【11月号⑫】「爽やかな香りに包まれて ―― エゴマの刈り取り ――」あけみ

 
 日本では、縄文時代から食されていて、絞って作る油を江戸時代には雨合羽や雨傘などに塗ったり、油紙の加工に利用されることなどもあったという『エゴマ』。

 地域によって色々な呼び名があり、東北地方では「ジュウネン」「ジュネ」「ツブアブラ」、群馬県や長野県北部では「エクサ」「イクサ」などとも呼ばれているそうです。  

 エゴマには、栄養価が高くビタミンや食物繊維も含まれています。なによりエゴマ油に六十パーセントも含まれているα-リノレン酸というものは、現代人の健康に重要な役割を果たすともいわれています。

■自生のエゴマ  

 そんな『エゴマ』、なのはなでも夕の子東畑で作りました。およそ十アールほどの大きさの畑です。エゴマは、とても強く土壌をあまり選ばずに連作可能で、やせた土地でも栽培でき、鹿やイノシシもよってこないたくましい植物です。  

 実は、夕の子東畑にあるエゴマも、昨年のエゴマが落とした種から芽が出たものを利用して、作りました。  
 その後、追肥や畝間づくり、摘芯、草取りなどをして、すくすくと育ったエゴマは、広い畑に大きく葉や茎を広げました。背丈も高くなり、高めの身長の私を超すぐらい、百七十センチ以上に成長しました。

 九月上旬には花を落とし始め、種をつくる準備に入りました。エゴマの刈り取り時期は、花を落とし始めて約四週間ほどです。エゴマの刈り取りの時期の見極めは、とても重要です。

 〝収穫適期はせいぜい五日間〟とも言われるほどです。遅すぎては種がはじけ、落ちてしまい収量が減ってしまいます。また、エゴマは落葉直前まで登熟しているため、早い収穫では実入りが悪くて油分が少ないエゴマとなってしまいます。

  
 今年は、九月に入ってからも気温が高い日や晴れの日が続きました。九月後半になると、日に日にエゴマの畑の色が少しずつ黄色に変わっていくのがわかりました。一週間の間でも、どんどん色が黄色に変わり、種子のついている部分は黒くなり始めました。九月の下旬は、エゴマの状態が気になり、ずっとそわそわしていました。  

 そしていよいよ、エゴマの収穫。  前日には、エゴマ刈り取り後の、エゴマの干場をつくる時間を取ってくれて、よしみちゃんと準備を行ないました。

■段取りを緻密に立てて  

 今年は、エゴマの量が多いと予想して、体育館の軒下に加え、体育館の軒下にバルコニーのようになっている二階部分も使うように考えました。みんなが整理をしていてくれていたので、スペースがあり、とてもいい干場に使えました。

 昨年もエゴマの刈り取りをしたことのある、よしみちゃんと、どうやったら干しやすいかなども相談しながら作業を進めていきます。どんな時も、明るい声で「はい!」と返事をしてくれたり、一緒に考えてくれ、力持ちで、同じ気持ちで動いてくれるよしみちゃんがいてくれてとても心強かったし、嬉しかったです。  

 エゴマの収穫当日、朝から緊張していました。朝食前の時間を使って、作業前に実際にエゴマを刈り取ってみました。草刈り機を使い、百七十センチを優に超える背丈のエゴマの株を刈り取っていきます。

  
 (え……。刈りづらいぞ……)  背の高いエゴマの株を株元から刈り取ると、大切な種子の部分がある頭の部分が倒れ掛かり、次に刈り取りたい株元の前を遮るようになります。また、風などですこし株が倒れていると一人で刈り取るにはとてもやりづらいということが分かりました。  

 少し焦りながらもエゴマの収穫前に、動画や資料を読んでいた中で、一人でも棒を使って株を刈り取方向に、倒しながら作業をしているものがあったのを思い出しました。  

 実際にやってみました。長い竹の棒を使い、株を倒しながら刈り取ると、同じ方向に株がまとめて倒れ、作業がやりやすいことが分かりました。
 しかし、私の草刈り機は、ハンドル部分を持たないとギアが高速にならず、片手ではバランスがとりづらいので、作業では一人、私の手元になってもらい、私の左隣で長い棒で株を倒していくのをお願いすることにしました。  

 「段取り八割」お父さんお母さんにもよく教えてもらうことです。作業に向けて、必要な役割や人数をイメージしておきました。  
 エゴマの刈り取り、刈り取ったエゴマを束にしていく、束にされたエゴマを束ねていく、束ねたエゴマを軽トラで運搬する、古吉野に到着したエゴマを干していく、それぞれの役割を書き出しました。

