【10月号⑬】「秋の秋季剪定を学んで」なつみ

 まだ汗ばむ暑さが残る中、涼しい風が吹き抜けると秋を感じさせる、そんな季節になってきました。

 桃畑へ行くと、桃の樹の緑がわさわさと揺れて、摘蕾や摘果のころを思うと、たったの数か月で、緑も茂り、枝もこんなに大きく育ったのだなぁと、桃の力に驚きます。
 実をたくさんつけた分、枝先が下がったり、枝全体が下がってしまったりと、すこし落ち着いて、静かにたたずんでいるような印象を受けました。

 収穫を終えて、桃は十月下旬から十一月上旬の落葉期までに貯蔵養分蓄積期に入ります。この時期は桃の樹にとって、根が発達し、枝、花芽などが充実する時期であり、翌年に向けての養分を貯める時期でもあります。
 桃の生育の助けになるのは、元肥や、剪定による光環境の改善、健全な葉の維持。それらをかなえるために、元肥入れ、剪定、防除などの手入れが行なわれます。
  
  

■実際に目で見て

 九月上旬から開始された秋季剪定。メンバーは、あんなちゃんを中心に、今年の桃作業に収穫まで携わったどれみちゃん、りんねちゃん、ななほちゃん、りなちゃんと、今回からわたしも参加させてもらいました。

 まずは開墾桃畑から始まります。以前行なわれた桃の勉強会で配られた、一年を通しての桃の手入れの資料を読み、秋季剪定がどういうものかを事前に勉強していましたが、実際に目で見て、一本いっぽんの枝の状況、役割をあんなちゃんに説明してもらいながら勉強するのでは、まるで違いました。
 時間と人と場所が違えば答えが違う、とお母さんは教えてくれますが、剪定はまさにそれだと思いました。一本たりとも、同じ桃の樹というものは無くて、それぞれに特徴があります。
  
  
 もちろん、品種の特性という点で、同じ品種の樹は似ています。しかし、その中でも日当たりなどの環境要因で、少しずつ置かれている状況は違う、それも考慮して枝を切っていくあんなちゃんは、本当に難しいことを、潔く、正しく判断して、甘い桃を育ててきたのだと思いました。桃の道は簡単ではないと感じました。 

 剪定をするうえで考えなければならないことは主に三つあります。
 一つ目は日当たりの改善です。
 日当たりは、充実した結果枝と花芽を作るため、そして甘い桃を作る上では欠かせない要素です。あんなちゃんが枝を切ると、桃の木陰にキラキラと木漏れ日が差します。桃の葉が陽の光をいっぱいに浴びている姿を見ると、(あぁ、桃はこれを求めていたんだ)とスッと、自分も気持ちが良くなって、あんなちゃんの桃の手はとても優しいなぁと思いました。
  

  
 二つ目が樹形を作ること。
 亜主枝や側枝が主枝以上に強くなってしまっていると、主枝が伸びずに樹形が乱れてしまいます。そのため、主枝と競合してしまうような亜主枝や側枝は、切り戻しをしたり、側枝数を減らしたりと、勢いを弱めるように切っていきます。勢いが良いから、勿体ないからと枝を残していってしまうと、樹形が乱れて、手の付けられないわがまま娘になってしまい、追々困ったことになると教えてもらいました。

■神聖な空気

 あんなちゃんの桃の手は確かに優しいけれど、それはただ桃を上辺だけ大事にするような浅いものでなくて、本当に甘い桃を作るうえで何が大事か、何が桃にとって良いのか、深いところで理解して、深いところで考えて手を打てる、そんな厳しさも根にある優しさで、あんなちゃんと桃の木が会話をしている空気を感じるだけで、その場がとても神聖に思えました。
  
 

