「夢のように」 えつこ

10月10日

 ついに、お誕生日会が終わってしまいました。夢のように楽しい1日でした。朝、ダイコンとカブの水やりをしたのが、だいぶ前のことのように感じます。それくらいに濃い1日でした。演奏している間、人と人との間に音楽があること、音やダンスを使って、見てくれているみんなとの間で心を通わせていることを確かに感じて、その感覚がとても心地よかったです。

 今日に向かう過程も、自分の未熟さを感じて苦しい思いをすることもあったのですが、そのことも含めて、夢のように楽しかったです。やっぱり、未熟だろうと何だろうと、私は、誰かのために、仲間と共に演奏をするのが好きだと、思いました。そして、いくらトロンボーンが好きだと言っても、誰かのためにでなくては、私は演奏ができないと、思いました。トロンボーンパートのみんなと一緒に練習に向かった時間、ゆりかちゃんとさやねちゃんの奏でる音に一歩でも近づきたくて必死で吸収した時間が、一番幸せを感じました。

 幸せは人と人との間にあると、お父さんがよく教えてくれます。そのことを、演奏をしているときに、とても強く感じます。最近は外で演奏する機会が少なく、私はトロンボーンを吹くことからも遠のいていました。お父さんのお誕生日会に向けてアンサンブルの練習がはじまって、久しぶりに、トロンボーンパートのみんなとロングトーンをしたとき、体が痺れるような感動を覚えました。そうだよこれだよ、私はこれを求めていたんだ、これに飢えていたんだよ、という気持ちになりました。ただロングトーンをしているだけで、みんなと音の言葉で心を通わせている感覚になりました。

 トロンボーンパートでは、バルトーク作曲の『ルーマニア民俗舞曲』1番を演奏しました。去年のクリスマス会で演奏したのですが、私はこの曲をトロンボーンパートの全員でやりたいと、ずっと思っていました。ゆりかちゃんが、またこの曲をやろうと言ってくれたときは、嬉しすぎて飛び跳ねてしまいました。クリスマス会ではサックスアンサンブルで演奏したときの楽譜をそのままトロンボーンで演奏しましたが、お誕生日会では、トロンボーン用にアレンジをしました。その作業が、地道で慣れなくて大変だったけど、自分たちの力で音楽を作っているんだという充実感があり、とても楽しくてワクワクしました。
 
 はじめて合わせをして、イメージが形になったときは、鳥肌が立ちました。練習の過程で、私が書いた、この曲にこめたい気持ちを、ゆりかちゃんが何度も読んでくれました。その度に、ゆりかちゃんが私の気持ちを大事にしてくれることを感じました。ゆりかちゃん、トロンボーンパートのみんなが私の気持ちに共感してくれて、そのことが勇気になりました。どこまでも泥臭くまっすぐに、保証を求めずに前に進むという気持ちを、この音楽で表現しました。

 お誕生日会に向かう過程の中で、一番心に残ったのは、ゆりかちゃんの言葉です。
「吹けるよ。自分はできると信じて、この音を出すんだと意志を強く持たないと、音は出ないよ。吹けるよ。」
 私は、思わず涙が出そうになりました。それから、気持ちが弱くなったとき、ゆりかちゃんのこの言葉を思い、自分を奮い立たせました。私はできる。誰かからの保証を求めるのではなくて、私はやるんだと決めて、やる。このときのゆりかちゃんの言葉が、宝物です。

 本番では、実行委員さんが考えてくれた物語の中で、それぞれのパートの演奏が入りました。それぞれのパートで今まで作ってきた音楽が、1つの物語となりました。実行委員さんが演じる物語が、ユーモアがあっておもしろいのに、自分と重なる悩みがあって、それに対する前向きな答えがあって、救われた気持ちになりました。

 本番前は足が震えるほどに緊張しましたが、なおちゃんたちの演技に背中を押されて、演奏者としては未熟であっても、決意を込めて堂々と吹くことができました。みんながまるごと私たちを受け止めてくれているのを感じました。
 
 自分でも演奏して、みんなの演奏も聴いて、みんなで音楽を作ることができることが、とても贅沢で、こんなに楽しい音楽が作れるのは、なのはなだけだと思いました。最後のスリラーの演奏が、大迫力で、とても心が躍りました。すごくドキドキして、踊りだしたくなりました。何度も聞きたいくらいに、大好きな曲になりました。楽しくて明るいのに、泣きそうになりました。みんなの演奏に、このまま泥臭く真っ直ぐに突き進んでもいいのだと、背中を押されました。

 後半のファッションショーでは、トロンボーンチームでは、『レインボー』を発表しました。『レインボー』を作る過程で、生みの苦しみを味わったけれど、そのぶんだけ、あるべき形が見つかったときの喜びは大きかったです。
 ダンスの考案に最後まで悩みました。最初、コミカルな振り付けを考えていましたが、それはファニーなおもしろさで、『レインボー』には合わないので、本番2日前に、振り付けを変えることになりました。
 ゆりかちゃんが、振り付けを考えてくれました。自分が踊っていても前向きな気持ちになる振り付けで、これがあるべき形だったんだと、嬉しくなりました。

 衣装は、さやねちゃんが、素敵なアイデアをたくさん出してくれました。私のグループの衣装は、肌がどこも出ていない、非日常的で斬新な衣装で、その衣装を着ると自分が人間じゃなくなったような気持ちになり、着ているだけで楽しかったです。ダンサーの衣装考案では、隣で衣装考案をしていたあゆちゃんや他のチームの人も一緒に考えてくれて、今までに見たことのないような衣装を作ることができました。チームの垣根を越えて、お互い様で会を作っていることが、嬉しかったです。

 本番では、みんなの驚いたような反応が、とても気持ち良かったです。虹を作るケンボルンパになった時間が、愛おしかったです。

 みんなの演出も見て、どのチームも斬新でおもしろくて、こんなに素敵なものをつくれるみんなと家族でいられる私はなんて幸せなんだろうと思いました。
 全てのチームが楽しくておもしろくて大好きになったのですが、特に印象に残ったのは、『バードセットフリー』の演出です。細かくて緻密な羽や、さきちゃんの凛として美しい表情に、思わず涙が出そうになってしまいました。苦しんだことがあるからこそできる美しい笑顔だと、思いました。

 『アップタウンファンク』も、心に残りました。ひでゆきさんとあゆみちゃんのダンス、ハイレベルで個性的な衣装、ダンスに心が躍りました。私もその中に入りたいと、思ってしまいました。大きなまつげをつけたたけちゃんが何とも可愛くて、きゅんとしました。
 
 楽しい時間はあっという間でした。フィナーレは、大好きなお父さんの歌でした。お父さんの歌う『ヒーロー』が力強くて、気持ちが奮い立ちました。私もお父さんのように、誰の真似でもない、保証のない道を、強くまっすぐに突き進む生き方がしたいです。保証なんてどこにもない。甘えを吹き飛ばして、前だけを見て進みます。

 会が終わった後、一瞬寂しくなりましたが、すぐに、その気持ちはなくなりました。今日は幕開けの日で、ここからがスタートです。12日の演奏、来年のコンサートにみんなで向かうことを思うと、心が燃えました。1人の力は小さくても、みんなで力を合わせれば、何でもできます。その1人でいられることが、とても幸せです。