネ』は、熟す間際にぽってりと大きくなり、表面に傷のような細かい割れが出てくると、熟したサインでした。ヘタは長く、綺麗に収穫しやすいけれど、皮が薄くて繊細なため、丁重に扱う必要があると感じました。  

 改めて、イチジクは品種による違いが顕著で、面白い果物だと感じます。いろんな品種を育てることで、それぞれの良さも見えてくることが、嬉しいなと思いました。

■収穫の楽しさ  

 今年のイチジクの収穫は、主にみつきちゃん、まなかちゃん、どれみちゃん、ゆいちゃんと私で、入れ替わりながら進めました。  

 みんな、収穫基準や品種による違いなど、熱心に説明を聞いてくれて、収穫に向かってくれました。  
 毎日イチジクの収穫をしていると、だんだんイチジクに愛着も湧いてきた、イチジクの収穫が楽しい、という声も、聴かせてもらいました。みんなが、イチジクが好きで、一番いい風に収穫したいという気持ちで、一緒に収穫をしてくれたことが、本当に嬉しかったです。

 私がイチジクの収穫に入らなくても、みんながいつも、見落としなく一生懸命に収穫をしてくれました。毎日、畑ごとに収量をメモして、渡してくれました。そのことが本当に心強くて、みんなの存在に助けられました。  

 朝晩の冷え込みが厳しくなり始めると、イチジクの実の肥大や熟しもゆっくりになり、収量も下がりましたが、まだ、霜が降りる頃までは収穫ができる見込みです。  

 今年はみんなの協力があり、とてもいい風にイチジクの収穫を行うことができました。けれど来年は、収穫の仕方も今年よりさらに良くしていくことができそうです。

 来年は今年収穫できた木のほかに、プール下のイチジク畑に植わっている、挿し木から育てた二十八本の苗木の収穫も、始まります。そのうち二十六本は『バナーネ』で、二本は『桝井ドーフィン』です。  

 プール下の木は、定植から約六か月の今で、私の身長を超えるくらい、とても旺盛な成長をしてくれています。きっと来年は、いい実を収穫できるのではないかと感じます。 これから、なのはなのイチジク栽培を広げて、いい方向へ向かい続けていけることが、とても楽しみで、嬉しいです。  

 なのはなのイチジクを、なのはなの自慢と言えるものに成長させられるよう、みんなと育てていきたいと思います。