
最後の稲刈りがついに終わった。とりを飾ったのは、紫色のあのお方。
見た目はちょっぴり地味だけれど、白米と出会えば本領発揮し食卓を彩るあのお方。目にも体にもいいあのお方。もうわかったでしょう、紫黒米。
今年も稲刈りが順調に早く終わったらいいな、そう思っていたものの、やっぱり終 わってほしくないと思っていたかもしれない。一年後までお預けなのがとてもさみしいです。
今日は全員出動でした。永禮さんや水嶋さんも来てくださり、家族も総動員。それだけじゃない、コンバインだって2台体制。手刈りももう一度したい! だけどお父さんのコンバイン姿ももう一度見たい! そんな私の気持ちを叶えてくれた、最後にふさわしい稲刈りとなりました。
紫黒米の籾すりはうるち米の稲刈りの時期は行うことが難しく、毎年私たちもどのようにして行うか頭を悩ませるところですが、今回は水嶋さんがここ良く引き受けてくださり、本当にありがたかったです。
稲刈りにも来て下さりとても嬉しかったです。
お父さんの乗ったコンバイン号は外周から内へ内へと攻めていきます。そして同時に、人力コンバインが北側から攻めてきます。いろんな方向から、もっさりとした稲が沈んでいくかのように刈り取られて地面が広がっていく様子は、大きな彫刻をしているように見えました。稲がなくなっていくその速さ、稲のボリュームがなくなっていく光景を例えてみるなら、成長期の男の子の食卓のようだと思いました。それくらい勢いがあって、活気があって、気持ちのいいものでした。
お天気にも恵まれて、からっと乾いたお米は、刈り心地も最高でした。この感触。左手にかかるこの重み。お米の甘い香り。びっくりなことに紫黒米は茎の断面まで紫。体いっぱいで稲刈りを味わいました。
私はお父さんのコンバインと一緒に回りました。いつもとは違う紫黒米専用号。袋式のこのコンバインとは初めてのご対面で、最初はもじもじしてしまっていましたが、籾タンクと出口の仕組みを知ったり、袋の取り換え方を学んだり、藁を落とすのが少し苦手という性格を知れたり、少し仲良くなれました。つめを株元ぎりぎり狙って、まっすぐに運転するお父さんは何度見てもカッコいいです。

そして後半は手刈りだからこそのお楽しみ、稲のバケツリレーが待っていました。お父さん、永禮さんのコンバインに向かってみんなと列になりました。
「タ、タ、タ、ハイッ」
3歩歩いて4歩目と同時に次の人へ。私の中には4拍子のリズムが刻まれています。稲が躍るように人から人の手に渡されて行きました。花束を贈っているみたいで温かいリレーだなと思いました。
稲を送っているだけだけれどなんでこんなに楽しいのか疑問に思ってしまうほど、リズムに乗ってバケツリレーをすることが楽しかったです。
実際にコンバインで刈った方がこうして脱穀するよりも早いかもしれないけれど、コンバイン刈りでは感じることのできないものが、ここにはたくさんありました。効率などは置いておいて、汗を流しながらもお米の重みを自分の身体で受け止め、同じ楽しさを共有できることはとても尊いことだと感じました。こうやってみんなで気持ちを同じにして穫ったお米は、きっと何よりもおいしいだろうと思いました。
田んぼを振り返った時、スッキリしすぎなくらいに何もない田んぼを見ると、達成感と同時に、さみしいなと思いました。黄金色の輝きは、紫色の彩りとなって食卓を輝かせてくれるのを楽しみにしていたいです。
本当の本当に今年の稲刈りが無事に終わり、よかったです。
(ちさ)