いつも、なのはなファミリーを暖かく気にかけてくださっている、床屋さんの板坂さんから、一匹の大きな鯉を頂きました。鯉の鱗は、すでに板坂さんが落としてくださっていました。
その日、鯉が新鮮なうちに、お父さんが捌いてくれることになりました。お父さんが鯉を捌くところは、家庭科室で、何人かのみんなと見学させていただきました。
家庭科室に入ると、静かに包丁の準備をするお父さんと、木のまな板に乗った巨大な鯉が目に入りました。
鯉は、木のまな板二枚を繋げた上に、置かれていました。薄黒く、ぬらりとした艶やかな表面をしていました。どっしりとした厚みがあり、こんな鯉は見たことがない、というくらい巨大で、驚きました。
お腹側から覗くと、胸ビレがお辞儀をしてかしこまった手のようになっていました。唇も分厚くて、半分開いた口から、歯のない口中が覗かれました。
そんな鯉の佇まいにとても人間味を感じて、今にも、人のように立って喋りだしそうだと思いました。
■赤く美しい身
鯉は、口の上に短い髭を二本生やしていました。お父さんが、「鯉はドジョウとか、ウナギに近い魚だね。捌くときも、普通の魚を捌くのとは違う」と教えてくれました。
鯉は骨が多く、捌くことがとても難しいとも聞いていましたが、お父さんは好敵手を目の前にしたことを嬉しそうにされていました。
お父さんは、静かに微笑みを浮かべつつ、「はじめましょうか」と言って包丁を手に取りました。
まずはお父さんは、刃渡りの長い柳葉包丁で、鯉を三枚卸にしていきました。
尾ビレ側から、お父さんが刃を入れると、すっと身が切れて、一面に赤い身の切断面が見えていきました。鯉の身が、マグロのように、濃く美しい赤をしていると知らなくて、驚きました。
頭部に近い部分は、出刃包丁を使い、力を入れて硬い骨が断ち切られていました。
表と裏の身、背骨の三枚に卸されると、肋骨を身から落とす作業になりました。そのときも、お父さんの手で骨に沿って、身を際まで残して、美しく捌かれていきました。
食べられる身だけが残ると、一度流水できれいに洗った後、お父さんが切り身にしてくれました。切り身には、臭みを取るため、みんなで少量の塩を馴染ませました。
■いざ、実食!
鯉は味噌と相性がいいから、とお父さんが考えてくれて、切り身になった鯉は味噌漬けにされました。味噌漬けの味付けの材料も、お父さんに教えてもらいました。
味噌、味醂、酒、醤油、砂糖。
私は今まで、そんな日本らしい調味料を使った料理の仕方を知らなかったので、教えていただけたことが、本当に嬉しかったです。
調味料と、鯉の身の間にキッチンペーパーを敷くと、味が均一に染みるというコツも、教えていただきました。
お父さんが漬け込んでくれて、三日ほど寝かせた鯉は、焼いて、一切れずつ家族みんなで頂きました。
身はほろほろと柔らかく、味噌の優しい味が浸み込んでいました。初めて食べるけれど、どこか懐かしくて、心に沁みる味でした。
こんなに美味しい味が、あの調味料で出すことができるんだなあ、と思うと、すごいなあ、と思いました。
お父さんが鯉を捌くのを見させてもらい、味噌漬けとして美味しく頂くことができて、本当に嬉しかったです。
心のこもった料理は、食べると暖かい気持ちにさせてくれるんだなあと思いました。
私は、お父さんのように、巨大な魚を捌くことはできないと思うけれど、魚を捌けるようになって、食べた人がほっこりと安心できるような、味噌漬けが作れるようになりたいと思いました。
***
古畑で育てている、シャインマスカットが収穫できました!
盛男おじいちゃんに教えていただきながら、2枚の畑で2品種のブドウを育てています。
今回、なのはなで初収穫となる、シャインマスカットが穫れました!