【9月号④】「レッツ! シューティングゲーム! ――夜の森を照らす鳥たち ――」りな

 縁日の屋台の一つ、シューティングゲームは金魚すくいと吹き矢の屋台に囲まれた、開けた場所にありました。

 「シューティングゲーム」と大きく書かれた看板がモミジの枝に吊り下げられて、周りには、色とりどりの、トロピカルフルーツがたくさん飾られています。これまで、チームのみんなと一緒に準備してきた集大成が、そこにはありました。
  
  
 当日、盛男おじいちゃんの山の中に、華やかな屋台が出来てとても満たされた気持ちになりました。

 屋台の準備が始まったのは、約三週間前。アース会議のみんなとシューティングゲームの屋台を作ることになって、早速、何を的にするのか、全体でどんなテーマに沿って制作物を作っていくのかを話し合いました。

 的の案は、たくさんありました。果物を落とすのはどうか、妖怪を退治するのはどうか、鳥を打ち落とすのはどうか…。そんなたくさんのアイデアの中で、山の中で自然に溶け込むようなものを考えた時に、「鳥」というキーワードが浮き上がりました。

■「トロピカルバード」

 縁日の屋台が出るのは、夕方のきっと辺りが薄暗くなったころです。その中でも、ひときわ目立って、周りを明るく照らす光のような鳥の的が作りたい、という願いを、やよいちゃんが話してくれました。そして決まったテーマが「トロピカルバード」です。全国各地にいる、様々なカラフルな鳥たちを、描いて、的にすることになりました。
  
  
 みんなでパレットを囲んで、一人一羽、参考になる画像を見ながら、鳥を描きます。的になる十二羽の鳥は、名前も知らない、見たこともない鳥でした。

 私は、羽毛が白とピンクの二色、くちばしはオレンジ、体は青と緑と黄色でグラデーションになっている鳥を描きました。ひよこのように羽毛がふわふわしていて、見れば見るほど可愛いなあと思いました。

 一筆一筆慎重に、リアルさを追求して色をつけていきました。
  
  
 辺りが薄暗い中でも鮮やかに見えるように、発色が良くなるように意識して色を塗りました。色がついて、目が描かれると、まるで本物の鳥のように生き生きとして見えました。制作をしていた図書室に、トロピカルバードが十二羽誕生しました。

■試行錯誤を繰り返して

 私達が鳥たちの色塗りに夢中になっていたころ、リビングではよしみちゃんやなつみちゃん、まおちゃん、れいこちゃんが、飾りのフルーツを作ってくれていました。

 パイナップルやブドウ、サクランボ、一つひとつ違って、食べたことのないような、南国のフルーツもあって、フルーツの飾りを眺めるだけで、夢が広がるような気持になりました。これを、屋台の周りに散りばめたら、どんなに可愛くなるだろうなあと思いました。
  
  
 それぞれの鳥たちの配点や、設置方法などは、お父さんやお母さんにも相談させてもらいました。お父さんに教えていただいて、ロープにテグスを使って吊り下げる方法で、鳥をつけることになりました。
  
 お母さんが的に付けたらいいのではないか、と小さい銀色の鈴をたくさん、くれました。早速、ロープに吊り下げた鳥に付けてみました。でも付け方によって、ロープが風で揺れるたびに鈴が鳴ってしまいます。    

的に鈴を付けて、当たると音が鳴る仕掛けにしました

  
 どうしたら、的に命中したときにだけ、鈴がなる仕掛けを作ることが出来るか、チームのみんなと考え、たくさんの方法で試してみました。

 出来るだけ鈴を括り付ける紐の長さを短くして、的に密着させるように付けると、風による振動でも鳴らないようにすることが出来ました。
  
 試行錯誤を繰り返して出来る鳥の的に、とても愛着を感じました。チームのみんなと、当日を想定しながら、もっと、もっとと良くしていける縁日準備の時間が、とても楽しいなあと思いました。

