「これは小さな一歩だが」 なお

11月1日

○これは小さな一歩だが
「距離としては数キロだが、人類にとっては偉大な一歩である」
 アームストロングの言葉になぞらえて、お父さんはあゆみちゃんの家族のお引越しのお話をしました。あゆみちゃんとひでゆきさんが、なのはなの近くの新居で生活をし、子供(たけちゃん)を育てていくことは、新しい生き方、家族の在り方を作っていくことなのだとお父さんは私たちに伝えてくれました。いま、10代~30代の死因の一番は自殺であること、生きにくさを抱えた人たちがいまも増え続けています。それは私たちが生きる社会の枠組み(家族の形、働き方、学校や地域社会の在り方など)が人をどんどんと孤独にし、生きることを難しくしているのだと思いました。私たちは、ただ症状をなくして回復するのではなく、同じように生きにくさで苦しんでいる人をなくしていく社会を作るために生きて行きます。その一つに、自分がどこでどんな風に家族を作って生きるのかということがあります。

 あゆみちゃんたちの暮らす新しい『岸本ハウス』は、あたたかく、どっしりとした雰囲気があります。昔ながらの日本家屋の作りで、たくさんの人が集まれる畳の広間があり、床の間があり(大竹さんの作品が映える!)、縁側があります。お母さんが、昔は家に鍵なんかかけなくて、隣の家の子供が縁側から、「今日ご飯食べて行ってもいい?」といって来たりして、地域みんなで子育てをしていたんだよと話してくれました。あゆみちゃんの家も、家族という枠にこだわらず、たくさんの仲間や地域の人の中で生きて行くことができる家になっているのだと感じました。子供だけでなく、大人(親)もまた、孤立してしまうのがいまの社会だと思います。親も、たくさんの人に助けられ、助け、社会の中で生きていくことができたのならば、どんなに生きやすいだろうと思います。
 あゆみちゃんは、旧来の家族、家庭の在り方に所属するのではなく、新しい家族の在り方をなのはなファミリーとともに、なのはなファミリーと二人三脚で作っていくのだと思うと、なんて希望のある、新しい道を拓く一歩となるお引越しなのだろうと私は心震えました。

「りゅうさんと一緒に、なのはなファミリーの力となり、盛り立てていきたい」
 ひでゆきさんが新居のお祝いのスピーチで、こう話してくれました。
「私たち家族の成長と一緒に、家も成長していく、そんな家になったと思います」
 あゆみちゃんの言葉です。2人の言葉がとても素敵でした。
 ただ新しい家に移る、ということではなく、新しい生き方の道に進むこと。お父さんの言葉にあるように、人類にとって大きな一歩なのだと、大げさではなく思います。きっと、私たち一人ひとりが、人類とって大きな一歩を踏み出せるし、踏み出すことで生きる意味を感じて生きて行けるのだと思います。たとえ小さなことに思えても、日々、私たちはどう生きるべきなのか、と問いながら生活していけば、それが今の社会を変えていく一歩になります。逆に言うと、今の社会のありかたに所属したまま生活したのならば、自分も行き詰まりくるしくなるし、私たちと同じように苦しむ人も増え続けていきます。毎日が、月面着陸したかのごとく、何気ない小さな、しかしながら大きな一歩を歩む覚悟と意識で、生きて行きたいです。そういう生き方がきっとできるのだと思うと、希望を持てます。

 仕事組でお片付けを一緒にさせてもらい、なんでこんなに楽しいのかなと考えました。それは、お父さんお母さん、あゆみちゃんたちの言葉からわかりました。あゆみちゃんたちのために、というのももちろんあります。その気持ちと、もうひとつ、利他心(=まだ見ぬ誰かのためにという気持ち)が私たちの喜びなのでした。私たちは、岸本ハウスを修繕し、磨き上げていくことで、あゆみちゃんと一緒に、新しい生き方をまだ見ぬ仲間のために作っていました。大きな一歩の一端を、私たちも担っているのだという思いが、喜びなのでした。なのはなの活動、畑も、音楽も、すべて、それと同じです。そこに新しい社会を作り、いま生きている人、これから生きる次の世代の子供たちのための、小さくも大きな一歩を私たちは毎日歩んでいきます。その気持ちを、いつも心においていきたいです。