■少し先の未来を見て

 三つめは作業性です。
 なのはなには現在、百二本の桃の木があります。確実に行ないたい手入れが、必要な時期に確実にこなせるようにするには、作業性も大事にしていかねばなりません。脚立が立てにくかったり手入れがしにくかったりする枝は、切ってしまうか切り戻してしまうかしないと、今後の作業でストレスを感じてうまく進まなくなったり、流れが悪くなったりと、これから先の作業に影響してきます。
 
 これまで摘蕾、摘果、収穫と経験してきたわたしたちだからこそ理解できる作業性を考えた剪定は、見ていてとても心が弾みました。作業がしやすくなる、それだけでとても次の手入れが楽しみになります。少し先の未来を見て、潔く剪定していくあんなちゃん手つきを見ていると、自分の心まで整っていくようで、その時間がとても気持ちよかったです。
  
  
 三つのポイントを押さえたうえで、剪定された桃の木を見ると、足元はすっきりと整理され、お椀型に広がる樹の中心には、陽の光がたっぷりと注がれていて、収穫を終えた桃の樹は、また来年に向けて力を蓄え始めようと、すこし意気込んでいるように見えて、桃の気持ちに沿えるあんなちゃんの経験や心配りが本当に深いなと思いました。
  
 秋季剪定最後の日。
 この日はわたしとななほちゃんとりんねちゃんで、あんなちゃんの指示を聞いて、鋸と鋏を持って実際に桃の枝を切りました。
「ここを切ろうと思います」と棒で指してあんなちゃんが教えてくれるのですが、そこから脚立を立てて、登っているうちにどの枝を切るかわからなくなってしまい、聞き返してしまうことも何度かあったのですが、あんなちゃんが快く再度教えてくれて、だんだんと落ち着いて切っていくことができました。

 脚立の移動や枝の回収も、脚立の下で、みんながすぐ動けるように準備して、たくさんサポートしてくれて、わたしはあんなちゃんの指示を聞いて、切ることに集中できて、今の剪定メンバーの優しい心遣いにも、感謝の気持ちでいっぱいです。
 百二本ある樹を手入れするには、やはりあんなちゃんひとりでは厳しいです。すこしでもスムーズに作業が進むように、桃を勉強させてもらっているわたしたちがしっかり覚えて、メインでも補助でも動けるようにならなければならないなと思います。

桃の木の下に座って、休憩をしました

  
■ダイナミック

 お父さんが、「理解できたと思っても、いざ自分が鋏を持つとわからなくなる」と話してくれたときがありましたが、本当にその通りで、剪定帰りの車では、みんなで共感して笑ってしまいました。まだ剪定は難しいですが、少しずつ解っていく過程はとても面白く、興味が深くなるばかりです。
 わたしが選定をしていて一番わかりやすく、面白いなと思うのは、下に垂れ下がっている大枝を切るときです。
  
  
 大枝は一年や二年かけて切り落としたり、桃の負担になっている場合には一気に切ってしまったり、追い込み枝にして、弱らせてから切ったりと、切り方は様々ですが、最後、綺麗に切り落とされたときは、樹がまるで生まれ変わったかのように、スマートに変身します。
 その一本が切り落とされるだけで、樹全体がスッキリと広々して見えました。ダイナミックで、でも効果が目に見えてよくわかるので、本当に気持ちが良いです。

 繊細で、時には大胆な秋季剪定が、わたしは一番桃作業で好きかも知れないと思いました。
 約四日で終わってしまった秋季剪定。寂しい気持ちもありますが、遠くから見ても心地よさそうに佇む桃の木を見ると、とても安心した気持ちになります。

 様々な角度、視点から考えて、統合する力の必要な剪定は、とても難しいですが、確かに桃の力になっていて、本当に優しく、厳しい剪定ができるようになったら、どれだけたくさんの人になのはなの桃を知って、好きになってもらえるのだろうと、そう思うと、ワクワクした気持ちになります。
 これからの桃は元肥入れや防除、お父さんが考えてくれている枝吊りなど、たくさんの手入れが待っていますが、どれも桃に優しく、桃のためを思って、一番いい作業ができるように、心を使って動いていきたいです。