 ここまで的の話ばかりしてきましたが、シューティングゲームで一番大事なことは、ゴム銃です。Yの字の形をした木の枝に、太いゴムが付いている手作りゴム銃が、なのはなには十個近くあります。
  
  
 しかし、ゴム銃の使い方が私達の中でも曖昧になっていました。改めてゴム銃の正しい使い方を知ったうえで実際にチームのみんなとゴム銃で遊んでみました。

 私はその時初めてゴム銃を使いました。遊んでみて始めて、ゴム銃で的を撃つ難しさを知りました。まず一つは、ゴムを引っ張るとき、ゴム銃を真っ直ぐ持つにはとても力が要るということです。
  
 二つ目は、ゴムを真っ直ぐ引くことが簡単ではないということです。目、弾、的が一直線になって初めて、真っ直ぐに弾が飛びます。

 

でも少しでもゴムの引きが真っ直ぐではなかったら、そのずれが何倍にもなって、弾が飛んでいきます。私は、試し打ちの時、三メートルほどの距離から鳥の的をめがけていたけれど、撃った全ての弾を外してしまって、こんなにも難しいんだ、と驚きました。

 実際に遊んでみたことで、ルールを考えることが出来るようになりました。十球でもなく、五球でもなく、一人七球にしよう、と決めることが出来たのも、難易度が身に染みたからでした。

■縁日スタート!

 いよいよ迎えた当日。辺りはまだ明るいうちから縁日祭りがスタートしました。シューティングゲームの店番は、三十五分間交代で、私はよしみちゃんとかにちゃんとチームになってさせてもらいました。

 入り口の方から、浴衣を着て、お面を付けたみんなが歩いてきます。山の背景とみんなの浴衣姿が、とても美しいなあと思いました。シューティングゲームに足を止めてくれたお客さんには、「レッツシューティング!」とおもてなしをしました。
  

■願いが届いた

 みんなが熱心にルール説明や、ゴム銃の打ち方の心得などを聞いてくれて、とても新鮮な気持ちでいてくれたことがとても嬉しかったです。

 五メートル先の、木と木に掛けられたロープに吊り下がっている鳥たちを見て、「かわいいね!」と言ってくれる人、待ち時間のちょっとした鳥の豆知識を楽しそうに聞いてくれる人…、お客さんであるみんなが喜んでくれていることが、何よりも嬉しくて、心が癒されました。

 これまで準備してきたことが全部繋がっていて、シューティングゲームの屋台を作る一人として活動出来て、本当に良かったなあと思いました。
  
  
 お客さんから、楽しい、と思う気持ちをもらって、店番をしている私達もとても楽しい気持ちになりました。

 いつの間にか辺りは真っ暗、山小屋から漏れた光と、取り付けたLEDライトの光が屋台を照らしてくれました。明るかった時には分からなかったけれど、辺りが暗くなって初めて、鳥たちが光のような存在に感じました。

 ライトの光をもらって、鳥たちが自ら暗い山の中を照らしてくれているようでした。その光景を見て、縁日の準備が始まった最初の頃に、「的になる鳥たちが、周りを明るく照らす光のような存在になってほしい」という願いを込めて、鳥をみんなで作ったことを思い出しました。
  
  
 ちゃんと、鳥たちに願いが届いたんだなあ、と思って、心が温かくなりました。鳥たちは、縁日が終わるまでずっとその場で、光を灯し続けて、来てくれたお客さんを楽しませてくれました。

 ずっと楽しみにしていた縁日。あっという間の夢のような楽しい時間でした。でも何よりも、縁日を心待ちにしていた時間、ワクワクした気持ちでチームのみんなと一緒に、屋台を作っていた時間が楽しくて、心に残っています。

縁日は終わってしまったけれど、的の鳥たちも、飾りのフルーツも、屋台で使った基地も無くなっていないことが嬉しいなあと思います。家族みんなでの縁日や、縁日を準備してきた期間が、かけがえのない宝物です。