 この作業の流れも、以前あゆちゃんとやった藁運びを参考にしました。なのはなには、効率の良い作業、面白い作業、たくさん素敵な見本や材料、知識が隠れています。

  
 実際に、作業を進めていきます。作業は、午前中二時間と午後の時間をいただきました。作業前には、みんなで流れの確認を行ないました。
 「いよいよですね」さきちゃんが集まったときに、さりげなく言ってくれました。そんなさきちゃんのやる気に満ちた笑顔や言葉、やさしさが心強かったし、とても嬉しかったです。

■二人で一体になって

 作業では、私はなつみちゃんに手元をしてもらいながら、刈り取りを行なっていきました。作業が始まってしまうと、それぞれの場所で、みんなが身体と心を使って動いてくれているのを感じました。流れるように作業が進んでいきます。  

 手元のなつみちゃんは、刈り取られた後のエゴマで足元が時々悪い中、ずっと刈り取る私に気持ちを添わせてくれながら動いてくれているのを強く感じました。  

 刈り取っているとき、なぜだかなつみちゃんと社交ダンスをしているような感覚がありました。(ちょうど、その時に読んでいた本に影響されていたのが強いと思いますが)  

 社交ダンスでも、相手には寄りかからずに自立しながらも、相手を思いあいながら、お互いの次の動きをイメージして、誘導したりフォローをしていくことが大切です。  
 自分の刈り取りばかりに気がいってしまい、一人で突っ走りそうになったり、自分の動きや考えだけにいっぱいになり、それを押し付けるような気持ちでうごく瞬間は、結果二人でいい動きはできなかったです。

  
 でも、なつみちゃんの足場のことや、なつみちゃんとの距離感覚、なつみちゃんの動きをみて、感じて、今お互いがどこを刈り取ろうとしているのかを考えつつ、どんな風に二人で動けば一番いいのかを瞬時に考えながら動いたとき、一番いい動きができます。いい動きが出来たときは、とても嬉しいです。  

 なのはなでは作業をしながら、そんな優しい動きや、気持ちの使い方を発見できるのも、面白さの一つだと思いました。  
 午前の作業は十一時からの始まりでした。およそ二時間弱の作業です。午前の終了時間が近づくころ、あの広い畑のエゴマの最後の一株を刈り取りました。始まるころは、とても広く、時間がかかるように思えたけれど、刈ってみたらアッという間でした。

  
 (終わったー!)最後のエゴマを刈り取り終え、なつみちゃんと笑顔で喜び合い、ふと畑をみると、刈り取った株を黙々と束ねる皆や、すこし汗をかきながら次々と軽トラで株を運び出すゆりかちゃんとななほちゃんの姿がありました。

 束ねもとても早く進んでいて、全体の七割は進んでいて、回収も六割は終わっていました。

■干場もぴったり  

 一日作業の予定でしたが、午前の二時間弱の時間で大まかな作業が終わっていました。みんなの存在がとてもありがたかったです。  

 古吉野に帰ってみると、昨日準備した干場に、よしみちゃんしなこちゃんがエゴマを干してくれていました。二人は何も言わなくても、すこし待ち時間があったらグラウンドなどの草取りや掃除も一緒に進めてくれていました。  

 午後にも、ほぼ同じメンバーで作業を行ない、束ねは一時間半で終え、干しや片づけの作業も一時間余裕をもって終わらせることが出来ました。 

   
 エゴマを干すのも、よしみちゃんしなこちゃんが考えながら調節してくれて、作った干場にぴったりとおさめてくれていました。
 刈り取られたエゴマの畑は、何もない広い畑に様変わりしました。軒下にはエゴマがたくさん並び、古吉野には爽やかなエゴマの香りが広がります。  

 次々と作業がスムーズに進み、畑の景色が変わり、色んなところでみんなの存在や優しさを感じ、とても充実感のある一日でした。  
 エゴマはこの後、軒下で乾燥させて脱穀などを行ないます。良い状態で保存が出来るように、最後まで頑張りたいです。

*エゴマの収穫後は……?

 刈り取りが済んだエゴマ。体育館の軒下で天日干しをし、約2〜3週間が経つと葉や茎が枯れて、からからの状態にまで乾燥しました。

    
 続いての工程は、脱穀です。株ごと板に叩き付け、エゴマの実を取り出していきました。実だけの状態になったものはふるいを使って、大きな莢や枯れ葉を取り除き、仕上げに唐箕がけをしました。今後は洗いや選別を行なっていきます。
     
 収穫後からいくつかの工程を得て、ようやく口に運べるエゴマ。手間ひまはかかりますが、その分だけ、大人数で作業ができる時間も多く、よりいただけたときの喜びもひとしおに感じます。