【9月号⑧】「桃の香りに包まれて ―― 樹熟し白桃、晩生品種の収穫へ ――」れいこ

 晩生品種の桃の収穫がはじまっています。 

 早生から中生、中生から晩生へ、桃の木がバトンタッチをしながら、素晴らしい実りを私たちに与えてくれます。
    

6月下旬から始まった、樹熟し白桃の収穫が晩生品種へと移り変わっています。桃の収穫もいよいよ終盤を迎えます

  
 おかやま夢白桃、川中島白桃、白麗、白皇。

 収穫後期になるについれて、糖度も一段と乗ってきて、桃にとっても私たちにとっても、今シーズンの集大成のように感じられます。

 今季から、あんなちゃんを中心になのはな桃部会が結成され、収穫や主な手入れを八人体制で行なっています。
   
 私も初めて、桃の収穫に入らせてもらっていて、あんなちゃんから、桃の木から、日々学ばせてもらうことがとても多いです。 

 天気のいい日も悪い日も、特別な日も日常の日も、桃は桃のペースで熟れていきます。

 だから、毎朝欠かさず、一本一本の木を見回って、熟れた実から確実に収穫をしていきます。

 そんな風に何年も、早朝の収穫を続けてきたあんなちゃんがかっこいいなと思います。
  
    

 毎日同じ木を見続けて、桃の実が熟れていく様子を観察していけるのは、ものすごくおもしろいです。

 あと一日待ったら完熟になると見込んで、そっと袋を閉じた実が、翌日華やかな香りを放って、しっかりと熟れていた時、大きな喜びを感じます。

 樹熟し白桃は、その名の通り、木で完熟させてから収穫するため、収穫規準はとても難しいです。

 あんなちゃんがひとつひとつの品種の特性を、明確に理解して、その規準を毎回ていねいに伝えてくれます。

■心で感じ取る

 白。

 青白い白から、青味が抜けてきた透明な白、そして黄みを帯びてきた白、またはほんのりピンクのかかった白。

 ひとことで白と言っても、こんなにも様々な表情をもって、色んな種類の白があるのだということを、桃の実から教わりました。
  
  
 朝陽の強さによっても、色の見え方は随分と変わってきます。

 だから、見た目だけではなく、香りや雰囲気、佇まいを感じ取る心もすごく大切なんだなと感じます。

 私は初め、青みがかっている白を理解するのがとても難しくて、早穫りをしてしまう傾向がありました。

 早穫りしてしまったために、貴重な一玉が樹熟し白桃としては認められなくなってしまったときは、とても申し訳なく、悔しかったです。

 それから、桃の収穫をするときは、まず心を落ち着けて、優しい気持ちを強く構えてから、畑に向かおう、そんな風に心に決めました。
    
 桃の木は生育過程でも、いつも誇り高く美しい姿であります。

 濃緑色のさらさらした枝葉をいっぱいに広げ、上品で繊細な桃の実をたたえている姿は、とても気品が高く、心優しいのだなと感じます。

■桃の声

 毎日桃の木と対話していくうちに、そんな桃の木を尊敬する気持ちや、共感する気持ちがでてきて、桃のことが好きになっていきます。

 ある日は、桃が香りで私たちにメッセージを届けてくれました。
      
 この実は熟れているだろうか、やや黄色味を帯びているようにもみえるけれど、皮が少し固そうだな。

 私が収穫規準に迷っていた時、ふと風に乗って、梅のような香りが漂ってきました。

 桃の木から、梅の香り?

「私はまだ未熟よ、まだここになっていたいわ」と、桃の声が聞こえた気がしました。

 そう思ってみてみると、まだ少し青みがかっていて、もう少し置くべき実だなということが分かりました。
  
  
 桃の木がそうやって、私に助け船を出してくれたように感じて、とても嬉しくて、それからは桃の香りを強く意識するようになりました。

 

桃の実をもぎ取るときは、手のひら全体をつかって、そっと包み込むようにまっすぐ引きます。

 熟れた実はとても柔らかくなっているので、枝当たりや傷がつきやすく、とても繊細です。
  

雨の日は、桃の糖度を保つために木の下にブルーシートを敷いています

   
 でも、木から離れた瞬間、手のひらにずしっと感じる重みは、幸せの重みです。

 最近では、お父さんも収穫の様子を見に来て、色々なアドバイスをしてくれます。

 お父さんが、「桃の畑によっても、それぞれ全然香りが違うね」と話していたことがとても印象に残りました。

 畑の香りと言うのは、意識をしたことがなかったので、意識してみると面白いなと思いました。
 
 何より、お父さんの鼻歌が聞こえてくると、それだけでとても明るい雰囲気になって、安心して収穫に臨むことができます。

  
■品種の特徴

 こうやって楽しく収穫出来たら、桃もみんなも、そして桃を手に取ってくださる人も、嬉しいだろうなと思いました。

 桃の品種ごとに見た目や特徴も様々です。

 おかやま夢白桃はとにかく甘くて大玉が売りの品種で、子どもや若い方にも人気が高いです。池上桃畑に四本あります。
  
 実際に収穫していても、粒ぞろいの大玉で、やはり大きいというのは何より心が躍るなと思います。

 色も透明感のある白で、白桃の良さがいっぱい詰まった品種です。

桃畑の草刈りも進めました

 川中島白桃と白麗は、ともに夕の子桃畑にあります。川中島白桃は、お尻の部分がほんのり薄紅色に色づいて、可愛らしい見た目をしています。
  
  
 白皇は極めて糖度の高い、期待の新品種だそうです。赤い二重袋に守られたその実を覗くとき、心が躍ります。開墾二十六アールに七本植わっています。

 桃の収穫もいよいよ終盤に差し掛かりますが、最後には恵白という晩成品種の収穫も待っています。

 あんなちゃんと桃部会のみんなと、最後の一玉までいい収穫ができるように、私もしっかり頭と心を使って、覚えていきたいなと思っています。